司の言葉Part2
すずめと真紀は、出自にかかわる過去を引きずって、そこから逃れながら、カルテットの仲間にめぐり合い軽井沢の別荘にたどり着いた。
過去を封印して他人に成りすまして生きていく姿は、「レ・ミゼラブル」や「砂の器」を思い出させる。
出自からくる差別や疎外感、社会はずっとこの問題を抱えてきた。問題を克服しようと、少しずつではあるが前進してきた面もある。
しかし、最近は、自由な競争こそ社会の発展の唯一の源泉であり、公正な社会の基本だと言う声が高まり、その結果、格差の拡大と貧困の問題が深刻化してきている。
夫婦の相愛、孝行、博愛といった理想は、建前の「常識」となり、競争と格差と貧困によって、「常識」は、個人では克服できない決定的な格差を固定化し勝者が勝者で有り続けるために、多くの普通の人々を欺瞞するためのレトリックに利用されようとしている。
目を転じれば、地中海の浜辺に打ち上げられた幼子の遺体に涙した世界が、命の安全とわずかな希望を求めて国境を越えようとする弱者の前に壁を築こうとしている。
無批判に「常識」的に「ちゃんと」生きていくことの嘘に、気付き、自分の心の中にあるものに正直に生きていくことを決心した司だから、本当の心の悲しみやその後ろに隠れている優しさに、司は気付くことができた。
そして司自身、巻き戻しスイッチを押さなくてもいいと思える仲間に出会えた。