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寺田的コラム

【プリンセス駅伝展望①優勝候補は?】

2020.10.16 / TEXT by 寺田辰朗

強力コンビの積水化学と選手層の厚いヤマダ電機の2強決戦
戦力充実の資生堂、九電工が2強を追う

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写真提供:フォート・キシモト

プリンセス駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝予選会)が今週末の10月18日に、例年と同じ福岡県宗像市・福津市の周回コース(6区間42.195km)で開催される。コロナ禍のため中止となっている駅伝やマラソンが多いなか、プリンセス駅伝は今季初めて行われる駅伝全国大会だ。
 前回優勝の積水化学と、今季トラックで好記録を連発しているヤマダ電機が2強と言われている。日本代表を多数揃える資生堂、今季ベテランの復調と若手の成長があった九電工も、2強にスキがあれば割って入りそうだ。14チームが11月22日開催のクイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝)出場資格を得る。4〜5チームが最後の1枠(14位)を争うスリリングな展開も十分あり得る。

●新谷3区なら積水化学は逃げ切り態勢

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写真提供:フォート・キシモト

積水化学とヤマダ電機の2強は、チーム構成が対照的だ。積水化学は新谷仁美と佐藤早也伽の2枚看板を前面に押し出し、ヤマダ電機は6人全員が今季のトラックで好走している。
 前回優勝の積水化学に、今季から新谷と卜部蘭が加入した。新谷は昨年の世界陸上ドーハ10000m11位と、世界大会でも入賞を狙える力を持つ。駆け引きよりもハイペースでグイグイ押して行く走りが持ち味だ。
「チームの目標は優勝しかありません。個人としては区間賞ですが、区間賞を取ってもチームが2番、3番だと自分の喜びも周りのテンションもちょっと違うな、と感じてしまいます。区間賞以上に優勝が欲しいです」
 プロ意識の強い新谷は、徹底的に結果にこだわるはずだ。
 佐藤は初マラソンだった今年3月の名古屋ウィメンズで、2時間23分27秒(初マラソン歴代6位)と好走した。全日本実業団陸上5000mでは15分16秒52の自己新を出し、スピードも向上している。1区でも3区でも区間賞候補だろう。
 プリンセス駅伝の各区間の距離は下記のようになっている。

1区:7km  2区:3.6km  3区:10.7km  4区:3.8km  5区:10.4km  6区:6.695km

 積水化学は新谷と佐藤の2枚看板を1・3区か3・5区に投入する。3・5区なら、1区を任せられる選手が育っているということになる。1区で失敗しない限り、積水化学の1位通過の可能性は高いと言えそうだ。
 2人を1・3区に起用した場合は3区で大きくリードを奪うが、「後半でヤマダ電機に追い上げられる」(野口英盛監督)ことも覚悟しての布陣。クイーンズ駅伝6区で区間賞を取った実績のある森智香子、前回5区でトップに立った和田優香里らの頑張りが、勝敗の行方を左右する。

●ヤマダ電機は全員が主要区間候補の走力

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写真提供:フォート・キシモト

 ヤマダ電機は31歳の西原加純が9月に5000mで15分28秒16と好走した。14〜15年の日本選手権10000mに2連勝した選手。全日本実業団陸上は1500mだったが、4分18秒20の自己新で4位に食い込んだ。
「まだ(競技人生で)一番の状態ではありませんが、以前よりも効率よく進む走りができるようになってきました」
 ベテランらしい走りを見せてくれそうだ。
 西原以外にも、1・3・5区候補がいるのがヤマダ電機の強さである。西原と同じ5000mレースで筒井咲帆が15分32秒96の自己新。石井寿美も15分49秒58と2年8カ月ぶりの15分台で復調した。2年連続クイーンズ駅伝1区を任されている清水真帆は、日本選手権1500mで6位と健闘した。
 そして2年目の田?優理も1区候補に挙げられるようになった。1500mで全日本実業団陸上2位、4分14秒32と大幅に自己記録を更新し、翌週の3000mでも西原に勝っているのだ。竹地志帆も7月に1500m、9月に3000mで自己新をマークした。
 新谷、佐藤の区間で差を少しでも小さくとどめ、残りの4区間で攻勢に転じる。選手層の厚さを武器として、後半でトップ争いに加わる展開に持ち込みたい。
 2年連続でクイーンズ駅伝エース区間の3区を走っている筒井は、「プリンセス駅伝はどの区間でも、チームの優勝のために力を発揮したい」と話している。

●代表経験者が並ぶ資生堂と、若手が成長した九電工

 資生堂はリオ五輪10000mの高島由香、世界陸上ドーハ5000mの木村友香、リオ五輪3000mSCの高見澤安珠、そして世界陸上ドーハ5000mのダンカン・メリッサと、代表経験選手がずらりと並ぶ。そこに昨年の日本インカレ5000m&10000m2冠の佐藤成葉と、両種目2位の五島莉乃が加わった。
 ただ高島と木村の主力2人が現在、練習はすでに開始しているが、故障の不安をなくすため長期的な視野でトレーニングをしている。岩水嘉孝ヘッドコーチは「本戦を見据えて選手を起用します。他チームとの(優勝)争いより、自分たちのイメージするレースをしたい」と話している。
 九電工はエースが復調し、若手も大きく成長した。
 2年前のクイーンズ駅伝3区でアキレス腱を負傷した加藤岬が、今年は10000mで32分13秒23まで復調。そのレースではマラソン代表経験選手を200m以上引き離した。2年目の宮田梨奈は7月のホクレンDistance Challenge士別大会5000mに、15分34秒22の自己新で1位。マラソン東京五輪代表の前田穂南(天満屋)に競り勝ち、自信をつけた。3年目の林田美咲も全日本実業団陸上5000mで15分44秒98と自己新。
 九電工はキプケモイ・ジョアンを4区に起用する。今季5000mで15分04秒32と自己記録を縮めている選手。加藤、宮田、林田が1・3・5区を区間上位で走れば、4区の走りが大きな意味を持つ。

●前回2区までトップを走ったエディオン

 戦力的には上記4チームが優勝候補だが、主要区間候補に強力な選手がいたり、全体的に粒ぞろいだったり、侮れないチームもいくつかある。
 エディオンは3選手が個人種目でも活躍している。
 萩谷楓は5000mで7月に15分05秒78の日本歴代7位をマークした。石澤ゆかりは3000m障害でゴールデングランプリ2位。西田美咲は1月の大阪国際女子マラソンで2時間28分51秒(日本人8位)。
 昨年のプリンセス駅伝は1区・萩谷の区間賞で2区までエディオンがトップを走ったが、3区以降で徐々に後退して9位。今年は「クイーンズエイトが目標。プリンセスは5位以内で通過したい」と沢?厚志監督。
 ユニバーサルエンターテインメントは青山瑠衣と鷲見梓沙が、今年はまだ目立った記録はないが、主要区間で区間賞を争う力がある。伊沢菜々花と猿見田裕香も、チームは失格となったが17年クイーンズ駅伝で、区間1〜2位相当のタイムで走った。
 第一生命グループも出水田眞紀、嵯峨山佳菜未、向井智香と、個人種目で全国上位の実績を持つ選手がエントリー。大塚製薬は突出したエースはいないが、全員が区間中位から上位の力を持つ。
 プリンセス駅伝で2強に迫れば、本戦でクイーンズエイトに挑戦できる。

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