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歌舞伎コラム

『ぴんとこな』をより楽しむための「ことば」「演目」「約束事(しきたり)」を“歌舞伎コラム”として紹介します。

二枚目

イケメン、良い男を「二枚目」、とぼけてコミカルな人柄を「三枚目」といいます。ただ歌舞伎の「二枚目」には和事があり、キリッとしてカッコイイ男のほかに、美男だけれどデレデレとした若旦那役の「つっころばし」も含まれます。「つっころばし」ほどではなくても、やわらか味の中に一本筋が通ったような役が「ぴんとこな」です。 この「二枚目」「三枚目」の由来ですが、江戸時代、一座の役者の序列を記した「番付」の順番から来ているというのです。
昔の役者は、劇場と一年契約で、毎年十一月更改して新しい座組で興行します。その御披露目が「顔見世」と言って、その時配られるのが「顔見世番付」です。
ここに「八枚看板」といって、一座の主要な役者八人の名前が書き上げられました。今でも「彼はうちの職場の『一枚看板』だ」と言う使い方をしますね。それが八人いたわけです。右から二番目、つまり「二枚目」の看板が、若手の色事師の名が記される位置だったのです。ちなみに右の最初「初筆」が一座を率いる座頭(ざがしら)役者、三枚目が「道化方」、つまり「三枚目」でした。
今もそうですが、こうしたポスターなどの並び順にはかなり気を遣うわけで、江戸時代はなおさらだったでしょう。
また、現代のように、一人の俳優が時に悪役を演じたり、シリアスになったりコミカルになったり、ということは江戸時代には無く、「役柄」が固定していました。「枚目」という数え方は、その役柄(役者)の序列も定めているわけです。

犬丸 治(いぬまる おさむ)

演劇評論家
著書「市川海老蔵」
(岩波現代文庫)など

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