7月4日[金]よる9時スタート
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天童さんの原作がかなり衝撃的な内容ですから、これを映像化するというのはかなり難易度が高いのではないかと思いました。そして、すごくチャレンジ性の高い作品だと思いました。ですが脚本の大石さんは、天童さんの描いている湿度の高い重い世界観を壊さず、ユーモアの要素をバランスよく取り入れた新たなアプローチで台本を書いてくださいました。シリアスなサスペンスだけではなく、氷崎家、巣藤浚介、馬見原家の3つのパートに主軸を分けて絶妙にバランスよく絡み合っていく構造が素晴らしいなと思いました。そして、新しいアプローチでこの作品を作っていきたいという植田プロデューサーの意向や監督の皆さんの意向に対して俳優陣が今現在も全力で作品に向かっているので、今までにない新しい形のエンターテインメント性の高いサスペンスが生まれるんじゃないかなと期待しながら撮影をしています。
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游子に関しては、原作で描かれている人物像に関しては大きくはブレていないと思います。そうですね……大石さんの台本は、人間の滑稽さや可笑しさが日常的な会話の中に盛り込まれているのですごく素敵だなと思います。顔合わせの時に大石さんが「人間は悲しいからって悲しい表現だけをして生きているわけではない。そんな時こそ笑っていたりもするし、思いもよらぬ言葉を発したりすることもある。1つの感情のラインだけではなくて多面性を出していけたら」とおっしゃっていたのが印象的でしたので、それを心にとめて演じています。
氷崎游子は東京都の児童心理司として働いています。大きなトラウマを抱えているのですが、とにかく多くの子供達を救いたいという意思のもと仕事に取り組んでいます。しかし人生経験が浅い分、正義感の強さが仇になって物事がうまく進まないことがある、不器用な人です。情熱は人一倍あるのですが、物事を進める時に必ずしも正しい意見をふりかざすことがいいこととは限らない。それを分かっていながらも、游子はそれでしか生きらず、自分が思い描いているように子供たちを救えないことに対して、常に葛藤を抱えています。
また、父である清太郎さんが認知症なので、仕事に追われながらも父の面倒を見ています。母も父の介護疲れでパチンコにハマってしまっているので……家族のこと全てを1人で抱え込んで生きている孤独な女性です。
游子にとって家族は重荷になってしまっている。逃れたいけど一生逃れられない鎖に縛られて、重い荷物を引きずりながらも必死に走っているイメージで演じています。人間生きていると周りには分からないところで問題を抱えていることがあると思うし、その様を何気ない日常会話の中でもしっかりと表現していけるようにしていきたいと、植田プロデューサーや監督のみなさんとお話をしてからスタートしました。
家庭内暴力、DV、介護……いつの時代でもある社会問題ですよね。現代はインターネット普及していますから、今まで目にしたり耳にしたりする機会がなく隠されていた情報を知ることが多くなっていますし、以前よりも深刻化しているかもしれないと感じることがあります。そういう意味では、現代においても『家族狩り』をドラマ化することは大きな意味があると感じています。
私の演じる游子は、虐待されていたり引きこもっていたりする子供たちを救済する役割なのですが、一時的にしか助けることしかできず、その先の問題をどう解決していけばいいのか悩んでいます。それは游子だけでなく、現代においても社会問題となっていることだと思います。荒れてしまった家庭をどう再生するのか、暴力をふるうような人にどう対処するべきか、児童虐待の可能性のある家庭に子供を戻してフォローをしていけるのか、細部にまで目が行き届くかというと、限界がありますから。非常に難しい問題だとおもいます。救済する側も、家族との意思の疎通がうまくいかず、助けたくても助けられない状況があるかもしれません。意識を持って社会全体で考えて行かなくてはならない非常に難しい問題だと感じます。
最大の最愛のバディです。
伊藤くんはすごく熱意を持って巣藤浚介という役に向かっているし、お互いそこでディスカッションして、本当にいいものを作ろうと積み上げられているので、とても楽しくお芝居ができています。伊藤くんが素敵だと思うところは、すごく明るくて境界線がなくとても常にオープンで居てくれること。游子を演じていると極力他人との関わりを排除しているような不器用なスタンスで閉ざし気味になってしまうことがあるのですが、伊藤くんがいることによってリラックスして演じられますし、彼の存在に助けられています。
(井上)真樹夫さんも浅田(美代子)さんもとても明るく朗らかな方なので、家族のシーンはとても楽しいですね。父の介護に関しては、これが日々続いていると想像すると本当に大変だろうなと思いますし、真樹夫さんとも介護生活のお話をしたりします。けれど、介護を重荷に感じないように明るくしている游子や民子さん(母)の姿が、逆にちょっと悲しく見えるといいなと思っています。
台本の構成上、遊子が犯人であるというような作り方をしています。 演じていて難しいのは、本当の氷崎遊子としての心理と視聴者のみなさんの視点での遊子の姿が別次元にあるということです。視聴者のみなさんに、游子が犯人なのでは?と思わせる描写が多々でてくるので、そのあたりのバランスが非常に難しいなと。 衝撃的だったのは、実森家に浚介が駆けつけて2階に行っている間に、遊子もそこへやってきて両親の遺体を動かして血を拭いている。それを浚介が見てしまう……という6話のクライマックスのシーンです。
台本を作っていく中で、植田プロデューサーや監督のみなさんとディスカッションしているのですが、そのアイデアを植田さんがおっしゃった時に、かなりの衝撃を受けました。7話でその真相が分かるのですが、植田さんのアイデアがとっても素晴らしくて、それは現場的にも盛り上がりましたし、モチベーションも上がってそのシーンの撮影に臨めました。キャスト・スタッフ全員が『家族狩り』をよりいいものにしたいと話し合って作り上げているので、この作品に関わっていられることがとっても幸せに思います。
テーマが非常にシリアスなので重たく暗いドラマのように感じられるかもしれませんが、様々なキャラクターがそれぞれの人生を必死に生きている姿は、すごく見ごたえがあります。ユーモアの要素もありますし、今までにない新しい作品になっていると思います。どの世代の方にも……家族みんなで見ていただければと思います。また家族と離れて暮らしてらっしゃる方も多いでしょうから、改めて家族のことを思うきっかけになればと思います。ぜひ、ご覧ください。