インタビュー

桐谷健太さん[佐分利祐輔役]

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― クランクアップを迎えられた「今」のお気持ちを聞かせてください。
もちろん撮影が終わってしまう寂しさはあるんですけれど、どんな作品に参加していても必ず終わりはやってくるものですし、今は達成感や「この作品に携わることができてよかったな」という気持ちのほうが大きいですね。与えられた役を全うできたかなと思いますし、なんだかこう笑顔で終われる感じというか…。とても充実した気持ちで満たされています。
― 2クールにわたり『佐分利祐輔』という人物を演じてこられましたが、いかがだったでしょうか?
(写真)長いようで、本当にあっという間でしたね(笑)。“江戸時代のお医者さん”を演じることって、なかなかないチャンスだったと思うんですけれど、確かにこの時代にも「人の命」と真摯に向き合っていた人がたくさんいたはずですし…当時のことをいろいろ想像しながら演じていく作業は、非常に楽しかったです。特に、僕の演じる佐分利という役は、すごく明るくて前向きなだけでなく、悩みながらもだんだんと成長していくキャラクターだったので、お芝居にも振り幅がありましたし、2クールを通していろんな顔をお見せすることができたんじゃないかなと思っています。
― 以前から「佐分利の(医者としての)成長をみせたい」と意気込んでおられましたが、続編では彼の成長をどのように受け止めて、演じていらっしゃったのでしょうか?
(写真)前作での佐分利といえば、“驚き担当”といいますか(笑)、初めて目にする仁先生の医術にひたすら驚愕するばかりで、まだまだ半人前の印象が強かったと思うんです。でも、この続編では、ひとりで患者を診るようなシーンもあったり、仁先生の片腕として大手術に携わったり…。以前よりも“一人前の医者”として、頼もしい存在に成長しましたよね。憧れの仁先生には、まだまだ追いつけないかもしれませんけれど…彼の努力や勉強の成果が少しずつ形になってきているのかなと感じられて、僕自身も非常に嬉しかったです。佐分利には「いつか医術を究めたい」という願望があるのですが、僕にも役者として「芸の道を究めたい」という思いがあるので、彼の気持ちはすごく理解できましたし、どこか共感を覚えながら演じていました。
― 続編の中で、「一番印象に残っているシーン」を教えてください。
(写真)『仁友堂』でのお芝居はいつも賑やかで楽しかったですし、なかなか「一番」というのは決められないんですけれど…中でも大沢たかおさん演じる南方先生とのシーンは、強く印象に残っています。第9話では、坂本龍馬の手術に旅立つ仁先生から「佐分利先生の力が必要になるかもしれないんです」と同行を依頼されるシーンもあったんですけれど、あの場面では演じる僕自身、「ああ、佐分利もそこまで言ってもらえるような人物に成長できたんだ」って、ジーンときてしまいました(笑)。「誰よりも認めてもらいたい」と思っている人にそういう言葉をかけてもらえたというのは、佐分利にとって一生の宝となったんじゃないでしょうか。
― 役を離れたところでも、大沢さんとは、大変仲が良さそうでしたね(笑)。
本当に大沢さんにはお世話になりましたし、共演の機会を得ていろんなことを学ばせていただきました。主演を務める大沢さんは、とてつもないプレッシャーや孤独感を抱えながら撮影に臨んでいらっしゃったと思うんですけれど、現場ではいつも笑顔を絶やさずに、むしろ僕らを包み込んでくれるようなところがあって…。「すごい人だな」と思いましたし、自分もそんなふうになりたいなと思いました。佐分利が仁先生を慕うのと、俺が大沢さんを想う気持ちは…ちょっと似ているかもしれないですね(笑)。
― 『JIN -仁-』という作品に参加して、強く感じたことがあれば教えてください。
(写真)以前にも増して、「自分の気持ちは、伝えられるときにちゃんと伝えよう」と思うようになりました。人間って、いつかは「明日死ぬ」ものじゃないですか。だけど、今は携帯電話もあるし、交通手段だってたくさんある…いつでも話すことができるという便利さにかまけて、会ったときに自分の気持ちを伝えるということを怠ってしまいがちのような気がするんです。でも、江戸時代って不便なことも多かったぶん、会えたときにお互いの気持ちを伝え合うことを大切にしていて、人と人との結びつきは今よりもはるかに強かったんじゃないかなって思うんですよね。「今日バイバイしても、次いつ会えるかわからない」というシチュエーションを、この作品を通じて身近に感じることができたからこそ、僕はこれからも親や友達や周りの大切な人たちに“ちゃんと気持ちを伝えよう”って、改めて思いました。
― この作品をきっかけに、『着付け(和服をきちんと着ること)』に興味を持たれたそうですが、ひとりで着られるようになりましたか?
一応、自分で着物を着られるようにはなったんですけれど、どうしても着崩れしやすいので、本番(撮影時)は衣装さんにお願いしてやってもらっています。DVDを見て、本も買って勉強したんですけれど…やっぱりなかなか難しいです(苦笑)。でも、「ひとつできることが増えた」というのは嬉しいですね。まったくできなかった頃とでは気持ちも違いますし、着付けを覚えたことで和装にも自信がついたような気がします。
― では最後に、視聴者へメッセージをお願いします。
ついに最終回を迎えますが、この作品は全編を通して“壮大な謎解き”をしていたのではなく、人と人とのつながりの大切さや、日頃「当たり前」だと思っていることが当たり前ではないんだというメッセージを発信しているんだと思うんです。僕も最後の最後まで全力で挑みましたし、みんなで力を合わせて作り上げた作品なので、ラストまで見守ってくれたら嬉しいですね。

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