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本間之英『誰かに教えたくなる 社名の由来』
講談社 1600円
2003年10月23日
ブックナビ推薦本
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★今日の担当は書評家の岡崎武志さんです。

★本間之英『誰かに教えたくなる 社名の由来』
  講談社 1600円


★日本の有名企業310社の社名の由来について調べたら、いろいろ面白い事実があった、という本。昨年出た本ですが、ビジネスマンの間で静かなベストセラーになっていて、つい最近Part2(237社)も出た。
「すべての社名には、創業者(命名者)の夢や願いが秘められている。そこに創業者のメッセージが込められている」というんですね。

★思わず「へぇ〜」と言いたくなる話がいろいろ出ているが、一番面白いと思ったのが「セメダイン」です。接着剤。一般的には「セメント」結合剤、と「ダイン」力の単位、の組み合わせと言われているがとんでもない。これ日本語だったんですね。創業者・今村善治郎は国産の化学接着剤をつくる夢にとりつかれた男で、「接着剤の鬼」と呼ばれた。接着剤の鬼、ってイヤな鬼ですねえ。
彼は大正期に開発に取り組み、ついに大正12年、化学接着剤を発明。「セメダイン」と命名する。当時、人気のあった接着剤がイギリス製の「メンダイン」。この「メンダイン」を攻め出せ! メンダインを攻めろ、セメロ、メンダイン……セメダインとなった。そして社名にする。おいおい本当か、って感じですが本当です。

★「すかいらーく」も意外でした。昭和45年に東京都府中市に一号店が誕生。最初はカタカナ。「スカイラーク」は英語で「ひばり」ですが、現西東京市のひばりが丘団地に由来するという。府中市に一号店で、なぜひばりが丘? 創業者は昭和37年にひばりが丘団地の一角に乾物屋「ことぶき屋」を開店。バス始発から最終まで営業し人気を集め、六号店をつくるまで発展。ところがスーパーに押され思い切って飲食業に転換。これが郊外型レストラン「スカイラーク」でした。カタカナは、一号店開店の半年後には、やわらかさを出そうとひらがなに。創業者がアイデアと実行力の人であることがわかる。

★テニスのラケットやゴルフクラブの世界的ブランド「ヨネックス」。「ヨネックス」由来はおわかりでしょうか。創業者が米山さんという。拍子ぬけしますよね。
設立時は米山製作所。ラケットを作ってました。「ヨネ」はいいが「エックス」は何か、というとこれまた拍子抜け。世界進出をはかるため社名変更するとき、ヨネヤマの「ヨネ」は残そう。それにつづくことばとして、当時、世界進出して成功していたブランドに「SONY」「PENTAX」があった。これをヒントに、「ソニー」ならぬ「ヨネイ」、「ペンタックス」ならぬ「ヨネックス」の2案が出た。会社が2派に分かれて争ったそうですが、「YONEY」は、すでにドイツの企業にあることがわかった。あってよかったですよ。「ヨネイ」のラケットって、なんだか破けそうですもんね。

★ちなみに清掃用具のダスキンは、創業者の命名では「株式会社ぞうきん」になるはずだった。「そんな社名では嫁サンも来てくれない!」と若手社員らが必死に抵抗して、ダストとぞうきんを足して2で割ったダスキンに落ち着いたとか。

★日本初の持ち帰り寿司を商売にした「小僧寿し」は、志賀直哉の名作「小僧の神様」が由来。主人公の小僧が寿司屋に入って寿司を手にしたところで値段の高さに気づいて立ち往生してしまうという場面がある。寿司を大衆化して庶民にこんな立ち往生をさせないようにしよう、というのが創業の精神だとか。

★そのほか、花王が「長瀬商店」時代の明治20年に石鹸を売り出した。そのとき、顔を洗うから「かおう」「花王」と名づけた。駄洒落ですね。

★やっぱり社名、名前って大事だなあ、と思うとともに、けっこう駄洒落があったり、勢いでつけてんな、というケースがあった。セメダインとか。
しかし、それでいいんだ。創業者が会社を起こすエネルギー、勢いでつけた名前がその後の業績、発展で定着して、いい名前に思えてくる。

★キャノンなんて、昭和九年に出たカメラの商品名で、創業者が「観音」信仰 をしていて、観音をローマ字読みしたところからついた。それが戦後、株式上場するとき「カタカナ社名はやめたほうがいい」と兜町からクレームがついたと言いますが、いまやカタカナ社名が氾濫している。そんなものだな。

★社名にまつわる一言豆知識にとどまらず、創業の精神や事業内容もコンパクトにまとまっているので、ビジネスマンや就職活動中の学生の企業研究にもいいんじゃないでしょうか。会社四季報なんてなかなか読む気になれませんが、これならPart2と合わせて547社分、楽しく読めます。
鳴海章(なるみ・しょう)『月のない夜』
2003年10月16日
ブックナビ推薦本
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今日の担当は本の雑誌社・顧問の目黒考二さん
(=文芸評論家の北上次郎さん)です。

★鳴海章『月のない夜』徳間書店 1800円

★主人公・岸川貴次42歳は、小さなオフィス機器販売会社の営業課長。この男の現在の生活が淡々と描かれていくが、読んでいくとどんどん気が滅入ってくる。

★会社の業績は悪くなる一方で、将来の展望もない。リストラに怯える毎日。妻との仲もギクシャクしているし、老いた父の具合も芳しくない。しかしそれは仕方がない。いまどき珍しいことではない。

★やりきれないのは元気だった頃の話が挿入されること。貴次は上司とお昼にテイクアウトのハンバーガーを食べながら、当時のことを思い出す。その頃は上司や同僚と毎晩のように飲みに行った。オフィスには活気が溢れていた。一夜限りの情事もたくさんあった。この対比が実に上手い。

★ところがいまは、その熱気はうそのように去って、貴次の部下は2名だけ。名ばかりの課長にすぎない。老人ホームに父を訪ね、「父さん、何のために生きてきたの?」と問い掛けるものの、その父親の姿は自分を映す鏡に他ならない。要するに、こんなはずじゃなかったという思いの中に貴次はいる。

★高校時代の級友は、妻に死なれた空白に耐えられないと泣き出すし、昔の上司に会社の前で呼び止められると金を無心されるし、みんなが同じ思いの中にいる。

★そして貴次はさらに泥沼に嵌っていく。浮気相手の部下は金のかかる女で、彼女に会うために貴次はサラ金から借金を重ね、ついには会社のお金に手をつけてしまう。その結果、家庭は崩壊し会社からも放り出されてしまう。

★気が滅入りながらもこの小説をつい読みふけってしまうのは、ここにいるのは私たちだという思いがあるから。貴次がどんどん追い込まれていくのは、言わば自業自得ではある。物事を深く考えずに適当に流されていくうちに袋小路にはまった男の姿。

★右肩上がりの時代はそれでもうまくいった。本人が悪いのは確かだが、時代の変化についていけずに泥沼に嵌っていく貴次の姿は他人事ではない。中年男性の多くが「これは自分かも」と思えるリアリティに満ちている。

★最初から最後まで気が滅入るだけの小説ならいくら何でも勘弁して欲しいが、巧みなストーリーでそれがひっくり返る。貴次は非常にスリリングな事態に直面し、それをきっかけに奇妙な救いが訪れる。小説的な醍醐味に満ちた結末。

★著者の鳴海章は、91年に『ナイト・ダンサー』で江戸川乱歩賞を受賞。航空ミステリーの第一人者になるも、映画化された『風花』(相米慎二監督)など作風を広げて意欲的に作品を発表。これまでは試行錯誤が空回りしている感もあったが、『月のない夜』で成果を出した。次の展開も楽しみ。
重松清『お父さんエラい! 単身赴任二十人の仲間たち』
講談社 1400円
2003年10月09日
ブックナビ推薦本
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今日の担当は書評家の岡崎武志さんです。
岡崎さんの新作『古本極楽ガイド』がちくま文庫から出ました(800円)。本が好きな方は共感すること間違いなしの素敵なエッセイ集です。こちらも是非。

★重松清『お父さんエラい! 単身赴任二十人の仲間たち』
講談社 1400円


★自宅を離れ、各地に単身赴任した日本のサラリーマン二十人に話を聞いてまとめた本。著者は直木賞作家の重松清さん。

★単身赴任という現象はむかしからあるんでしょうが、言葉として定着したのはそんなに昔じゃない。1980年の『日本国語大辞典』には載っていない、といいます。あるレポートによれば、現在、単身赴任者のいる会社は全体の95%、人数は約90万人。平均年数は3・6年で平均年齢46・2歳(ちょうどぼくくらい)、あと、おかしいのは、単身赴任によってあらためて奥さんの魅力を感じた人が、約50%。ここがこの本のポイントでもある。

★単身赴任というと、どうも暗くマイナスイメージで語られる。しかし重松さんは、単身赴任について考えることで、家族や仕事について考え、それは幸せについて考える ことになる、というスタンスでこの本を書いている。お父さん、がんばれ!という本。そこがいいです。単身赴任といってもいろいろあります。地方から東京へ、東京から地方へ。単身赴任歴16年、というベテランもいれば、青ヶ島という島、あるいは上海、はては南極というケースもある。たしかに南極も単身赴任だ。

★例えば自動車メーカー勤務の柴田さん、53歳。愛知県岡崎市から宮城県黒川郡へ3年の予定で単身赴任。会社の借上げ住宅に単身赴任仲間と住んでいる。この人が明る い。単身赴任を始めて気づいたことがある、という。なにかというと、自分で初めて洗濯をした。最初不安だったが、全自動洗濯機を使ったら、なんだ簡単じゃないか。「女房のやつ、いままでこんなに楽してやがったのか」と。いきなり、こうです。柴田さんの前の単身赴任者グループが、愚痴を言い合って失敗したそうです。それで 「明るく」「楽しく」やろうと心掛けた。取材のとき、アパートの前で仲間4人でバーベキューパーティをするんですが、その楽しそうなさまを見て、著者は「これは古き 良き時代の学生下宿のノリ」だなあ、と感想をのべます。別の人ですが、酒屋でもらってきた酒のケースでベッドをつくる。これも学生下宿のノリ。どうやら、単身赴任の 一人暮らしは、一面青春プレイバック、という体験ができるらしい。

★離れて家族に変化
大阪から東京へ単身赴任した服部さん。自動車メーカー勤務。44歳。週末を自宅で。月曜日始発、新大阪ひかり、のぞみは単身赴任のサラリーマンでいっぱい。週末に娘 二人で買い物をした。大阪にいるころは嫌がったといいます。週末に家へ帰ると「下の子が抱きついてきたんですよ。『なんや、こういう子やったんや』って、びっくり したなあ」と話すお父さんもいる。亭主元気で留守がいい、と皮肉るCMがありましたが、逆にいい意味で、元気で留守、というのがいいみたい。

★夫婦にも変化
青ヶ島という伊豆諸島最南端の島に教育長として赴任した女性がいる。彼女は、「この単身赴任生活は、わたしたち夫婦にとって、いい経験になっています。(中略)夫婦関係でなにか修復したいことのあるひとは、ぜひ単身赴任をお勧めします。離れるほど、相手を大事に思うんです」という。泣かせますねえ。

★そりゃいい話しばかりじゃないでしょう。新しい職場でうまくいかなかったり、ほかの土地になじめなくて孤独になったり、家族と心がはなれ離婚するケースだってある。 しかし、この本を読むと、こころのもちようだと思う。環境の変化を、むしろプラスと考えて積極的に明るくとりくむ。自分の人生、家族に変化をつけるいいチャンスだとする。そういうことだと思うんです。

★単身赴任の留守宅を守る妻からの話、という章もある。奥さんも気をつかってる。お父さんから電話でみな元気か、と聞かれると、多少のことは黙って、なるべくいいこ とを伝える。お父さんはほっとしてまた元気でがんばれる。また、お父さんの誕生日や勤労感謝などの日には、ぐっとくる感動する手紙を妻や子どもから送る、という。これも離れて生活すればこその知恵であり、家族の絆を確認する知恵でしょう。

★あと気づいたのは、みんな携帯電話を持っててメールで家族とやりとりしている。長距離だから電話だとお金がかかる。これはあたらしい単身赴任の姿ですねえ。ぼくは どうも携帯のメールって好きじゃないですが、こういういい面があるのかと見直しました。

★あと、だいたいみんな単身赴任をすると太る。自制がきかなくなるのか。禁煙、禁酒する人、逆にやめてたタバコを吸いはじめる人もいる。

★南極へ行った建設作業員の25歳の男性は新婚ほやほやだった。く前に奥さんに言ったそうです。「これからずっと一緒にいるなかの、ほんの一瞬だよね」。脚本家にも書けない名セリフです。
日本のお父さんたち、いいなあ。がんばってるなあ。熱いなあ。そんな印象の本でした。
ロバート・R・マキャモン 『魔女は夜ささやく』 上・下
文藝春秋 各2667円
2003年10月02日
ブックナビ推薦本
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今日の担当は本の雑誌社顧問の目黒考二さん(=文芸評論家の北上次郎さん)です。

★ロバート・R・マキャモン 『魔女は夜ささやく』 上・下
文藝春秋 各2667円


★作者のマキャモンは、かつてスティーブン・キング、ディーン・クーンツに続く「モダン・ホラー第3の男」と呼ばれていた作家。

★その後、「脱ホラー宣言」を行って、『マイン』『少年時代』『遥か南へ』と文学的な香り漂う長編を発表。それから10年の沈黙を破って発表されたのが本作。

★時代は17世紀末、いまだ魔女狩りが行われていた時代。舞台は、当時まだイギリスの植民地だったアメリカ南部の町ファウント・ロイヤル。イギリスの富豪が5年前に開拓した海沿いの町。そこで不気味な連続殺人事件が起きる。初めの被害者は教会の神父、さらに2ヵ月後、農場を営む男が死体となって発見される。死体には悪魔の鈎爪で引き裂かれたような跡が、、、。

★犯人として逮捕されたのは殺された農場主の妻。彼女が魔女ではないかという噂が広まり、魔女裁判にかけられることに。町の創設者の富豪は、公正な裁判のために大きな町から判事を呼ぶことにする。初老の判事とともにこの町にやってきた若い書記が本書の主人公。判事の息子ほどの年齢だが、強い正義感に燃える青年。

★魔女とされる女性は、混血のとても美しい女性。20歳になったばかりの若き書記は、恋に落ち、何とか彼女を救おうとする。しかし、年上の彼女はもはやあきらめかけている。

★ファイント・ロイヤルの住民たちは次々に町に起こる不幸な出来事を魔女の仕業と決め付けている。一刻も早く彼女を火あぶりにして町の平和を取り戻したい。町の創設者の富豪も、町の評判を落としたくないので、できるだけ早く処理したい。しかしその一方、公正な裁判をという気持ちも。

★老いた判事は「そろそろ結論を、、、」と思うが、若い書記はそのたびに「まだまだ、、、」と彼女の無実を信じて調査を続ける。そして意表をつく展開、最後の大団円へ。謎解きも見事。

★これは父と息子の小説であり、青年の成長小説であり、年上女性とのロマンスを描く
恋愛小説でもある。

★17世紀の新大陸の荒々しく濃密な雰囲気をディテール豊かに描き出す筆致も魅力的。

★ホラーで出発し、文学的な作品に移行したマキャモンが、見事なミステリー作品で10年ぶりの復帰した。

★秋の夜長を過ごすにはぴったりの第一級のエンターテイメント。ボリュームはあるが、思わず一気読みの面白さ。
最相葉月『東京大学応援部物語』
集英社 1500円
2003年09月25日
ブックナビ推薦本
この本を購入する
今日の担当は書評家の岡崎武志さんです。
岡崎さんの新作『古本極楽ガイド』がちくま文庫から出ました(800円)。本が好きな方は共感すること間違いなしの素敵なエッセイ集です。こちらも是非。

さて本題
★最相葉月『東京大学応援部物語』集英社 1500円

★これを読んで初めて、東大に応援部があることを知りました。いや、あるはずなんでしょうが、東大のイメージと応援部のイメージ、ギャップがありすぎる。どうしても応援部というと、漫画の「嗚呼、花の応援団」のイメージがある。東大、といえばやはり日本の最高学府でトップクラスの秀才の集まりというイメージ。こちらもちょっと身構えてしまう。

★ここでは野球部の話ですが、六大学のなかでも東大は、ダントツに弱い。とにかく負けて負けて負け続ける。平成九年秋に五位になった以外は、それ以降ずっと最下位を低迷。阪神ファンとしては、なんだかドキッとする。

★応援部小唄(スタンドでは歌われることはない。部員たちのなかで代々歌い継がれてきた)
三番の歌詞が
 落ち葉の舞い散る神宮外苑
 アベック横目に叫ぶかけ声
 声はかれるは肩は死ぬは
 それでもがんばる勝つ日まで
 おいらは東大応援部
悲愴感が漂ってます。悲しすぎる。

★著者の最相さんは『絶対音感』というベストセラーを書いたノンフィクション作家。雑誌の取材で神宮へ、東大対早稲田戦。この日も、三回で11対0。ひどい試合。それなのに、東大応援部は意気消沈するどころか、応援ボードを高く掲げ、声をからして叫び、目を血走らせて躍りまくっていた。九回19対0。それでも「東大、絶対逆転だ」最後の最後まで必死。著者は思う。「これが、本当に天下の東大生なのだろうか」「こんなやつら、見たことがない」そこで密着取材して書いたのがこの本。

★厳しい練習がある。合宿に著者は参加しますが、めちゃくちゃハード。運動部と同じ、いやそれ以上のトレーニングをこなす。拳を地面につきたて腕立て伏せ1時間、とか。ふだんでも授業は必要最低限しか出席できず、プライベートな時間はほとんどない。日常の9割を応援部の時間が占める。落ち度があれば、先輩のビンタが飛ぶ。けっこう鉄拳制裁があるんです。しかも野球部は勝てないから、見返りはない。そこがミソ。

★「東大は勝利という成果がなかなか得られないため、これほど厳しい練習までしてなぜ応援するかという問いは、結局自分自身の心にいきつく」と著者はいう。多くの部員が、共通して語る応援部の魅力とは。濃い人間関係、熱さ、一体感を求めて、人と争ったり傷つけあうことを恐れて失っていた感情を取り戻したい、他人のためになることをしたい、と答える。

★1990年代から各大学の応援部は弱体化し、部員は激減している。それは一種アナクロな、軍隊の縮図のような応援部のありかたに、いまの大学生がついていけない、しかし、同時に、そういう時代だからこそ、無償の熱いエネルギーをぶつける応援部に魅力を感じる若者がいる、というのも、この本を読めばそうだろうな、ということが納得できる。

★西条という三年生
高校時代は生徒会役員を務めた頭抜けた優等生。教師や先輩に怒られたり殴られたりした経験はない。そんな彼が、応援部では後輩の前でしょっちゅう殴られる。中途半端なプライドが一瞬にして打ち砕かれる。それが一種の快感になる。

★試合中、対戦相手の応援部同士で、野次るネタが面白い。
※東大は、
・早稲田には「オーイ、早稲田 標準語は覚えたかー」地方出身が多い
・慶應には「おーい、慶應 神宮にママはこねえぞ こんにちは赤ちゃん」
金持ちのボンボン、マザコンが多い
・明治には「おーい、明治 今は平成だ」
※代わって東大に対してのヤジ
「おーい、東大 菊川玲を紹介してくれ」

★「東大を優勝させよう会」がある。東大に関係ない人で東大野球部ファンも いる。彼らは同時に応援部のファン。「そこまでしなくても困らない人たちが、そこまでやっている。その魅力じゃないでしょうか。ほかの大学は勝ってあたりまえですからね」阪神ファンとしては身につまされる意見です。

★最後、平成十四年秋の大会で、立教と一勝一敗で迎えた第三戦。東大は立教を破る。この試合経過を応援部側から追った章は感動的。まるで優勝したような喜び。

★東大生だって悩み苦しむんだ。単純に心から喜ぶんだ。ほっとする。東大もかわいいとこあるじゃん。と、ここに登場する若者たちにエールを送ってやりたくなる、そんな本です。
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