内野聖陽さん (以下、内野) 井上由美子さんの本はいつもおもしろく読ませて頂くんですけど、今回も素敵なセリフがたくさんあって、いいお話をいただいたなと思っています。
息子たちとの溝が埋まっていく物語でもあり、夫婦間の距離が近づいていく話でもあり、おやじの再生物語でもある。この短い話の中で、とても大事なテーマがたくさん込められてますね。
神木隆之介さん (以下、神木) 読んでいて心が温かくなりました。井上さんは女性なのに息子心を繊細に描かれていて、読みながら 「いつも僕が思っていることだ!」 と共感できる部分もたくさんあり、どうしてこんなに息子心をわかっていらっしゃるのかな、と驚きました。
就職活動をしている達也としてはバリバリ仕事ができる父を内心尊敬していたのに、主夫になってしまった。「やめてくれよ、僕の上に立っていてくれよ」 というモヤモヤがすごくリアリティがありました。
父にはどこかで僕より上にいてほしいんです。仕事がバリバリできるのでもいいし、趣味、たとえばスポーツとかがすごくうまい、でもいい。普段はダメな父親でも、どこかしら自分より上であってほしいと思います。勝てないなと思う部分を持っていてほしい。そこがすごく共感できました。