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ドリマ署 橋本班“ハシ”チョウ日記

『ハンチョウ〜神南署安積班〜』の橋本プロデューサーが、シリーズ4のウラ話や自身の本音を、徒然なるままに書き綴る日記コーナー!

vol.03
2011.03.31

橋本です。

3月が終わろうとしています。
木々の芽ぶきや、頬に当たる風の変化に気がつかないまま、
テレビのニュースで桜の開花を知りました。
どんな時でも、季節はちゃんと巡っていくんだな・・・。
あらためて、そんなことを思います。

私たちにできることは、ドラマを作ることだから、
昨日も今日もドラマを作っています。
でも正直言って、この3週間、
迷ったり、悩んだりの繰り返しでした。

自問自答した末に、
なぜ私はこの「ハンチョウ」というドラマを作ろうと思ったのか、
という原点に立ち返ってみようと思いました。
2年前、「ハンチョウ」シリーズ1が始まるとき、
一番最初のP日記に、私はこんなことを書いていました。

2009年3月16日(月)の日記です。


私がこの「ハンチョウ」でやりたかったのは、「刑事のドラマ」ではなくて、「刑事という職業を一生の仕事として選んだ人間たちのドラマ」なんですね。

今の日本は、蛇口をひねれば温かいお湯が出てくるし、スイッチを入れれば鮮明な画像でテレビが見られる。
それが当たり前です。
誰もそれを疑問に思う人はいません。
水道や電気、ガス、電波というインフラが整備されているからです。

同様に、悪いことをした者は必ず捕まる。
これも当たり前のことだと思われています。
そりゃそうですよね、泥棒とか殺人者とかが捕まらないで、その辺を平気な顔で歩いていたら、怖くて暮らしていけないですからね。

つまり、私たちが毎日を安全に暮らしていけるのは、水道や電気と同じように、「治安」というインフラが整備されているからです。
当たり前すぎて、普段はそんなこと考えもしないですけど。

その「治安」を最前線で支えているのが、実は警察の人々なんですね。
水道局の人や電力会社の人もそうなんでしょうけど、インフラ関係の職業の人たちって、本当に大変だと思います。
だって、水が出て当たり前、電気が通じてて当たり前で、その陰にはきっといろいろな苦労や努力があるだろうに、普段は脚光を浴びることもなく、注目されるのは断水や停電などの事故を起こした時だけ。
プラスの評価はほとんどなく、マイナスの評価ばかりがニュースとなって報道される。

警察の人々も同様で、不祥事とか不正とかマイナスのニュースばかりが新聞の紙面を飾るため、どうしても私たちは「日本の警察って、なんだかなあ・・・」って思ってしまいます。
もちろん、中には報道されてしかるべき悪い警察官も存在すると思います。
でも、その他の大部分の、多分99%以上の警察官の人たちは、日々誠実に実直に職務に励んでいるのだと思います。
雨の日も風の日も、交替で一日24時間、一年365日。
そうでなければ、私たちが当たり前のように平穏に暮らしていくことはできないわけですから。

私は今回の「ハンチョウ」で、自分の一生の仕事として警察官という職業を選んだ人たちを描きたいと言いました。
インフラ関係の仕事の中でも、警察官という職業は特殊だと思うんですね。

まず第一に、自分の生命が危険にさらされる可能性があるという点。
これは消防関係の人たちも同様だと思うのですが、いざという時には他人のために自らの命を犠牲にしなければならない。
だから、この職業を選ぶ時には、相当の「決意」を必要とすると思うんですよね。
「決意」というのは言ってみれば「揺るがない鉄の心」。

第二に、常に「犯罪者」に向き合わなければならないという点。
つまり、いつも「人間の弱さ」や「心の闇」を見つめて、それと1対1で深く関わらなくちゃいけない。
これは、すごく「迷い」を伴う行為だと思います。
突き詰めて考えれば「悪とは何なのか」「善とは何なのか」までさかのぼってしまうから。
「迷い」というのは言ってみれば「揺れ動く風の心」。

警察官は、そんな「決意」と「迷い」の両方を持ち合わせていなければならない。
「鉄の心」と「風の心」。
この二つの間を、行ったり来たりしながら、世の中の平和な暮らしを守るために、来る日も来る日も現場に立つ。
それが、警察官という職業。
そして、その現場のさらに最前線に立っているのが、刑事という職業。

そんな職業を一生の仕事として選んだ人間たちが、どんなことを思い、どんなことに怒り、どんなことに悲しみ、どんなことに喜びを感じて、日々を生きているのか。

「ハンチョウ」というドラマは、そんな等身大の刑事たちの想いを、丁寧に温かく描いていきたいと思っています。


2年後の今、読み返してみるといろいろ思うところが多いです。
でも、なんか、2年前の自分に励まされた気がしました。

よし、明日もドラマを作ろう。
たとえ、一歩でも、前に進んでいこう。
春は必ず来るのだから。