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寺田的コラム

ホクレンDistance Challenge 第4戦千歳大会展望

2020.07.17 / TEXT by 寺田辰朗

ホクレンDistance Challenge第4戦千歳大会が7月18日、北海道千歳市の青葉陸上競技場で行われる。
女子5000mには東京五輪マラソン代表の前田穂南(天満屋)がエントリーした。士別大会(7月4日)5000m、深川大会(同8日)10000mに続き、3試合連続自己新を目指す。女子3000mには深川大会3000mで日本新をマークした田中希実(豊田自動織機TC)が出場する。
男子では1500mの荒井七海(Honda)と館澤亨次(横浜DeNA)に3分40秒突破の期待がかかり、3000m障害には青木涼真(Honda)と三浦龍司(順大1年)、大物新人2人が出場する。

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写真提供:フォート・キシモト

●デンソー・コンビも好調。前田の勝機はロングスパートか

千歳大会前日(7月17日)に24歳になった前田穂南(天満屋)が、3試合連続自己新に挑戦する。
士別大会は5000mで15分35秒21、深川大会は10000mで31分34秒94と、約5カ月ぶりのレースにもかかわらず自己新を連発した。
天満屋の武冨豊監督によれば、前田が今のレベルに成長してから短期間で2連戦したことはあるが、3連戦するのは初めてだという。

「前田にとってホクレンは、スピード練習の一環という目的でした。僕が考えていた目標記録はクリアしてくれましたが、本人が考えていたタイムには届いていなかったようです。『悔しい』という言葉も漏らしていましたから」

疲れも、目に見えたところでは現れていないという。前田の3試合連続自己新は十分、可能性がありそうだ。
だが優勝争いは15分07秒35のD・ブルカ(デンソー)ら、15分20秒以内の記録を持つ外国選手3人が中心になりそうだ。
M・S・マネラ(日立)が15分35秒をターゲットタイムに先導するが、ブルカらがその前を走る可能性もある。

前田に加え網走大会(7月15日)5000mを15分29秒93の自己新で走った矢野栞理、同大会で15分32秒36の矢田みくに(ともにデンソー)らが、マネラについて15分30秒ペースでレースを進めるか。そして好調の3人の中から終盤、誰が抜け出すのか。

士別大会5000mの前田は、ラスト勝負で宮田梨奈(九電工)に敗れた。前田が今回、どこまで勝敗にこだわってくるかはわからないが、競技者として負けるのが悔しくないわけはない。
15分20秒台を出すためにも、ロングスパートを見せる可能性は十分ある。

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写真提供:フォート・キシモト

●女子3000mでは萩谷が田中に3度目の挑戦

深川大会3000mで8分41秒の日本新をマークした田中希実(豊田自動織機TC)は、下記のように5連戦に挑む。

7月4日・士別大会1500m:4分08秒68
7月8日・深川大会3000m:8分41秒35
7月12日・兵庫県選手権800 m:2分04秒66
7月15日・網走大会5000m:15分02秒62
7月18日・千歳大会3000m:

2度目の日本新も期待したいが、網走大会では14分台ペースで走ったつもりが、実際のスピードは微妙に遅かった。コーチである父・健智さんが前日ツイッターに書き込んだ内容を見ると、タイム狙いではなく別にテーマを設定するようだ。
深川大会3000m、網走大会5000mと田中に食い下がった萩谷楓(エディオン)が、みたび田中に挑戦する。
深川大会は8分48秒12の日本歴代3位、網走大会は15分05秒78の日本歴代6位。田中の活躍に隠れてしまっているが、日本のトップレベルに躍り出たニューフェイスだ。5000mは適用期間外ではあるものの、東京五輪参加標準記録も上回っている。
網走大会では「前に出るチャンスもあったのに、(気持ちで引いてしまって)出られなかった」と話していた。
三度目の正直で、田中の前に出て走ることができるかどうか。萩谷にも疲れはあるはずだが、一矢報いる好機であるのは確かだろう。

●5000mの松枝と日向、1500mの荒井と館澤ら男子にも注目選手が多数

男子5000mでは深川大会5000m日本人トップの松枝博輝(富士通)と、士別大会3000m日本人トップの遠藤日向(住友電工)が激突する。
2人とも5000mの自己記録は歴代上位に入らない。松枝が深川大会で出した13分26秒25で日本歴代22位、遠藤は13分38秒79である。
だが松枝は1500mで3分38秒12の日本歴代4位を持ち、遠藤は士別の7分49秒90が日本歴代5位。遠藤は室内5000mで13分27秒81の室内日本記録を持つ。
また、ラストに強いことも共通した特徴で、国際大会でも競り勝てる点に魅力が感じられる。
深川大会の松枝はアフリカ勢とともに13分10秒台のペースでレースを進めたが、3600mからペースダウン。それでも残り1周は57秒6のラストスパートを見せた。士別大会3000mの遠藤はラスト1周が60秒1だった。単純な比較はできないが、現時点では松枝有利か。
ただ遠藤も、士別大会3000mは千歳大会5000mに合わせるための調整レースと位置づけていた。
ダメージが残らないようなスパートにとどめた可能性はある。住友電工・渡辺康幸監督は「13分20秒台は現実的なタイム」と手応えを持っている。

2人の他には今年2月に室内で13分33秒44で走った塩澤稀夕(東海大4年)、深川大会で13分38秒79のジュニア歴代5位タイをマークした吉居大和(中大1年)、士別大会で13分43秒30の自己新で走った倉田翔平(GMOインターネットグループ)らが注目すべき存在だ。

男子1500mでは荒井七海(Honda)の好調さが伝えられている。昨年7月に3分38秒18の日本歴代5位をマーク。今年2月には室内で3分39秒51の室内日本新と好調な出だしを見せていた。
Hondaの小川智監督は「米国を拠点にトレーニングをするようになって、メンタルは間違いなく逞しくなりました。千歳のペースがどうなるのかわかりませんが、3分40秒は切ってほしい」と期待する。
館澤亨次(横浜DeNA)は17年、18年と日本選手権を2連勝し、18年アジア大会代表にも入った。
勝負強さを武器とする選手だが、記録重視の走りをしたときにどこまでタイムを伸ばせるか(自己記録は18年に出した3分40秒49)。実業団入りしてどんな走りを見せるか注目される。

3000m障害には昨年8分39秒37と、高校記録を30年ぶりに更新した三浦龍司(順大1年)が出場する。昨年の日本選手権ではシニア選手と渡り合い、5位に入賞した。
昨年の日本選手権優勝の阪口竜平(SGホールディングス)は1500mに回り、リオ五輪などこの種目の国際大会代表を続けて来た塩尻和也(富士通)も、故障によるブランク明けのため5000mB組で、士別大会10000mで27分台を出した伊藤達彦(Honda)と対決する。
千歳大会の出場メンバーでは、3位だった法大卒ルーキーの青木涼真(Honda)が日本選手権では最高成績だったが、4位の滋野聖也(プレス工業)、ラストに強く自己記録(8分30秒98)では日本人トップの山口浩勢(愛三工業)、1500mから転向してきた楠康成(阿見AC)と、力の差はそれほどない選手たちが揃った。

どの選手も勝敗よりも、自己記録を短縮しておきたい大会だろう。三浦の存在よりも8分30秒を切るペースで展開することが重視されそうだ。
その中から誰が抜け出した選手が、塩尻、阪口に続く現役選手3人目の8分20秒台ランナーとなるか。

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