第八話 モト冬樹さん ― 前編
―台本を読んだ感想は?
本当にいい台本だったので、ちゃんと演じなきゃいけないぞって思いましたね(笑)。もちろん、きちんと演じさせていただいていますけど、なんというか、自然にできそうな役なのかなと思いました。
意外に“いい人”の役ってやりにくいというか、難しいところがあるんですけど、今回演じた林田という男は“中年の悲哀”みたいな部分を持っているので、僕自身、それほど役を作りこまなくてもいけそうだと感じました。以前、武田鉄矢さんに、「モトさんは普通にしていても、寂しげだね」って言われたことがあって(笑)、あ、普通でいいんだなって、考えるようになりましたね。
―今回演じられた林田健一という男性はどんな人物でしょうか?
とっても、真面目な男だよね。30年間、経理の仕事一筋でやってきて、どういう理由かは、台本にはないんだけど、その仕事を失って、ハローワークで仕事を探しているんだけど、なかなか仕事が見つからない。これって、今の世の中、すごくたくさんあると思うんだよね。
そこで、この林田という男もそうなんだけど、自分にとって何がいちばん大事なことなのか? 第8話は、それを考えさせられる内容だと思いました。
それと、林田という男は、すごく正義感のある男です。例えば、電車の中で大きな声を出して騒いでいるヤツがいたとして、それを注意したいと思っている人はたくさんいると思うんだけど、でもそれを実行できるかどうかというと、なかなか難しいじゃないですか。
そんなところも描かれているので、本当にどこにでもいる普通の中年男。そこが、この話のいいところだよね。
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