大団円
見終わったのちはしばらく放心状態でした。
なんでしょう、ハッピーエンドとは確かに言えないのかも知れません。
想い合う二人には、決して越えられない時空の壁が立ち塞がり記憶は急速に薄れ、南方仁の足跡はすべて歴史から消去されました。
これは悲しい結末なのかも知れません。
しかし何故でしょうね。
これで良かったのだという思いの方が強いのです。
何故なら仁を慕う女性達、野風も橘咲も脳腫瘍(胎児性腫瘍)に侵され死期が近づく仁を救うことのみを第一とし彼と結ばれることを望んではいないのです。
更に南方仁は自身の名が残ることより、医学の進歩のスピードが加速することを願っていました。
結果、ペニシリンが残された仁友堂の仲間の努力により完全に日本の医療に定着し医学史では土着の日本の医療技術となったこと。
あれだけ対立していた本堂と蘭方が遂に統合され東洋内科という新たな医療部門が日本で誕生したこと。
公的完全医療保険が実現していること。
こちらの方こそが喜ぶべきことだったのでしょう。
それを知り彼は、夕陽を見ながら莞爾と微笑むのです。
だからこそ名前も容姿も記憶から消えているはずなのに想いだけは消えないで書きあげ、150年の時を超えて彼に届いた咲からの○○先生への恋文はあまりに悲しく美しい。
どうしても認められない人も多いでしょう。
しかし救いはあるのです。
女性たちは遂に仁とは結ばれませんでしたが、現代に彼女らの想いを引き継ぐべき子孫を現代に残すのです。
野風と友永未来の容姿を持ち橘咲の意思を継ぐ橘未来として。
ラストシーン、友永未来と同じ悪性の脳腫瘍が脳幹部に見つかった橘未来の手術に真っ先に手を挙げて、担当する仁の姿が出ます。
もはや心が折られ逃げる最初の姿はありません。
そこには江戸時代での試練と竜馬や他の仲間との友情により大きく成長した男の姿があります。
そして物語は大団円を迎えるのです。
福島男/男性 (47) 2011.6.28 (Tue) 01:44