インタビュー

スペシャル座談会(2/4)

有川
実は、あるセリフを新垣さんがお芝居したとき、撮影で初泣きしてしまって… (照)
新垣
聞きました!私は気づかなかったんですが、あるシーンのリハーサルをしていて、稲葉リカのあるセリフを言った瞬間、監督の土井さんとお話されている途中に有川さんが突然泣かれたらしくて…。そのリカが言ったセリフが、この作品でお伝えしたかったことだったから涙してくださったとのことで… あの言い方でよかったのかなとは思っていたのですが…
有川
新垣さんの声であのセリフを聞いて泣いたんですよ。
原作でも書いていた 「彼らが普通の人であるところを見せたい。」 という思いを、リカがカメラマンにお願いするシーンでのことだったんですけど、新垣さんが、稲葉リカが、それを古参のカメラマンたちに主張して、カメラマンたちもその思いを受けてくれる。「その言葉を電波にのせることができたか!」 と思いました。新垣さんもとてもいい言い方をしてくださったので。
新垣
そうですか… 本当ですか?
有川
そうですよ。泣きましたよ本当に!
新垣
よかったぁ… (笑)
有川
私、土井さんが引くぐらい泣きましたよ (笑)
最終的には土井さんは、困りに困ってどっか行ってしまいました (笑)
「すいません、そろそろロケハンがあるんで失礼しますっ!」 と。「あ。逃げた…」 と思いましたけど (笑)
新垣
このキャラクターはこういう性格とか、こういう人だとイメージしながら小説を書かれるわけじゃないですか。それを映像化したとき 「なんか違うな」 と思ってしまったら、有川さんは生みの親なわけですし、有川さんの中で “もぞもぞっとしたもの” が残るのは嫌だなあ〜と変なプレッシャーを感じていたんですが、お話していると、「映像は映像のプロの方がやるものが素晴らしいはずだ。」 と、信頼して任せてくださる方で、それを楽しみにしてくださる方だと聞いて、心底ホっとしました。
有川
よかった…。
私が新垣さんを捕まえて、小1時間くらいず〜っとお喋りさせてもらったことがあって (笑)、そのときもやはり文章を文章の順番でただ画にされてもおもしろくなるわけがないんです、というお話をしてました。手の内が見えきっているものをもう一回やられても原作者はつまらない。むしろ私が見て 「お!ここはこういうふうにしたか〜。」 という解釈がたくさん出てきて欲しいですし、そういう意味では今回はそれにたくさん答えてくれるスタッフさんとキャストさんだなぁと思っています。
変わっていいと思っています。色々なものが出てきて構わないですし、映像、文章、漫画、アニメ… それぞれ得意なやり方が違うので、色々な広がりを見せてくれないとつまらないですし、それが物語の力だと思っています。
綾野
そうですね。
有川
綾野さんもすごくいい空井を見せてくださっていますし…
綾野
いやいやいや…
有川
空井をお任せできてよかったと、リカをお任せできてよかったと、撮影現場に行くたびに思います。
綾野
とんでもない本当に…
大変ですよ。
野木
自衛官役を演じると聞いてどう思いました?
綾野
空井大祐が俺で大丈夫?と、素直に思いました。
演じることになったのなら、空井大祐をというよりは、作品を1ミリでもよくしたいと思っています。実は僕、原作をまだ読んでいなくて、監督の土井さんが読んで欲しいといったら読むようにしています。どの現場でも原作モノをやるときは、読んでない場合は必ず確認するようにしているんです。土井さんとはこのタイミングで読みましょうというのを決めていて、そのタイミングが来るのを待っています。なので、原作は購入してちゃんと持っています。タイミングを待っている状態です。
有川
どこで読まれるのかドキドキしますね (笑)
綾野
台本という虚構のなかでやっていますが、実際、現場で起こっているのはノンフィクション。本物の戦闘機もありますし、虚構と本物が共存している状態で、なるべくその距離感を縮めたい。そうなると、台本に書かれていることだけでは収まらなくて、そこが今回大変なところです。行間は相手の反応によって変わりますし… だから、あまり決めていかないようにしています。なるべくそういう理を失くして、感情優先にやりたいなというのが強いです。相手の反応を感じながら演じていきたいなと思っています。
有川
今、すごく驚いてます。進むにつれてどんどん空井になっていくので、てっきり原作をもう読んでくださっているのかと思っていました。

有川
以前、土井さんとお話したとき、「空井のマインドや自衛官のマインドをこの人だったら預けられると思ったから、綾野さんにオファーしました。」 と聞きました。今は 「プロデューサーの見る目に間違いはなかったんだなあ。」 と思います。
綾野
先日、有川さんが撮影現場に来てたくさんお話しましたが、原作の話はしなかったので、たった今、「あ、原作読んでないな」 と (笑)
でも、読んでいないのにはちゃんと理由があって、ちゃんと家にあるので!今は完全にお預け状態です。
野木
あったら読みたくなっちゃいますよね (笑)
綾野
はい。本って 「読んでくれ」 と、訴えかけてくるので…。しかもこの役を演じていると、本に何かヒントが隠されているんじゃないかって躍起になることもあるんです。でも、現場では台本もさらに置いて、現場でどうなるかというのが、僕には重要です。実際に自衛隊に貸していただいている制服を着て、着たら感情が不思議と簡単に変わります。それくらい衣装にも力ありますし…
有川
キャラクターの正解は、原作者より役者さんが知っているので、そのスタンスで全然大丈夫!今度はリカさんのお話も聞きたいです。
野木
ちょっとずつ原作を読んでいると聞いていますが…
新垣
はい。ちょっとずつ… (笑)
綾野
そうなんだ (笑)
新垣
… ちょっとずつ (笑)
稲葉リカはいわゆる民間の方。見てくださっている皆さんと近い意識でいると思っているので、自衛隊に対する興味や知識は稲葉リカと一緒に変化して増えていったらいいな… と思っています。わたし自身も3月11日の震災で被災地に行って、そのとき自衛隊の皆さんに間近で会うのが初めてでした。笑顔で小さな子たちと遊んでいる様子を見て、こんなふうに笑うんだとか、私に気づいて照れくさそうにしてくれるんだ… とか。本当に無知で、そのときにイメージが変わったというか…。守ってくれる存在なので、自分たちより優れている部分があるのだと思うと、距離を感じてしまったり、有事のときにしか名前を聞かないので、メディアの中ではかたいイメージでした。無意識のうちにそんなイメージがついていたんだろうなと改めて思いました。自衛官のみなさんのハートが見えるお話だと、さっきおっしゃっていましたが、本当にそういった内容ですし、実際に現場にいらっしゃる広報官だったり、隊員の皆さんと話をしていると、まったく距離を感じなくなってきていて… でも、これもこれでいいのかな?と思っているんですけど (笑)
有川
いいんですよ!すごくうれしいと思いますよ!
新垣
「松田さん (広報官)、奥さんとどうやって出会ったんですか?」 とか聞いちゃいましたし、きっかけも (笑)
有川
松田さん、結婚写真持ち歩いているんですよね!
新垣
そうなんですよ!見せてもらいました。すごく素敵ですよね。勤務するにあたってなかなか会えないことも多々ありますが、自衛隊という職業だけがそういう状況になるわけではないですしね…。撮影が始まって1ヶ月たちますが、かなりイメージが変わってきています。リカ自身を演じることに関しては、1話はかなり悩みました!
有川
そうですね。1話ではかなりカリカリしている女の子だった (笑)
新垣
でも、ただ怒りっぽいとか理不尽なだけではなくて、自分の中の正義があり、それを人に伝えるときに言葉を選べなかったり、思ったことをすぐに言っちゃう子。怒りではなく、相手に伝わって欲しい気持ちを視聴者のみなさんに感じてもらうためには、どんな言い方がいいのか、どんな表情がいいのか、というのをすごく悩みました。今はだいぶもやもやからは抜けてきましたけど…
野木
1話を見たら、見事なガツガツさで… (笑)
新垣
本当ですか〜 (笑)
野木
でも、“うざったい” とか、“きゃんきゃん” している感じではなくて、まっすぐさも見えますよね。
新垣
「 “きゃんきゃん” するのは違うよね!」 というのは、始まる前からプロデューサーと話していて、「怒りじゃないんだよね。吠えるわけじゃなくて…。」 っていうのを現場にはいってからも言っていて、あんまり弱く言いすぎると、伝える意思も伝わりにくくなるし、だいぶオロオロしました。まだまだ反省面もありますが、徐々にもっと馴染んでいけばいいなと。
野木
今後はガツガツなリカと空井のラブストーリーも描かれていくわけですけど…
原作では、ラブストーリーはあまり描かれていませんよね?
有川
そうですね。原作では淡く描かせてもらっています。なんせ2人とも不器用じゃないですか (笑)。「上手には絶対に何も進むまいっ!」 と…。お互いを人間として尊敬しあっていくのが先かなというのがあり、その発展型で物語の中ではっきり書くわけではないけれど、いつかこの2人が素敵な関係になってくれたら… 彼らを見守ってきた作者としては、嬉しいかなあ〜 と思ったりするんですが、いかがでしょうか。今、リカちゃんどんなふうに見えています?
綾野
この前、2話の最後のシーンの撮影が終わったとき、理由は定かじゃないんですけど 「新垣結衣っていう人が稲葉リカでよかったな。」 と思いました。素直に。自分でも思っていることなんですが稲葉リカは 「こういう考えは自分の正義だ。ということを盾にするのは愚かだ。」 と思っている人間。それは自衛官にとっても思っているところがあるのではないかなと思います。「これって正義なのか?でも、それを追求していかなきゃいけない。」 と。たぶんあらゆる人間が一度は 「愚かだった」 という自負心を持っているんだろうな… ということをものすごく感じたんです。そのとき。さらに肉体は変えられないですから声だとか眼球だとかは新垣さんご本人が持っているものもありますし… それを見て思いました。「新垣結衣っていう人が稲葉リカでよかったな。」 って。

綾野
最近、この役を演じてイライラすることが多くなったんです。そういえば。
野木
どういうことで !?
綾野
さっき、正義の話をしたんですが 「自分にはこんな正義がある!」 ということさえも 「?」 と思うようになってきました。
有川
振りかざされることが不愉快みたいな?
綾野
愚かだなって。そういう感覚が今までなかったんです。
有川
なんていうか… 自分の正義を押し通すんじゃなくて、「自分はこの正義を信じているけど、それはほかの人からみたら正義じゃないかもしれないよ。」 というのは常に自覚しておきたいというのはわかります。
綾野
たぶん、そういうところが強くなったんだなと感じています。
有川
それは自衛官の皆さんが理不尽な正義をぶつけられているからかもしれないですね (笑)
綾野
そうかもしれない…。自衛官の制服を着ている撮影現場で感じることがあるんですが、普段の生活でもあって… 今の時期が大変ということもあるのかも知れないですが… いいイライラなんですけど…
野木
リカは理不尽な正義をある種、振り回す役だと思いますけど…
新垣
でも、「理不尽って何?」 ってなっちゃいますよね。さっき有川さんおっしゃっていましたけど、「自分にとっては正義だけど、相手にとっては違うかもしれない。」 というのを自覚するのであれば、全部が理不尽で全部が理不尽じゃないってことになるし、私は違う感覚なのに、こうしろって言われたってなったら、腹を立ててもいいかもしれないけど… それを否定することもできないというか…
有川
人は人、我は我。されど仲良しっていうのでいいんじゃないでしょうか。
新垣
私は割とそう思っているんです。
リカは、自分の正義を押し付けるわけではないですが… 押し付けるなのかな?結果的に。それをどうしても伝えたいと思っているので、こういう言い方だったら伝わるかもしれないと、相手にこう言ったらこういう気持ちになるかもしれないと、一度立ち止まってくれればいいんですけど…。
私は普段、どちらかというと、取材される側の人間なので、踏み込んでほしくない場所があるのは知っていますし、それを取材する側の人にもある程度イメージしてもらいたいですよね。「自分はココはダメなんです。」 と言わないと、わかってもらえないのってイヤだな、と思ってしまうので、リカを演じている1話は特に胸が痛い… というか、台本と読んでいてもどかしくなるときが多々あったんですけど、リカを演じているときわたしはリカなので、リカの正義を信じなきゃいけないので… 辛かったです (笑)
有川
そういうやわらかい新垣さんが演じてくださっているから、リカをどんどん成長させてくださっているのかな… って、思います。
新垣
出会いは最悪ですけど、ぶつかりあって始まる恋はまっすぐさがゆえ… じゃないですか。ただ単純に悪意があったわけでなく、それがお互いに理解が出来たときはすごくいい関係になれると思います。リカと同期の藤枝 (桐山漣) というキャラクターがいるんですが、彼とリカの関係もそうだなと思って、彼とも出会いからいきなり上手くいっていたわけじゃないと思うし、藤枝も 「リカのこの態度は、こういう裏の気持があるからだ。伝わりにくいけど…」 とわかってくれているからだと思うので、それが空井に伝わったとき、どうなるのか… 私も楽しみです。

日曜劇場『空飛ぶ広報室』公式Twitter

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