俺の家の話

インタビュー INTERVIEW

プロデューサー 磯山晶 プロデューサー 磯山晶

——これまで寄せられた視聴者の反響に対する感想を教えてください。

ドラマが始まる前は介護って、ちょっと重たいテーマなのでみなさんに避けられるかな、と思う部分も多少ありました。でも近い将来、自分たちの両親を介護するようになるかもしれない、と前向きに受け止めていただける反応がとても多くて。それは素直にうれしかったですし、演者のみなさんも嘘っぽくなく、誰かの人生の一場面として演じてくださったので、想像以上の作品に仕上がったのではないかなと思っております。

——収録が終盤になったときの長瀬さんのご様子はいかがでしたか?

寂しく感じているようでした。長瀬くんと西田さんの2人の収録では、第8話のお別れのシーンは目と目が合っただけで涙が溢れてしまったりして、ちょっと感傷的な雰囲気でした。コメディータッチのシーンでは楽しそうに爆笑しながら演じているんですけど。プロレスや能の大きなシーンの収録が終わってからは、少し精神的にも楽になったように見えました。

——これまでを振り返って、磯山さんが長瀬さんに対して持っている“思い”というと?

長瀬くんは『池袋ウエストゲートパーク』のときはまだ21歳、『タイガー&ドラゴン』では27歳、そして『うぬぼれ刑事』では31歳で今、42歳です。本人はあまり意識してないと思うんですけど、そのときどきで年齢に応じた表現をされています。これまで積んできた経験を『俺の家の話』では、すべて出してくれていると感じました。「42歳のいい男ってこういうことなのでは?」という表現をしてくれていると思います。

——現場での長瀬さんは、どのように作品作りに取り組んでいましたか?

宮藤さんの脚本のセリフを、どうすればもっと面白くなるか?と、ギリギリまで考えてくれていました。いろいろなアイデアを自分の体を使って表現してくれていて。よく「宮藤さんと長瀬さんの相性はばっちり合っている」と言われますが、『俺の家の話』では特にそう感じました。書いてあることをさらに面白くする努力を長瀬くんは欠かさないので、高い得点をどんどん狙っている感じですね。

——具体的には、どのようなアイデアを出されているんですか?

例えば、5話の稽古場で「羽衣」の謡を練習しながら、だんだん顔が怪士(あやかし)になっていくところとか(笑)。7話のオープニングでさくらからプロポーズに答えていない!って言われて、さくらから好きと言われた回想から戻ったときの表情をまた怪士にしたり。そういうちょっとした表情や間とか、長瀬くんは常にアイデアを出してくれました。

——『俺の家の話』は磯山さんにとって、どのような作品になりましたか?

やっぱり長瀬くんが事務所を退所する前の最後の作品ということで、とても責任を感じていました。彼を愛する方々に「こんなので終わりかよ!」とは絶対に言われたくなかったので、現時点での長瀬くんにとって最高傑作のドラマにしたいという心構えを持って取り組みました。本当はこれが最高傑作!っていうと、もう長瀬くんを見れない気がするので、言いたくないです。今後、長瀬くんが芸能活動を続けていくのか、いかないのか分かりませんが、50歳、60歳の長瀬くんも見たいと改めて思ったので、今は、これはこれでいい仕事が出来たなと思うことにしました。

——ゲストとして宮藤さんと長瀬さんにゆかりのある方がたくさん登場しました。長瀬さんとゲストの方たちをご覧になって、いかが思いましたでしょうか?

始まった当初は「ゆかりある人のカメオ出演って、内輪受けになるかも?」と消極的だったのですが、終盤のゲストのキャスティングを考えている時、「今さら知らない人に出てもらうよりも、知ってるあの人に頼んでみよう」と思い始めました。頼んだすべての人が即OKしてくださって、胸熱でした。これも長瀬くんの人徳だなと思いましたし、決まったキャスティングを長瀬くんに伝えるたびに「嬉しい!ありがたい!」と喜んでくれて良かったです。ゆかりある人をどう出そうか?ではなく、この役、どうせ誰かをキャスティングするだったらあの人に頼んでみよう、くらいの感じがちょうど良かった気がします。そして出演してくださった方々は、本当に21年ぶりとか16年ぶりとかなのに、即座に当時の雰囲気に戻るところも見ていて素敵でした。同じ空間でお芝居した人たちの感覚ってすごいなと思いました。

——衝撃的な最終話でした。磯山さんは最終話にどのような思いを込めましたでしょうか?

企画当初から寿一のモノローグ「これは俺のいない俺の家の話だ」は決めていたのですが、どうやってそれを描くか、は決めていませんでした。でもその後、長瀬くんが事務所を辞めることが決まった時に、宮藤さんと「結末を変えようか?」と話し合い、長瀬くんにも相談しました。でも彼は「え?なんで?変えなくていいんじゃない?」と言うので(笑)、初志貫徹しようということになりました。だから辞めるから、死ぬことにしたのではないんです。
今回、能楽を初めて勉強して、「亡霊」が出てくる演目が非常に多い、というのが最初の印象でした。だから最後の舞台で寿一の亡霊が出てくるのがやりたいね、って話になりました。亡霊というのは「思い残し」があって現世をさまよってしまうものだと思うので、「一度も父親に褒められたことのない息子が初めて褒められる」シーンにしようと。最大級の褒め言葉が必要ですね、と宮藤さんとは話していましたが、初稿を読んで「人間家宝」には泣いてしまいました。このためにあんなに何度も人間国宝って言っていたのか、と思うくらいの見事な伏線回収!だと思います(笑)。
寿一みたいな長男が家にいたら「家宝」だよなあ、と思いますし、長瀬くんしかそんな役、出来ないと思います。

Back Number

  • プロデューサー 磯山晶
  • 観山 寿一 役 長瀬 智也さん
  • 観山 寿三郎 役 西田 敏行さん
  • プリティ原 役 井之脇 海さん/堀コタツ 役 三宅 弘城さん
  • 観山 寿限無 役 桐谷 健太さん
  • O.S.D 役 秋山 竜次さん
  • 観山 秀生 役 羽村 仁成さん
  • 長田 大州 役 道枝 駿佑さん
  • 長田 舞 役 江口 のりこさん
  • 観山 踊介 役 永山 絢斗さん
  • 志田 さくら 役 戸田 恵梨香さん
  • 観山 寿一 役 長瀬 智也さん

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