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寺田的コラム

ホクレンDistance Challenge第2戦深川大会➂

2020.07.11 / TEXT by 寺田辰朗

写真

写真提供:フォート・キシモト

女子3000m18年ぶり日本新の田中に一問一答
日本記録をたぐり寄せたラスト1周63秒のスパート
「ラスト1周は一番大事にしたかったところです」

 7月8日に行われたホクレンDistance Challenge深川大会で、女子3000mmの日本記録を更新した田中希実(豊田自動織機TC)。
レース翌日に取材に応じた田中は冷静に、ときには熱く、レースを振り返った。

▼田中希実の3000m日本新通過タイム
距離  通過タイム 400m毎 1000m毎
400 m 1分07秒7 67秒7
800 m 2分17秒7 70秒0
1000m 2分53秒3 ——— 2分53秒3
1200m 3分28秒7 71秒0
1500m 4分22秒8 ———
1600m 4分40秒9 72秒2
2000m 5分53秒0 72秒1 2分59秒7
2400m 7分03秒0 70秒0
2600m 7分38秒2 ———
2800m 8分09秒2 66秒2
3000m 8分41秒35 ——— 2分48秒4 ラスト400m63秒2
※非公式計時

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写真提供:フォート・キシモト

●田中が振り返る日本新のペース
——通過タイムは特に計算しないで自身の感覚で走ったということですが、1000mから2000mまでは少しタメた(意識的にペースを落とすこと)のでしょうか?
田中 そうですね。最初の1000mは気持ちが乗って、そのペースでいくらでも走れそうでしたが、興奮しすぎていたところもあると感じて、落ち着こうと思いました。
確実にタイムを狙うために少し自重しました。
——2000mから2600mまでは、400 m毎で見ると2秒速くしています。
田中 できれば残り1000mから70秒を切るくらいに上げて、スパート的に走りたかったのですが。
69秒で回っていたら、違ったレースにできたと思います。
——しかしラスト1周を63秒2まで上げたことで、日本記録を更新できました。田中選手のなかでは最速ラップでしょうか?
田中 1500m、3000m、5000mのラストでは最速だと思います。800 mの練習では中学生の男子と一緒に、67秒、62秒で走ったことがありました。
ラスト1周は一番大事にしたかったところです。理想はラスト1周までももう少し上げて、二段階スパートをすることでした。
——昨年12月にも3000mの日本新を狙っていたと聞いています。3000mを重視しているということでしょうか。
田中 特に重視ということではないのですが、日本記録に一番近い種目かな、と感じていたのは確かです。
今のところ3000mが自分に合っていて、走りやすい距離、得意種目と言っていいと思います。5000mにもすごくつながりますし、1500mと並んで大事にしています。
——1500mと並んで、というのは?
田中 こだわりが強いのは1500mの方です。スピードが課題の選手は距離の長い種目に移っていくケースが多いと思いますが、私は1500mにこだわり続けて来たことが5000mに生きていると思います。
3000mは上手く走れると自分では思っていますが、1500mは調子が良くても、レースの流れで上手く走れなかったりします。負けず嫌いなので、それも悔しくて。
——1500m日本記録保持者の小林祐梨子さんも、田中選手と同じ兵庫県小野市出身です。
田中 近くにいる方で、お話もよくさせていただいています。
いつか日本新を出して続きたいと思ってきましたし、祐梨子さんからも自分の記録を抜いてほしいと言われています。それも(1500mにこだわる理由として)あるのかな。

●「久しぶりに走れる楽しさが、勢いをつけてくれました」
——昨年の世界陸上ドーハ大会の決勝(15分00秒01の日本歴代2位で14位)では、3000m通過が8分59秒でした。
そのときの3000m自己記録は8分48秒38でした。網走大会(7月15日)の5000mはどのくらいの通過をイメージしていますか。
田中 網走では8分55〜57秒くらいかな、と思っています。昨年3000mは8分48秒でしたが、周回を間違えて2周残っているのに、最後の1周だと思って走ってしまいました。
それがなかったら8分43秒くらいまで出せていた感触があります。今回の8分41秒で2秒前進しました。ただ土台は、昨年よりも大きく上がっていると実感できています。調子の良いときが一瞬ではなく、長く続けられそうです。
調子が悪くなっても、高いレベルを維持して結果を安定させられそうです。
——田中選手だけでなく、士別、深川と好記録が多く誕生しています。選手たちが1試合1試合、大事に走っているという印象ですが。
田中 久しぶりの試合が楽しいと感じながら走っています。
当初は大会がどんどんなくなっていって、4月頃は精神的にもきつい状態でした。そこから自分と向き合って、練習をしっかりやるようにしたら、練習でも良いタイムで走れるようになりました。
大会のあるなしにかかわらず、走ること自体が楽しいと感じられるようになってきたんです。そう思っているなかで試合を走れることになり、久しぶりに走ること、その走りをみんなに見てもらえることが楽しかった。
それで士別の1500mと深川の3000mの走りに、勢いがついたのだと思います。

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