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寺田的コラム

【全日本実業団陸上この種目に注目!⑦女子5000m】

2020.09.20 / TEXT by 寺田辰朗

好コンディションなら14分台必至
トラックの五輪標準突破済みの新谷と廣中、マラソン代表の一山が激突

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写真提供:フォート・キシモト

 全日本実業団陸上が9月18~20日、埼玉県熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開催されている。最終日の女子5000mがすごいレースになるかもしれない。

 新谷仁美(積水化学)と廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)が、気象条件に恵まれれば14分台のペースで走る。14分台が出れば日本人では福士加代子(ワコール)に次いで史上2人目の快挙となる。
 新谷、廣中以外にも、今季15分0秒台で走っている一山麻緒(ワコール)、18日の10000mで優勝した鍋島莉奈(JP日本郵政グループ)ら好調の選手が揃う。何かが起きそうな予感がする。

●新谷は「出るからには自己新」と横田コーチ

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写真提供:フォート・キシモト

 複数の実業団から指導を委託されているTWOLAPS TCの横田真人ヘッドコーチは、初日の卜部蘭(積水化学)がそうだったように、今年の全日本実業団陸上は「記録や目標よりも中身」というスタンスで臨んでいる。
 「でも新谷の場合、中身はつねにタイムなんです」

 新谷は13年世界陸上モスクワでは10000mで5位に入賞した。そのシーズンで引退したが、18年に5シーズンぶりに現役復帰。昨シーズンは10000mで世界陸上11位という結果を出したが「陸上競技は仕事。プロは結果が全て」という強烈なモットーで、メダルを目指している。

 今年1月には米国のハーフマラソンで1時間06分38秒の日本新をマークし、2月にはニュージーランドで5000mを15分07秒02の自己新で走った。
「2月の5000mは気温も高いなか、1000mから1人で行って自己新でした。全日本実業団陸上もやるからには、自己ベスト以上の結果を出すための準備をしています」(横田コーチ)

 新谷が自己新以上、さらには14分台も視野に1000m毎を3分前後、1周72秒前後で飛ばすことが予想される。14分台に入るかどうかは、後半、ペースを維持できるかどうかにかかっている。大会2日目から気温も下がってきている。記録を狙うコンディションも期待できそうになってきた。

●好調の廣中が「仕掛ける」可能性も

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写真提供:フォート・キシモト

 今回期待ができるのは、新谷が独走とならないことだ。廣中璃梨佳は昨年12月に15分05秒40で走り、自己記録では新谷を上回っている。初日のジュニア3000mにも8分52秒30の大会新で優勝し、調整も上手く進んでいるようだ。

 日本郵政の高橋昌彦監督によれば、練習ではかなり速いタイムで走れているという。3000mのレース後の会見で廣中は、次のように話した。
「新谷さんというすごい選手にラストまでついて行くのか、ペースを見てどこかで仕掛けるかは、レース中に考えます。ついて行けるところまでついて行って、自分に勝ちたい」
 新谷のペースを遅く感じたときは、自分から仕掛けることも考えているようだ。自信や手応えが少しあるけど、あまり大きなことは言いたくない。そんな気持ちが伝わってきたコメントだった。

 一山は今大会の10000mは4位だったが、調子が上がって5000mに臨むことが期待できそうだ。7月のホクレンDistance Challengeも深川大会の10000mでは32分03秒65だったが、7日後の網走大会10000mでは31分23秒30と動きがよくなった。そして網走の3日後の千歳大会には15分06秒66と、5000mの自己新で走っている。
 一山は10000mレース後に「タイムが速い選手と何人か一緒に走ることができます。少しでも長く一緒に走って、記録も出したい」と5000mへの意欲を話していた。新谷のペース次第だが、一山が先頭に立つ展開があるかもしれない。

 鍋島は優勝した10000mのレース後に「一緒に練習していて廣中のスピードは段違いと感じています」と、チームの後輩を立てていた。だが日本選手権変則3連勝(5000m・5000m・10000m)の鍋島には、レース本番での強さがある。中盤で離されず、ラスト勝負に持ち込めば勝機はある。
 新谷と一山は記録を狙い、廣中は自らペースアップすることも視野に入れている。鍋島は得意のラストを生かすために、ハイペースへの耐性をつける。それぞれの思惑が速いペースに乗ることで凝縮すれば、日本記録の14分53秒22も可能性がある。

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