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｢ベルリン、僕らの革命」「わが家の犬は世界一」

2005年04月26日

ベルリン、僕らの革命 4/29(金)公開

ドイツ映画としては１１年ぶりにカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。
主人公は正義感は強いが、貧しい、３人の２０代の男女。
彼らは夜毎、金持ち達の留守宅に忍び込んでは、家中の高級家具を一箇所にガラクタのように高く積み上げ、「贅沢は終わりだ」というスローガンを書置きして去る、という行為を繰り返している。
ある日、彼らが、ある実業家の豪邸に忍び込んだところ、たまたま、そこの主人が帰宅して、彼を誘拐する羽目になってしまう。　　　　そこで、この４人は人里は慣れた山小屋で、奇妙な共同生活を始めることになる。誘拐された実業家が、かつては自分も６０年代に社会主義運動の活動家だった、としみじみ告白するあたりから、ドラマは意外な方向に展開していく。。。
監督はハンス・ワインガルトナー。これが監督２作目の若手で、今のドイツでは、雇用が減り、不満が募っているのに、若者たちは政治に無関心で何もしない。だから、自分から行動を起こせ、というメッセージを込めたと、監督は語っている。

わが家の犬は世界一 4/30(土)公開

中国では国民的俳優といわれるグォ・ヨウが演じる主人公は貧しい工場労働者で、家に帰ると口うるさい妻と反抗的な息子が、自分を相手にしてくれない。唯一、飼い犬のカーラだけが自分を慕ってくれる。
ところが、そのカーラが警察に取り上げられて、放っておくと処分されるまで１８時間しかないという状況になる。
中国では犬を飼うのに、登録料およそ７万円が必要で、これは、どうやら、かつてはペットは贅沢だという風習の名残。
およそ７万円という登録料の調達をめぐって、主人公の涙ぐましい奔走振りをユーモラスに描いている。
ちなみに中国では公開されて大反響を呼び、登録料が５分の１の１万４千円に値下げされたという。

「ウィンブルドン」「ウィスキー」

2005年04月19日

ウィンブルドン 4/23(土)公開

去年、マリア・シャラポワが優勝したテニスの聖地、ウィンブルドン。映画は、毎年6月から7月にかけて2週間開催されるウィンブルドンのトーナメントで出会った男女選手のラブストーリー。
男性プレイヤー役にポール・ベタニー。イギリスの演技派で、5年前、「ギャングスター・ナンバー1」で注目。それ以来、久しぶりの主役。彼は、かつて世界ランク11位まで上り詰めたものの、今は119位に低迷し、引退を決意して出場した選手を演じる。
相手は、キルスティン・ダンスト。「スパイダーマン」で注目の彼女が演じるのは、テニスの英才教育を受けて彗星のごとく登場した期待の新人選手。
この2人が愛し合うようになるが、若い恋人を得て発憤したベタニーは、あれよあれよと勝ち進んでいく。一方、彼女の方は、恋のために集中力が散漫になり調子があがらない。
ウィンブルドンのコートが初めて撮影許可を出したことが話題。そして、87年にウィンブルドン大会で優勝したパット・キャッシュがコンサルタントとしてプレーを指導。ちなみにボールはCG合成。また、解説者の役で、ジョン・マッケンローとクリス・エバートが登場、辛口コメントを連発するのも見所。

ウィスキー 4/30(土)公開

日本で劇場公開される初めてのウルグアイ映画。ちなみに、ウルグアイでは、映画が発明されてから、長編劇映画はおよそ60本しか制作されていないという。
監督は、ともに30歳という2人組。ファン・パブロ・レベージャとパブロ・ストール。この映画は、2人の長編2作目。
去年のカンヌで「オリジナル視点賞」と「国際批評家連盟賞」をW受賞。去年の東京国際映画祭では、グランプリと主演女優賞を獲得。
主要登場人物は、たったの3人。 60代のユダヤ系の兄弟と50代の独身女性。兄は、ウルグアイの町で小さな靴下工場を細々と経営。一方、弟は、ブラジルに進出して靴下工場で成功をおさめる。長い間疎遠だった弟が、彼らの母親の墓を建てるために、久しぶりに兄を訪ねることに。そこで、兄は、工場に永年勤めている事務員の女性(ミレージャ・パスクアル)にある頼み事をする。それは、弟が滞在している間だけ妻のふりをしてほしいというもの。
兄貴も、偽の妻になる女性も、とにかく無口で無表情。台詞は少なく、演技も大げさな身振りや手振りもなく、シンプルの極み。そんな2人に饒舌な弟が加わり、中盤からドラマは思いもよらぬ方向に展開していく。
ちなみに「ウィスキー」は、カメラに笑顔を向けるときの掛け声で、日本で言うところの「はいチーズ」。味わい深さが絶品の一作。

《プレゼントのお知らせ》

「ウィンブルドン」「ウィスキー」の劇場招待券を、それぞれ5組10名様にプレゼント: 〒107-8066 TBSラジオ・森本毅郎スタンバイ「ウィンブルドン」または「ウィスキー」劇場招待券プレゼントの係。; 住所・氏名・職業・年齢・電話番号・番組への感想、そしてご希望の作品名をお書きになってハガキでご応募ください。; 4/22(金)消印有効。当選者の発表は発送を持ってかえさせていただきます。

「インファナル・アフェアIII 終極無間」「海を飛ぶ夢」

2005年04月12日

インファナル・アフェアIII 終極無間 4/16(土)公開

香港映画の底力を示す大ヒット三部作の完結編。シリーズは、マフィアが警察に送り込んだ刑事(アンディ・ラウ)と、警察がマフィアに送り込んだ潜入スパイ(トニー・レオン)の 2人の主人公の対決を中心に展開されるアクションドラマ。
完結編のIIIは、Iの10ヶ月後からスタート。さらにIと、2人の青春時代を中心に描いたIIとを穴埋めするようなエピソードも盛り込んで、アンディ・ラウの宿命、運命を描いていく。
今回は新たな登場人物として、チャン・イーモウ監督「HERO」で、秦の始皇帝を演じたチェン・ダオミンがアンディ・ラウと対決。三部作を通じて脚本が実によく練られていて、今回も衝撃的な結末が用意されている。
またIが大ヒットした3年前から、ハリウッドでのリメイクが決まっていたが、マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオvsマット・デイモンという顔ぶれでいよいよスタート。配役がどうなるのか興味深い。

海を飛ぶ夢 4/16(土)公開

スペイン映画で、今年のアカデミー賞・外国語映画賞を受賞。「尊厳死」という重いテーマを実在の人物を通して描いたドラマ。監督は、ハリウッドでニコール・キッドマンの「アザーズ」を監督したスペイン人のアレハンドロ・アメナーバル。
スペインを代表する演技派ハビエル・バルデムが演じるラモン・サンペドロという人物は、海での事故で首から下が不随となり、ベッドで寝たきりの生活を26年間続けていた。彼は、尊厳死の決意をするが、手助けをした人を含めて法に触れる行為ということで、自ら死ぬ権利を求めて法廷闘争に持ち込む。
彼をめぐり、自らも不治の病に倒れた女性弁護士が応援にかけつけ、逆に、生きる希望を取り戻させようと地元の女性も現れる。さらに、主人公の死の決意を理解して安らかに死なせようとする兄嫁。この3人の女性との交流を盛り込みながらドラマは静かに進展。
また主演のハビエル・バルデムは、実在のキューバの亡命作家を演じた「夜になるまえに」でも、アカデミー賞候補になった。今回は、35歳になるバルデムが55歳の主人公を演じ、しかも、寝たきりの主人公を声と目の表情だけで演じるという難役に挑戦。ちなみに1日5時間のメークが必要だったという。
ごく最近、アメリカでもある女性の尊厳死が大きな問題になったばかり。考えさせるところの多い作品。

《プレゼントのお知らせ》

「インファナル・アフェアIII」「海を飛ぶ夢」の劇場招待券を、それぞれ5組10名様にプレゼント: 〒107-8066 TBSラジオ・森本毅郎スタンバイ「インファナル・アフェアIII」または「海を飛ぶ夢」劇場招待券プレゼントの係; 住所・氏名・職業・年齢・電話番号・番組への感想、そしてご希望の作品名をお書きになってハガキでご応募ください。; 4/15(金)消印有効。当選者の発表は発送を持ってかえさせていただきます。

「バッド・エデュケーション」「コーラス」

2005年04月05日

バッド・エデュケーション 4/9(土)公開

スペインのペドロ・アルモドバル監督の新作。ニューヨーク映画批評家協会賞・外国語映画賞を受賞。また、おととし、「オール・アバウト・マイ・マザー」でアカデミー賞・外国語映画賞。去年も「トーク・トゥ・ハー」でアカデミー賞・脚本賞。
今回の新作は、半自伝的な要素を盛り込んだことで話題。さらに、「モーターサイクル・ダイアリーズ」で日本でもブレイクしたメキシコのイケ面、ガエル・ガルシア・ベルナルが主役で、これも話題。
物語は80年のマドリード、売り出し中の若い映画監督のもとへ、16年前に同じ神学校寄宿舎でかつては親友だったという俳優志望の美青年(ガエル・ガルシア・ベルナル)が現れる。美青年は、かつての自分たちをモデルにした短編小説を差し出し、これを映画化してほしい、主人公を自分に演じさせてほしいと申し出る。
小説の内容は、寄宿舎で神父から性的虐待を受けた主人公が成長し、ゲイのナイトクラブの芸人になり、神父を恐喝して復讐するというもの。映画は、小説の映像化(劇中劇)と、現代の監督と美青年との関係が交互に描かれていく。ところが、この監督は、美青年が自分の親友ではなく偽物じゃないかと疑うようになり、そこからドラマはどんでん返しの連続。
アカデミー賞の前2作が「癒し系」だったのに比べ、久しぶりにこの監督ならではの毒気を発揮。ミステリアスなハードボイルド仕立てのストーリー。

コーラス 4/9(土)公開

アカデミー賞で、外国語映画賞と主題歌賞にノミネートされたフランス映画(受賞は逃したが)。フランスでは、2004年の興行成績第1位を記録した大ヒット作。
制作したのは、俳優でプロデューサーのジャック・ペラン。俳優としては「ニュー・シネマ・パラダイス」、プロデューサーとしては「WATARIDORI」でおなじみ。監督のクリストフ・バラティエは、ペランの甥にあたる。
世界的に有名な指揮者が、55年前の戦後間もない頃、問題児たちを矯正する寄宿舎で出会った音楽教師との日々を回想する。高圧的で厳しい校長先生の管理の下、子供たちは、心を閉ざしている。そんな状況に赴任してきた音楽教師は、子供たちにコーラス隊を組ませ、音楽の楽しさを教えて子供たちの心を開かせる。
寄宿舎一の問題児だった少年が、後の世界的な指揮者となるのだが、その少年時代の主人公を演じるのは、実在するサン・マルク少年少女合唱団のソリストをつとめる13歳のジャン=バティスト・モニエ。歌が歌えて演技もできることから主人公に抜擢された。

「サマリア」「コーヒー&シガレッツ」

2005年03月29日

サマリア公開中

今、世界で最も注目されている韓国のキム・ギドク監督の10作目。ギドク監督は45歳になるが、長い間、韓国内では異端視されてきた。しかし、去年公開の「春夏秋冬、そして春」が、韓国のアカデミー賞と言われる「大鐘賞」の作品賞を獲得してから、風向きが変わりはじめ、今や韓国内では絶大な評価と人気。
「サマリア」は、去年のベルリン国際映画祭の監督賞受賞作品。この「サマリア」のあとに撮影した「3番アイアン」という作品では、ベネチア国際映画祭の監督賞を受賞。カンヌにも別の新作を出品予定で、3冠なるかが注目されている。
「サマリア」は聖書のエピソードからとられたタイトル。内容はキリスト教とは関係なく、援助交際をする2人の女子高生の物語。オーディションで選ばれた新人女優2人が演じる女子高生たちは、ヨーロッパ旅行がしたいということで、売春をしていた。ある時、少女の一人の父親である刑事が、捜査中に、売春をしている娘を目撃してしまう。そこからドラマは、父親の苦悩を中心にして、衝撃的な展開をみせる。
これまでの作品とは違い、全編に言いようのない哀れみ・哀しみが立ちこめ、作風が変化。

コーヒー&シガレッツ 4/2(土)公開

日本でもファンの多いジム・ジャームッシュ監督の5年ぶりの新作。喫茶店のテーブルを挟み、コーヒーとタバコについておしゃべりする人々を描いたショートストーリーを11本つないだオムニバス。
全編モノクロで撮影。各エピソードは一気に撮影されたのではなく、18年かけて撮りだめしてきたものを1本にまとめた。
今まさに旬のスターたちが登場。今年のアカデミー賞助演女優賞のケイト・ブランシェット(彼女は一人二役でおしゃべりを繰り広げる)。「ロスト・イン・トランスレーション」で去年アカデミー候補になったビル・マーレー。「スパイダーマン2」の悪役で注目されたアルフレッド・モリーナ。ロック・ミュージシャンのイギー・ポップとトム・ウェイツ。ホワイト・ストライプスという元夫婦のロックデュオなど、映画だけでなく音楽やアートのジャンルからもキャスティング。
全員、実名で登場。素顔でアドリブを展開しているように見えるが、実はジャームッシュの計算された脚本があり、虚実皮膜の面白さ。また、各エピソードは独立しているが、どこかで接点があるといった「ミステリー・トレイン」のような仕掛けも楽しめ、ジャームッシュの本領発揮。

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