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TBSみのりの風景

  • 毎週火曜よる10:54〜放送

ディレクター日記

3月10日(火)ディレクター日記

日記の内容

 子供の頃、愛読していた「漫画 日本の歴史」の中で一番好きだったのが、第一巻と第二巻。縄文時代から古代国家の成立、そして多分奈良時代までが描かれていたと思います。ほとんど史実というよりは物語、想像の世界に近い、でも、日本の昔ってこんなだったんだと思いを馳せられる時代描写にわくわくしていたのだと思います。その、個人的にも懐かしく、いつかはゆっくり訪れたいと思っていた、古代ロマンにあふれる地、奈良の風景に出合ってきました。

 まずは、奈良盆地の大和三山。万葉集の中にもこの三山を詠った歌が数多くあります。畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)、天香具山(あまのかぐやま)。山というよりは、丘。なんともおだやかなたたずまいで、心がなごみます。その奈良盆地を見渡せ、三山を一度に見ることができる場所、それが甘樫丘(あまかしのおか)でした。ここは、蘇我蝦夷、入鹿親子が邸宅を構えていたといわれている丘です。何カ所も撮影ポイントを探した結果、ここからの眺めが一番よかった。やはり、権力者は一番いい場所から国を見渡していたということでしょうか…。歴史の知識を入れてゆかりの場所に立つと、また違った思いで景色を眺めることができるのは不思議なものです。

 そのような意味では、今回初めて知った大兵主神社と、穴師、巻向という場所にも大いに感動させられました。奈良、飛鳥よりももっと古い、ほぼ神話的な存在で古事記や日本書紀に書かれている垂仁天皇、景行天皇の都があったとされている地です。いわれを言い出すときりがないので割愛しますが、知れば知るほど興味深くおもしろいのです。今では人影もなく、ひっそりと静かな風景があるのみですが、神話と史実の境界で想像力をかきたてられます。古墳だらけの場所です。

 とにかく、今回とりあげた吉野本葛に関してもそうですが、昔の人々の知恵と想いというのは確実に今に繋がって遺ってきている、と強く感じさせられる空気が奈良にはあると思います。法隆寺や東大寺、春日大社など「世界遺産」にあふれる奈良ですが、かつての都人が眺め歌を詠んだ、おだやかな素朴でやさしい風景も、本当に奈良の魅力、貴重な財産だと思ったロケでした。また改めてゆっくり古代ロマンに浸りに奈良に足を運びたいと思います。

担当ディレクター:宮國史