8月4日開幕

寺田的世陸別視点

第20回2017.08.09

今日はここに注目! Day6 8月9日
男子200m準決勝でサニブラウンと飯塚がファイナリストへの挑戦

女子400mは超人BIG7同士の対決に19歳の新鋭が割って入るか?

◇◇◇◇◇出場日本人選手◇◇◇◇◇
▼男子200m準決勝 20:55(10日4:55)
サニブラウン(東京陸協)
飯塚翔太(ミズノ)

決勝種目は女子の400mと砲丸投、男子400mHの3種目と少ないが、アリソン・フェリックス(米国)と、ショーナ・ミラー・ウイボ(バハマ)が激突する女子400mがこの日のクライマックス。男子400mHは準決勝最高タイムを出しているカーロン・クレメント(米国)の、リオ五輪に続く2年連続金メダルが濃厚。女子砲丸投は混戦が予想されている。
また、男子200m準決勝にはサニブラウン・アブデル・ハキーム(東京陸協)と飯塚翔太(ミズノ)が出場。2003年パリ大会の末續慎吾以来、14年ぶりの決勝進出を目指す。

男子200m準決勝は1組に飯塚、2組にサニブラウンが出場し、14年ぶり2人目の決勝進出を目指す。
予選の走りでは準決勝通過は難しい。サニブラウンは後半を頑張って2位(20秒52・向かい風0.5m)で通過したが、スタートで出遅れた。
「前半が思ったより出ていなくて、それで後半を若干、無理をする形になりました。準決勝にはリフレッシュして、しっかり合わせたい」
サニブラウンが出場する2組には、19秒台の自己記録を持つヨハン・ブレイク(ジャマイカ)と、ジャリーム・リチャーズ(トリニダードトバゴ)がいる。準決勝は3組が行われて各組上位2人と、3位以下の全選手のなかで記録上位2人が“プラス”で決勝に進む。
19秒台2人のどちらかに勝って着順で進むのが理想だが、北京世界陸上、リオ五輪とも20秒10までが“プラス”で進んだ。その記録が目安となる。

飯塚は予選7組で20秒58(追い風0.7m)。4番目のフィニッシュで予選落ちと思われたが、2人がコース侵害で失格して2位に繰り上がり、予選通過を果たした。
「(繰り上がりは)複雑ですが、良いきっかけをもらったので、無駄にしないようにしたい。今の課題をクリアできれば、自分にも(決勝の)チャンスがあるので挑戦します」
 飯塚が出場する1組には、シーズンベスト19秒台はアカニ・シンビネ(南アフリカ)1人しかいない。絶好調の飯塚なら十分にチャンスがあるが、準決勝は「(技術的な)感触は良かった」にもかかわらず、20秒5台しか出なかった。
好材料は、苦手とするインレーンではなく、外側に1人しかいない8レーンに入ったこと。今季は視界に強い選手が入ると硬くなることが多いが、準決勝は思い切り前半から飛ばすことができそうだ。
予選の2日後に準決勝という珍しい日程(400mと2種目に出場するバンニーキルクへの配慮らしい)が、修正作業が必要な日本の2人にはプラスに働くかもしれない。観戦するときに注意すべきは前半の走り。2人とも前半が良ければ、後半も高いスピードを維持できるので決勝進出への期待が大きくなる。

超人BIG7同士が激突する唯一の種目が、女子400mである。31歳のフェリックスと、23歳のミラー。168cmのフェリックスに対し、ミラーは185cm。
対照的な2人だが共通点は、家族の支えで強くなったこと。フェリックスは兄がエージェントで、マネジメント業務だけでなく、精神的な面でも大きな支えとなっている。ミラーの母親はバハマ陸連で働き、父親は陸上競技のコーチ、妹も短距離選手という陸上一家で育った。

その2人が大接戦を演じたのが昨年のリオ五輪。フェリックスがホームストレートで追い上げたが、文字通り倒れ込んでフィニッシュしたミラーが0.07秒差で逃げ切った。フェリックスは悔しさのあまり、しばらく立ち上がることができなかった。
世界陸上ロンドンは、そのリターンマッチになると思われたが、準決勝2組で19歳のサルワ・エイドナセル(バーレーン)が50秒08と、3組行われた準決勝全体でトップのタイムをマーク。同じ組で2位のフェリックスは50秒12、1組1位のミラーは50秒36だった。
だが男子400mでは準決勝でトップタイムを出したガーディナー(バハマ)が、決勝ではタイムを落として超人BIG7の1人、バンニーキルク(南アフリカ)に完敗した。
女子もフェリックスとミラーの2人が、超人BIG7にふさわしい強さを見せるのだろうか。

寺田 辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。
一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。
選手、指導者たちからの信頼も厚い。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。

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