土曜の夜と、たけしと僕

第17回 2013年8月20日

「殿とタップと僕」 その4

しばらくあいたので、前回の話を少し。

殿邸の地下室の稽古場にて、当時たけし軍団の最若手だった僕たちが、
殿の仕事が終わる夕方から、週に6日のペースでタップダンスの稽古を
やるようになったのです。


それまで、ぼくたち軍団の若手が、上の兄さん達、例えばガタルカナル・タカさん、つまみ枝豆さん、ダンカンさんらを抜きにして、殿と酒を飲んだりしたことなどまったく皆無だったため、殿と若手だけでのタップの稽古は、かなり新鮮で、新しい環境の始まりでした。

で、
僕は、「こういった場で、どんどん殿と喋らなければ、弟子になった意味ねーな」と思い、タップの稽古終りで、いつしか当たり前のように殿との食事会が開かれるようになると、僕はその時間、とにかく意図的に殿に喋り続けました。

この時から、その日にした殿との会話を書き留め、忘れることなく、
資料として残す作業を自分の中で開始したのですが、その作業は現在も続けていて、今、それらの資料がなにかと役にたち、とにかく重宝していたりします。

あの時のタップの稽古場は、僕にとって本当に‘役に立つ場‘であったのです。

話を稽古場に戻します。

当時、稽古にきていた若手の中で、殿
「こないだ、こんなことがありました」的な話をしていたのは、
僕のほかは先輩の無法松さんしかおらず、
ほぼ、二人が殿を独占する形になっていました。

なんて、夢のような時間だったのでしょう。

で、ほぼ毎日稽古があったため、僕の中で
殿にお話するわりとオチのある話‘のストックはすぐに底をつき、
途中から、
‘オチがあろうとなかろうと、もうなんでもいいから殿に話を聞いてもらっていいんじゃねーの!‘と勝手に開き直り、、

殿、先日、どうしても性欲がおさらまず、4年前に振られた彼女につい電話をしてしまい、『気持ち悪いからもうかけて来ないで』と言われてしまいました」だの

殿、姉がこのたび3度目の再婚をしたのですが、その新しい旦那が、僕より3つも年下でした」だのと、
ちっとも面白くもない、実にどうでもいい僕の個人情報をべらべらと
殿に喋りまくりました。恥ずかしい奴です。

が、殿はそんな僕のどうでもいい話にさえも、

「これほど中身のない話はないな!」とか、
「一生懸命話してるとこ悪いけど、もうちょっとオレが興味のわく話はねーのか?」とか、
なにかしら、ツッコミを入れて頂き、オチも面白みもまったくない僕の話も、最後にはしっかりと笑いが巻き起こり、まるで僕が殿のつっこみを引きだした錯覚さえ抱くようになり、僕は、すこぶる誇らしい気持になったりしていました。

ずいぶんと虫のいい話ですが。

で、
殿との毎晩の食事は季節に関係なく、鍋が基本であり、その‘ちゃんこ番‘を
最初の一年程、僕が担当していたのですが、さすがにほぼ毎晩さまざま種類の鍋を仕込んでいると、料理の腕がめきめきとあがり、
殿から「おまえの作る鍋は安心出来る」などと、芸では褒められなくとも
鍋の味で褒められるといった、はたして喜んでいいのかどうなのか、
よくわからない賛美をうけ、最終的には、チーズフォンデュさえも、
殿のリクエストに答え、特に苦労することなくさらっと作れるまでになったのです。

そして、僕の次にちゃんこ番を任された、当時殿の付き人だった後輩の
「近藤夢」は、僕よりもさらに料理の才能を発揮し、やがて、
近藤夢が作った餃子を殿が食すると、そのあまりの美味さに、
殿から本気で「お前、オレが資金を出すから、どっか都内に餃子の店やってみないか?」といった提案を受けたほどなのです。

この時、近藤夢は「僕、今は面白いって言われるより、料理が美味いと言われた方が嬉しいんです!」と、もう芸人なのかなんなのか、さっぱり分からない感想をもらしていまいた。

そんな、タップの稽古場には、役者さんから歌舞伎界のプリンスまで、
数々のスターな方々が、殿にタップを教わりにきたりもしていました。

ある日きたスターは、タップの稽古を10分程すると、
「たけしさん。六本木に飲みにいきませか?」と、言い出し、殿がやんわりと断っていたこともありました。

また、ある日きたスターは、タップの稽古をみっちり2時間、僕達とこなし、さらに、稽古終りの食事会で、僕らがビールなどを飲んでいる中、
その方は一切酒を口にすることなく、翌日も稽古にやってきては、
「これ、軍団のみなさんでどうぞ」と、ビールを山のよう差し入れすると、、また、がっちりとタップの稽古に参加し、静かに帰っていきました。

スターにも、色々な方がいるようです。

で、スターでない僕達が、殿とみっちりとタップの稽古をしていた期間は、
都合4年半程であったのですが、この期間、殿に本気で怒られたことが、
二度程ありました。そのお話はまた次回に・・・。


はい。これ、まだまだ続きます。

写真

ちなみに写真は、朝ズバで使用した、さまざまなパネルを、完全に遊び目的で勝手に拝借する、足立区出身の北野武さんです

2013.8.20   アル北郷

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〆さばアタル・プロフィール

生年月日:1968年11月4日
出身地:香川県
1989年にビートたけしに弟子入り漫才師として「ダウソタウソ」「ウッチャソナソチャソ」「ダッチョ倶楽部」など師匠につけられたパチモノのコンビ名で活動。現在は「情報7daysニュースキャスター」などで自称ブレーンを務める。

アル北郷・プロフィール

生年月日:1971年8月26日
出身地:東京都
96年、ビートたけしに弟子入り。
08年、映画「アキレスと亀」にて東京スポーツ映画大賞新人賞受賞。
現在TBS系「情報7daysニュースキャスター」ブレーン。「週刊アサヒ芸能」にて「決して、声に出して読めない たけし 金言集」好評連鎖中

 

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