寺田的コラム
ゴールデングランプリ前日記事①
2020.08.22 / TEXT by 寺田辰朗
男子100m出場の桐生、山縣、ケンブリッジ、多田が会見
「優勝を目指して走ります。このメンバーで勝つにはタイムも必要」(桐生)
新国立競技場最初の陸上競技会であるセイコーゴールデングランプリ陸上2020東京(GGP)が、いよいよ明日と迫った。その前日会見が22日、14:30からオンラインで行われた。
日本新の可能性もある男子100mからは山縣亮太(セイコー)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)、桐生祥秀(日本生命)、多田修平(住友電工)の4人が出席。9秒台という数字こそ誰も口にしなかったが、選手の思いは「このメンバーで優勝するにはタイムは絶対に必要なので、タイムは気にせず優勝を目指して走りたい」という桐生のコメントに代表される。
●前半型の多田と後半型のケンブリッジ
前日会見には、各選手が意識していることが現れる。
多田はシーズン初戦からの復調を自身に期している。7月23日が10秒46(-0.5)、8月12日は10秒37(+0.5)と、今季初戦と2試合目はタイムが良くなかった。
「前回のレースは全体的に力が入った走りになっていましたから、GGPに向けてはリラックススしてキレを出すことを重点的にやってきた。明日はすごくハイレベルな戦いになると思いますが、自分のレースだけに集中すれば力まずに走れます。自分のレーンだけを見て走ります」
それができれば3年前のGGPで、ジャスティン・ガトリン(米国)を驚かせたように、スタートから序盤の走りで先行する展開に持ち込めるだろう。
ケンブリッジは7月の東京選手権に10秒22(-0.8)で優勝し、まずまずの手応えを得ていた。
「良い形でシーズンに入ることはできましたが、前半で上体が起きるのが早かったところと、後半で(重心への)乗り込みが少し甘かったところを重点的に修正してきました。周りも少し意識しつつも、自分のレースに集中したい」
それができれば16年の日本選手権で優勝したときのように、レース終盤で強さを発揮するだろう。

写真提供:フォート・キシモト
●桐生はトップスピード、山縣は気持ちがキーワード
桐生は8月1日に100mを10秒04(+1.4)で走り、今季の記録では優位に立っている。そのときも反省材料に挙げた「トップスピード」を、テーマに掲げている。
「今回もそこを意識しながら走りたい。(トップスピードが出る)中盤から後半の部分で良い走りができれば、結果も付いてくる」
トップスピード上げるには、スタートから1次加速、2次加速としっかりギアを変えながら、それぞれの段階で高いスピードを出していく必要がある。
昨シーズンはギアチェンジを「レース中に見えている情報に左右されずにできる」(土江寛裕コーチ)ようになった。もう一段高いギアを持てるようになれば、安定して9秒台を出せるようになる。
そして山縣は今大会が、昨年5月のGGP以来のレースになる。会見の山縣は気持ちの高ぶりを抑えようとしているのか、「去年が10秒11だったので、それを上回るタイムを目指して頑張ります」と、控えめな目標を口にした。
昨年GGP以降の試合に出られなかったのは、背中の痛みや肺気胸が原因だったが、そうした原因を取り除くにはどうすればいいか自問し続けた。そのための走りの改良に昨年秋以降、コロナの影響で試合に出られなかった間も、徹底的に取り組んできた。
「昨年が不本意なシーズンだったので、少しでも良い走りを、変わった走りをしたい」
気持ちではやることのないよう、タイムよりも自身の変化を見せることを目標に出場する。
会見の最後に勝ちきるために必要なことを問われたときも、「最後は気持ちだと思います」と答えた。
レースが近づいても課題を見つけ、その修正に集中することでプレッシャーなどの影響を受けないようにする。取り組んできた技術をレース本番出すには、山縣の場合は気持ちが重要なのだ。
●9秒台での決着も
下の表のように、男子100mには日本歴代上位10人中5人が、現役選手では6人中5人が出場する。これだけのメンバーで勝てば、9秒台が出ても不思議ではない。
▼男子100m日本歴代10傑 ★今大会100m出場選手
9.97(+0.8) サニブラウン・A・ハキーム(フロリダ大)19/06/07
9.98(+1.8)★桐生祥秀 17/09/09
9.98(+0.5)★小池祐貴 19/07/20
10.00(+1.9) 伊東浩司 98/12/13
10.00(+0.2)★山縣亮太 17/09/24
10.02(+2.0) 朝原宣治 01/07/13
10.03(+1.8) 末続慎吾 03/05/05
10.07(+1.9) 江里口匡史09/06/28
10.07(+1.8)★多田修平 17/09/09
10.08(+1.9) 飯塚翔太 17/06/04
10.08(-0.9)★ケンブリッジ飛鳥17/06/23
レースパターンで分類するなら多田は前半型で、勝つとすれば前半でリードを奪うケースが予想できる。ケンブリッジは後半型で、終盤で逆転するのが勝ちパターンだ。
桐生は前半から中盤型で、中盤でリードする展開を得意とする。山縣もそれに近いが、終盤のスピード維持能力も高い。小池祐貴(住友電工)は以前は後半型だったが、昨年は中盤から上がるようになっている。
だが、各選手が自身の特徴を本番で出せれば、走り全体がレベルアップする。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が9秒58の世界記録を出した09年世界陸上ベルリン大会がそうだった。後半型のボルトが前半から、他の選手をリードしていた。
多田の前半のスピードが上がれば、後半も高いスピードを維持できることも十分あり得る。200mタイプと思われていた小池だが、9秒98を出した昨年のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会は、中盤まで世界のトップと肩を並べていた。
自己記録がともに9秒秒98の桐生と小池は、自己新への手応えを以前の取材では答えている。前日会見で9秒台と口にしないのは、そのためにやるべきことに集中する意識が強いからだ。各選手が自身のテーマに集中し、それに成功したとき、優勝記録は自ずとハイレベルになる。
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