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歌舞伎コラム

『ぴんとこな』をより楽しむための「ことば」「演目」「約束事(しきたり)」を“歌舞伎コラム”として紹介します。

きんぴらごぼう

食卓に欠かせない惣菜といえば「きんぴらごぼう」ですね。実はこれ、歌舞伎と深い縁があるんです。
きんぴらというのは「こんぴらさま」ではなくて、坂田金平というスーパーヒーローなんです。「足柄山の金太郎」が成長して、平安時代の武将源頼光の家来になり、坂田金時と名乗ります。剛力無双の彼らは、「頼光四天王」と呼ばれて、酒呑童子を退治したりして、様々な武勲を立てます。
江戸時代のはじめになると、この四天王たちに息子がいた、という設定で、金時の子供で金平という豪傑が活躍する「金平浄瑠璃」が作られて、大人気。短気でそそっかしいが、怪力で憎めない金平は人々の心を捉えました。
ちょうど、ウルトラマンが「ウルトラの父」にはじまって、家族がどんどん増殖していくのに似ていますね。
こうなってくると便乗商法で、ごぼうは精がつく、というので「きんぴらごぼう」が生まれたのです。
「金平浄瑠璃」の豪快な人物描写や、ちょっぴり童話的な物語は、歌舞伎にも影響を与えました。初代市川團十郎が創始した「荒事」と呼ばれる超人的な主人公が活躍する誇張された演技は、この「金平浄瑠璃」をまねたものだといわれています。
つまり、その伝統はいまの市川海老蔵まで脈々と連なっているのです。
私たちの普段なにげない生活の中にも、歌舞伎はちゃんと名残りをとどめているのです。

犬丸 治(いぬまる おさむ)

演劇評論家
著書「市川海老蔵」
(岩波現代文庫)など

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