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ドリマ署 橋本班“ハシ”チョウ日記

『ハンチョウ〜神南署安積班〜』の橋本プロデューサーが、シリーズ4のウラ話や自身の本音を、徒然なるままに書き綴る日記コーナー!

vol.08
2011.04.28

橋本です。

人には、誰にでも「忘れられない風景」があると思います。
先日、ロケ現場から会社に戻る途中、
渋谷の空を一面に染める夕焼けを見て、
そんなことを思い出しました。

私にとって「忘れられない風景」は、
もう30年以上も前に見た、晩秋の故郷の夕焼けです。

高校を卒業して、大学に進学したものの、
想像と違う学生生活に幻滅し、
慣れない都会での暮らしに疲れ、
19歳の私は、逃げるように大学を辞めて故郷に帰りました。
冷たい風が吹く、秋の終わりでした。
出迎える人とてない無人駅に降り立った私は、
言いようのない敗北感に打ちひしがれ、
実家で待つ親に対して、いったい何をどう言ったものかと、
途方に暮れていました。

ホームの上で、どのくらいそうしていたかわかりません。
やがて、重い足を引きずりながら、大きなカバンを抱えて、
実家に向かいました。
小さな坂を越えれば、もうそこは生まれ育った街です。

全身を押し戻すような強烈な向かい風の中、
坂の最後の一歩を登った私を待っていたのは、
世界中の朱色と金色をすべて空にぶちまけたような、
鮮やかな、あまりに鮮やかな夕焼けでした。

私は呆けたように、ただ、ただ、それを見ていました。
何も考えられず、何も感じられず、
ただ、ただ、大きな空いっぱいに広がる、
神々しいまでに荘厳な夕焼けを見ていました。

デジカメもケータイもない時代だったけど、
その風景は、鮮明に私の心に焼き付けられました。
そして、思いました。
これからの人生、今よりつらいことや悲しいこともあるだろう。
しんどいことや、絶望に打ちひしがれることもあるだろう。
そんな時は、
この夕焼けを思い出そう。
何者にも成り得ず、
追われるように故郷に帰った、
何ひとつ持たざる存在の私に、
たったひとつ与えられた宝物のような、
この夕焼けを思い出そう。

翌年の春、
私はもう一度大学を受け直しました。
そして、ひょんなことから学生劇団に入り、
芝居の面白さに目覚め、
その延長で卒業後、ドラマ制作の道に進み、
現在「ハンチョウ」を作っています。

本当に、人生はどう転がるかわかりません。

何かあるたび、
私はあの夕焼けを思い出してきました。
その「忘れられない風景」が、
私の人生にどんな影響を及ぼしたのか、
自分でもよくわからない、というのが正直なところです。
でも、あの夕焼けの風景が、
いつまでも私の心の深いところに刻まれている、
と思うだけで、なんだか救われるような気がするのです。

これからも、何かあったら、
私はあの夕焼けを思い出すでしょう。
そして、明日も生きていこうと思うでしょう。

すいません。
長々と自分のことを書いてしまいました。
来週の「ハンチョウ」第4話は、
自分の心の中の「大事なもの」を守り続けてきた、
勤続40年になる交番のおまわりさんの物語です。

メインゲスト、定年を間近に控えた福村巡査長を演じてくれるのは、
柄本明さん。
私は、試写会場で不覚にもぼろぼろ泣いてしまいました。
毎回こんなこと言って、信用ないかも知れませんが、
これまでのシリーズの中でも、一番好きな回になりました。
ゴールデン・ウィーク中ですが、
ご覧いただければうれしいです。