土曜の夜と、たけしと僕

第33回 2013年12月17日

12月に入ってすぐの、ニュースキャスターの楽屋にて、
「お前、●●日って空いてる?その日は忘年会やるからよ・・・」と
殿から大変嬉しいお誘いがありました。

殿はいつだって、弟子に対しても、「●●日って空いてる?」といった誘い方をされます。
で、
こういった時、殿の機嫌が良さそうな時に限り、

「はい。不思議とその日だけ空いております!」と、タレントとして忙しくて忙しくて、一年でその日だけ空いておりました! といった、
ボケ要素を含む返事を返すのが、僕の数少ないパターンなのです。

殿は、僕の他愛もないこんなボケに対し、
「あっそう。そりゃよかった。まー無理しなくてもいいぞ」などと返されるのです。

大好きで、憧れて、恋焦がれて天下のビートたけしの弟子になった僕が、
殿との会話の中で、ふざけたり、ボケたりすることは、
まったくもって至上の喜びであり、大げさでもなんでもなく、
「弟子になってよかった!」と、心底思える要素の一であったりします。

そして、こういったことが出来るようになったのは、7年程前からでありました。

17年前、渋谷の路地裏で「ででで、弟子にしてください・・・」と、
小さく叫び、晴れて入門を許されてから10年程は、はただただ殿に言われたことに返事を返す日々の連続であり、当たり前ですが、こちらから「殿、先日はこんことがありました」的な話題をふりまくことなど到底出来ず、ただただ、‘おもしろみ‘のまったくない弟子として、時間が過ぎていったのです。

そんな状況が大きくかわったのが、以前こちらでも書いた、
殿とのタップダンスの稽古の日々であり、
連日繰り返された、殿との至近距離での稽古の中で、徐々に徐々に、孫弟子にあたる僕らが、殿と会話を成立させることが出来ようになり、その中で、
‘面白いこと‘を言える空気が自然と発生し、
少しの勇気ある弟子の何人かが、どしどしと、殿の前で‘ふざけ‘出したのが7年程前でした。
で、
本当にたいした話ではないのですが。
僕が殿の前で、‘しっかりとふざけられた‘一番最初の思い出を書かせて下さい。

やはり7年程前、21時少し前、家でだらだらとテレビを眺めていると、
殿の運転手から「殿と今焼き鳥屋に入ったのですが、北郷さんよかったら来ませんか?と、殿が言ってます」といった電話が入ったのです。

電話を切った僕は、歯を磨き、靴下を履くと、高円寺からタクシーに飛びのり、
殿の待つ青山の焼き鳥屋へ一目散に向かい、
到着して店の前で一度深呼吸をすると、静かに入店し、殿が座っていた席を無視する形で、ずんずんと店の奥まで歩いていき、行き過ぎて戻ってきては、
振り返って「あっ、たけしさん、来てたんですか?」と、‘殿に会うのが初対面であるこの店の常連客‘といった役柄を演じながら、まずは軽くボケたのです。

すると殿は、すかさず「えー、たまに来るんですよ。よかった座りませんか?奢りますよ」と、僕のつまらないミニコンに乗った返事を返され、
「そうですか、でしたら少しだけ・・」と言って殿の横に座った僕は、
「すいません。この方(殿を指して)の奢りで、店で一番高いナポレオンを下さい」と、さらにふざけると、
ここで初めて「バカ野郎!いつまでやってんだ!」と、ミニコント終了のツッコミを頂戴したのです。

で、ついでですので、
先日やった一番最新の‘ふざけパターン‘を。

殿、実は僕、北野映画出演がたけし軍団の中ではダントツの8本なんです。これは、あの北野組の常連で名優の「寺島進」さんと比べても、一本少ない数字なんです」と、2008年製作の、「アキレスと亀」以来、
北野映画に一ミリたりとも出れていない、‘心の嘆き‘を交えた、
大変斬新なアピールをすると、殿はいたく食いつき、

「へ〜そうなのか?」と、感想をもらしたのです。

僕は、さらに続けて、
「ですから、そろそろ次の北野映画に僕を出演させないと、僕が許しても
世間のみなさまが許しませんよ」と、もはや‘ノイローゼ‘な、持論を展開すると、
殿は「バカ野郎!お前がオレの映画に出なくたって、世間はとっくに許してるよ!」と、一掃されたのです。

果たして、僕はまたいつか、北野映画には出られるのでしょうか?

そして、もし近い将来、僕を北野映画で見かけることがあったなら、
それはきっと、間違いなく‘ふざけた結果‘なのだと思っていただければ
幸いなのです。

写真

写真は、楽屋でシャドーボクシングに勤しむ、実に躍動感のある、
足立区は梅島出身の北野武さんです。

2013.12.17   アル北郷

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〆さばアタル・プロフィール

生年月日:1968年11月4日
出身地:香川県
1989年にビートたけしに弟子入り漫才師として「ダウソタウソ」「ウッチャソナソチャソ」「ダッチョ倶楽部」など師匠につけられたパチモノのコンビ名で活動。現在は「情報7daysニュースキャスター」などで自称ブレーンを務める。

アル北郷・プロフィール

生年月日:1971年8月26日
出身地:東京都
96年、ビートたけしに弟子入り。
08年、映画「アキレスと亀」にて東京スポーツ映画大賞新人賞受賞。
現在TBS系「情報7daysニュースキャスター」ブレーン。「週刊アサヒ芸能」にて「決して、声に出して読めない たけし 金言集」好評連鎖中

 

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