ありがとう。カルテット。
私もふと、願ってはいけないことを願う時があります。
自然に、必然に、時が来て、ある人物がこの世界を去ってくれたなら、どんなに心が安らぐだろう、と。
「もう二度とその人物からいわれの無い執着心や攻撃性を向けられることはない」と
確証をもって心から安堵できるのは、究極的にはその時しかない…と感じるから、です。
真紀さんの「死と乙女」の選曲、そして「こぼれちゃった…」のセリフに触れた時、
私の中でカチッとパズルのピースがはまったような、不思議な感覚になりました。
松たか子さん演じる真紀さんの佇まい、折々の仕草や心情、言動までも、
僭越ながら…どこかこの10年間の私自身に重なるのを感じて、とても不思議な気持ちです。
脚本の坂元さんをはじめ、制作陣のみなさん、そして、演じる松たか子さん。
どのようにして真紀さんの人物像に辿り着いたのでしょうか…。
私は、ある人物に私や家族の所在が伝わらないよう、長い間どこか息をひそめながら暮らして、
「こんな人生いらない」と、自分として生きるのをやめてしまったけれど、
でも自暴自棄とも違う、いつかまた自分でいられる日が来るようにと、
かすかで強い願いはずっと胸にあったのだ…と気づかせていただきました。
「ここに来たかったんだ」「この人達と出会いたかったんだ」と思える世界。
ドラマ「カルテット」は、私にもまだ「自分に戻って、また生きたい」と思える場所があるかもしれない、
そう感じさせてくださいました。
そんな世界に値する私になりたい。
息をひそめて透明になるのではなく、いつかグレーなまま笑える自分に戻って。。
ありがとう。カルテット。
また会える日まで。