金曜ドラマ『リバース』

インタビュー

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谷原康生役 市原隼人さん

この作品のお話を聞いたときのお気持ちは?

まず、台本がとてもおもしろいと思いました。物語の展開はもちろん、それぞれのキャラクターが立っていて、これをどう撮影していくのだろう? と、ちょっと気がかりなところも感じていましたが、いざ現場に入ってみると、監督の表現の講成ものすごく緻密なことに驚きました。「ここはこうしておいて」などなど、しっかりとしたプランを提示してくれるので「後々、ここが効いてくるな」といったことが演じ手にも感じ取れ、とても居心地がよくおもしろいです。

湊かなえさんの作品についての印象というと?

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最後はハッピーエンドで終わるとか、そういった定型にはまらず、最後はどう転ぶかわからないというところ、そこが湊作品の一つのおもしろさだと思います。何かに媚びるようなことはなく、全てが救われないこともたくさんありますが、そんな中、日常のちょっとした小さな幸せを見つけられて、自分のことと照らし合わせてしまうような、ふとした瞬間、判断、感覚や感情が何層にも積み重なり濃くなっていく。これはドラマでも小説でも湊作品の全てに通じることだと思いますが、何となく流していた部分が知らないうちに濃くなっていきます。この作品にもそういった要素が効いているので、そんなところが僕は好きです。

撮影現場の様子はいかがでしょうか?

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とても順調です。役についての話だけではなく、本人同士の話を自然とできるようになっているので、とても良い空気感ができていると思います。とてもシリアスで緊張感あるシーンが多いのですが、その本番寸前までは、ごくごく普通の世間話で盛り上がり笑いが飛び交っている現場なので、参加できて本当に良かったと感じています。 また、この現場で感じることは、出演者もスタッフも“やらされている”のではなく“やりたくて”集まっているということ。だからこそ信頼できますし、あのマイナス21度という過酷な雪山での撮影も乗り越えられたと感じていますし、「あんな現場はなかなか経験できないよね」と笑い話にもなっています。 役者は“良い感情を残したい”ということを仕事の根源として持っていると思うのですが、それを思わせてくれる現場なので、とても楽しく撮影させていただいています。

演じている谷原康夫とはどんな人物だとお考えでしょうか?

普段、妻や子供に見せる顔と職場での顔、そしてゼミ仲間といるときの顔、それぞれが全く違います。何かを隠しながら生きている男ですが、監督からは「力を抜いて演技してほしい」と言われました。「〇〇なんだよね〜」とか「〇〇やだ〜」とか、力が抜けるようなセリフが多くて、どう表現すれば良いか悩みもしましたが、言ってみれば谷原はどこにでもいる、誰もが投影しやすい人間なんですね。そんな男がどんどん窮地に追い込まれていくという、そんな展開がおもしろいと思います。ほかの登場人物もそうですが、いろんな浮き沈みがありながらその表と裏が描かれていくので、そんなところを楽しんでいただけると嬉しいです。

そんな谷原を演じて想うことというと?

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この作品のおもしろいところの一つが、登場人物が大人でもなく子供でもない、この中間にいる人間を描いているところだと思います。世間一般的には大人として扱われる年齢ですが、心はまだ大人になりきれていないし、責任に対しても強く自覚していない。でも子供としては扱われない。この微妙な感情を抱えながら社会にもよく馴染めず、いろんなことを抱えているんですね。そんな人間たちの群像劇だと思っていますが、“大人と子供”どっち付かずなところを上手く表現できればいいなと考えています。ただし、「こう見せようとか」「こう見せれば良い」といった考え方ではなく、「映像の中でどう生きるか?」「自然と立っていられるか?」そこのところを一番に意識しています。 その一方、学生時代のシーンを演じたとき、キャピキャピできない自分がいまして、歳を取ったなぁ…と感じてしまいましたね(笑)。

最後にこのドラマの見どころをお願いします

この作品では友情の絆や家族の絆、親子の絆、恋愛の絆などなど、いろんな絆が描かれています。それが10年前の事件と交差しながら物語が進みますが、その事件をきっかけに現代のそれぞれの絆が炙り出されていきます。親友だと思っていたけど、実は相手のことを何も知らなかったとか、崩れていく絆がある一方、誰かがそこを補うような絆ができてくる。現代と過去と行ったり来たり“リバース”しながら物語が展開しますが、過去のことが掘り返されること、過去の自分や人に見せたくなかった昔の姿など、現代に生きる皆さんにも通じるところがあると思います。そんなご自身の過去と照らし合わせながらご覧いただくと、何か先に進めなかったことに対してヒントをくれるような作品になっていると思います。 繊細であって大胆、そんな作品だと思うのですが、回を増すごとに内容が濃くなっていくのと同時に、例えば第5話を見ることで、第1話の内容がより鮮明に感じられる、そんな物語になっています。また、それぞれのキャラクターのストーリーがあり、各話ごと観ていただいても楽しめる作品でもあります。いろんな見方ができると思いますので、皆さんそれぞれの見方で楽しんでいただけると嬉しいです。

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