テッペン!水ドラ!!『死幣ーDEATH CASHー』死幣ーDEATH CASHー

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現場レポート

『死幣』誕生……恐怖の裏話

2016.7.18 by 脚本構成・美濃部達宏

放送作家の美濃部達宏です。
『死幣』では構成・脚本を担当させていただております。
バラエティ、音楽番組の構成には二十年近くたずさわってきましたが、ドラマは初挑戦でした。
今回、はじめてドラマの仕事をさせてもらったことで、じつに多くのことを気づかせてもらいました。
その中でも最も大きな気づきを二つ、そして『死幣』というオリジナル・ストーリーが出来上がるまでの裏話を今日はすこしお話させていただきます。

ひとつ目の気づきは、「挑戦する恐怖を乗り越える」ことの大切さです。
『死幣』にはお化けの類は出てきません。
これは企画の立ち上げ段階から、『死幣』のプロデューサー・いとPが決めた方針でした。
その方針にしたがい、ならばと私もアイディアを出させていただきました。
しかし、じつはその方針に、上層部などから強い反対意見が出ていました。
世界的にも評価が高いジャパニーズ・ホラーのセオリーでは貞子や伽倻子のようなお化けが出ることがヒットの方程式であり、そもそも「お化けが出てこなくて本当に恐いのか?」というのがその理由でした。
ここで本来なら、(いとPにとっても『死幣』が初のプロデュース作品なので)経験豊富な上層部の意見を取り入れてしかるべきだったでしょう。
しかし、いとPはそうした上層部の意見を突っぱねて、あくまで“お化けの類は出さない”という当初の方針を貫きました。
その結果……第一話放送後に、視聴者の皆様からたくさんの「恐かった」「面白かった」というご意見をいただき、視聴率も前期を上回る成績を収めることができました。

これは、いとPが挑戦する恐怖を乗り越えたからこそ成し得たものでした。
挑戦するということはこれまでの常識に対する非常識なことをす
るわけですから誰にとっても恐いものです。
しかし、挑戦をしなければ新しいものは生み出されません。
そのことを『死幣』にたずさわれたこと、(ファニー・フェイスなのに意外に気骨のある)いとPの姿勢により、あらためて気づくことができました。

ふたつ目の気づきは、「強いセリフを作る恐怖」です。
私が番組作りをする上で信条の一つにしているのが「強い画」をいかに作るかということです。
「強い画」とは、簡単にいえば、衝撃的な映像のことです。
バラエティ番組でも、音楽番組でもどうしたら視聴者の方々にインパクトを与えられるかを考え、番組を企画・構成しています。
なので『死幣』では、当初、私はいかに登場人物を衝撃的に殺すか(皆様がピタゴラというアレ)を第一に考えていました。
ところが、「強い画」は何も衝撃映像だけで生まれるわけではなかったことに気づかされました。
それは第1話目の脚本会議の時でした。
私が書いた1話の脚本を読んで、川嶋監督が「(戸次重幸さん演じる)若本のセリフが弱すぎる!」とダメ出しをしました。
そして「こういうセリフの方がイイ!」と川嶋監督は、若本の役を自ら演じ始めたのです。
私は初め、それを見て「大丈夫かな…」と不安を覚えました。
それは(戸次さん演じる)若本の初登場シーンであり、リアリティやストーリーのつながりから、あまりに強烈すぎると思ったからでした。
しかし……実際、戸次さんが若本を演じたシーンを映像で見てみると、川嶋監督が(会議室で熱のこもった演技で見せた)セリフの方が何倍もインパクトがあるものに仕上がっていました。
そうして生まれたのが、第1話の「刑事が捜査して何が悪い!」というセリフでした。
戸次さんが第一話目で登場するのは、わずか3シーンですが、この強いセリフにより、(今後重要な役目となっていく)彼の存在を深く印象付けることができたと思います。
強いセリフを作ることはとても恐いものです。
それはドラマの世界観やリアリティ、ストーリーを壊してしまう危険性もはらんでいるからです。
しかし、その恐怖を乗り越え、あえて強いセリフを作ることで、強い画が生まれるのです。
「強い画」は何も人が死ぬシーンなどの衝撃映像ばかりでなく、役者の方が強いセリフを吐き出すことで作り出されることに(会議室で川嶋劇場を観劇したことで)気づくことができました。

『死幣』はホラー・サスペンスであり、これからも衝撃的な映像と息を呑むストーリーが展開されていきますが、同時に“お金と対峙する人間ドラマ”が見所でもあります。
そしてその人間ドラマは役者の方々の熱い演技によって生み出されていきます。
そこで、どんな強いセリフが吐き出され、役者同士がぶつかり合っていくのかにもぜひ注目していただきたいと思っています。
深夜ドラマですが、それを感じさせまいと、役者の方々も、スタッフ一同も挑戦する恐怖を乗り越え本気で挑んでいる『死幣—DEATH CASH—』を、どうか最後までお見逃しなく! よろしくです!

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