8月4日開幕

寺田的世陸別視点

第14回2017.08.06

今日はここに注目! Day3 8月6日
男子マラソン中本と川内の相乗効果に期待

フルエントリーが5種目で日本選手出場が多数

◇◇◇◇◇出場日本人選手◇◇◇◇◇
▼男子3000mSC予選 10:05(18:05)
潰滝大記(富士通)
▼男子棒高跳予選 10:40(18:40)
山本聖途(トヨタ自動車)
荻田大樹(ミズノ)
▼男子マラソン 10:55(18:55)
川内優輝(埼玉県庁)
井上大仁(MHPS)
中本健太郎(安川電機)
▼男子400mH予選 11:05(19:05)
安部孝駿(デサントTC)
石田裕介(早大)
鍜治木崚(城西大)
▼男子110mH予選 13:15(21:15)
高山峻野(ゼンリン)
増野元太(ヤマダ電機)
大室秀樹(大塚製薬)
▼女子マラソン 14:00(22:00)
重友梨佐(天満屋)
安藤友香(スズキ浜松AC)
清田真央(スズキ浜松AC)
▼女子やり投予選A組 19:05(7日3:05)
海老原有希(スズキ浜松AC)
斉藤真理菜(国士大)
▼男子110mH準決勝 20:10(7日4:10)
未定
▼女子やり投予選B組 20:30(7日4:30)
宮下梨沙(大体大TC)

マラソンが世界陸上史上初めて、男女同日開催される。
さらに男子110mH、男子400mH、女子やり投を加え、日本がフルエントリーする種目が5つ行われ、日本選手の出場人数が最も多い1日となる。入賞を目指す男子棒高跳の予選、14年ぶりの決勝進出を目指す男子3000mSC予選も行われる。

男女マラソンは6人全員に入賞のチャンスがある。そのなかで注目したいのは中本健太郎と川内優輝。
“戦友”の意識をお互いに持つが2人が一緒に走ることの相乗効果だ。
2人とも2011年テグ世界陸上が初の代表入り。12年ロンドン五輪は中本だけだったが、13年のモスクワ世界陸上も2人一緒に出場した。川内は14年仁川アジア大会にも出場したが、五輪&世界陸上は2人とも4年ぶりの代表となる。
国内大会も含めて5レースを一緒に走り、中本が3勝2敗と勝ち越してはいるが、13年別大では川内が激しい競り合いを制して2時間08分15秒の自己新(当時)で優勝した。

川内は、中本と走ってきたここまでの道のりを、以下のように振り返った。
「ロンドン五輪を逃して川内は終わったとか言われていましたが、中本さんに勝ってモスクワ、仁川と代表を続けるきっかけになりました。その後2人とも代表から遠ざかって、今回また一緒に代表入り。クールな中本さんが、今年の別大で優勝されたときに涙を見せた意味は大きいと感じました。中本さんが今回の世界陸上に懸ける思いは、私と同じように強いと思っています」
中本も同じ思いだった。
一緒に取材したわけではないのに、2人の思いはシンクロしていた。
「川内君の復活はうれしいですね。最初は公務員ランナー、市民ランナーという点が注目されて、絶対に負けられないと思っていた相手です。今は素直に、彼のやっていることはすごいと思える。こうして3回も同じ大会の代表になり、今は一緒に戦いたい気持ちと、負けたくない気持ちの両方がある。本当に良い刺激をもらっています」
市民ランナーと実業団ランナー。対照的な立場を意識していたのは、川内も同じだった。
 
「以前は私も若かったですから、実業団選手に勝ちたい、という部分がありました。今はそうした部分よりも、とにかく結果を残したい気持ちが強くなっています」
テグとモスクワでは、川内は集団の前を引っ張る形で走ることもあった。代表への思いが強く、それが力みとなって展開に出てしまった。
「自分が雰囲気に飲まれてしまっていたのに対し、中本さんは淡々と走って、後半へばった私をスーッと抜いて行きました」
その反省が今回のロンドンでは生かされる。川内が過去2回と違って集団の中で落ち着いて走ったら、中本効果といえるだろう。川内は「中本さんもピークを合わせ、自分もピークを合わせられたら、複数入賞も見えてくる」という。
立場の違う2人の気持ちが一致して、相乗効果が良い形で現れることを期待したい。

女子やり投は史上初のフルエントリー。これまで1人で五輪&世界陸上に出場してきた海老原有希が、3人出場することの効果を強調していた第9回コラム。
男子の110mHと400mHもフルエントリーした。解説者の谷川聡さん(110mH日本記録保持者)はトラック種目でも、複数出場のメリットはあると言う。
「初めての選手たちは国際大会になると、自分が良い状態なのか悪いのか、よくわからないことがあります。そのとき、いつも戦っている選手が近くにいることで自分の状態を把握できて、落ち着くことができる。ウォーミングアップも招集も一緒に行くので、雰囲気に飲まれることも避けられます」
男子400mHは石田裕介と鍜治木崚の学生2選手が初出場。110mHは増野元太にアジア大会出場経験があるが、高山峻野と大室秀樹は初出場。複数代表のメリットを生かし、1人でも多く準決勝にラウンドを進めてほしい。

寺田 辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。
一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。
選手、指導者たちからの信頼も厚い。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。

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