國村隼さん/有馬 毅一役
いわゆる“医療モノ”のドラマはたくさんありますけど、このお話は“医療モノ”という体裁ではありますが、“復讐譚”が柱となっていて、しかも、今までの医療ドラマでは描きづらかった医療の闇の部分を取り上げているところが興味深かったです。普通の医療ドラマだと「人の命とどう向き合うか」がメインテーマになってくるところですが、このドラマは医療に携わる人たちの闇の部分を炙り出すような物語になっているのがおもしろいところですよね。もしかすると、かなりリアルなことを描いているんじゃないかと思わせるような。実際のところはわかりませんが(笑)。僕が演じている有馬教授は臓器移植が専門のお医者さんなんですが、例えば臓器移植に関して、人間というよりあたかも機械のごとく悪くなったパーツを取り替えるという感覚で、ひょっとしてそれと同じようなお医者さんが現実にいるかも…などと考えてしまいますね。僕らの感覚からすると、人の身体を切ったり貼ったりなんて恐いことだと思うのが普通だけど、その切った貼ったが日常のお医者さんにとっては、それが当たり前になっていると思うので、なんというか医者独特の感覚はあるんじゃないかと妄想しました(笑)。
まず、このドラマのお話をいただいたときにプロデューサーの高橋さんやチーフディレクターの塚原さんと、有馬さんの背景に関してはしっかりと話し合いました。ネタバレになってしまうのでここでは詳しくはお話できませんけど、なぜ有馬が悪事に手を染めてしまったのか、そうせざるを得なかったという理由ですよね。その理由は、有馬さん以外の人には理解されなくてもいいと思うんですが、15年前に起きた医療ミスに見せかけた事件に関して、有馬さんも深い関わりがあり、こうこうこうだから、有馬さんはこう考えてそうするしかなかった…という動機付けは細かく確認させていただきました。
有馬さんも医者ですし教授にまでなった人ですから、もちろん道徳的にしてはいけないことや善悪はわかっているはずなんでしょうけど、彼の中でいろんなことがあって、ある一線を越えてしまったきっかけがあったはず。ドラマの中では、悪いことをする人はキチンと心の動きが描かれてなきゃいけないと思うんですが、どんな人でも、悪いことをしてしまう可能性はある。そしてそうなるためには、何がしかの理由があると思うんです。普通の部分からちょっとずつズレてきてしまった結果、悪いことをしでかしてしまうんでしょう。ただし、有馬さんの場合は、そのズレ方が普通の人と比べて、突出してしまったと思っていて、そこの部分は演じる上で頭の隅に置いています。
付け加えますと、演じる役の柱というか、しっかりとベースを作っておいて、あとはそれに沿って、撮影現場でいろんなことを感じながら演じていくタイプなので、特に、ここでこうしてああしてと、段取りはしていません。監督から「ここはこんな感じで撮りたい」というお話しがあったり、共演者との絡みもありますので、その場その場でそれに即して逆算していきますけど。
ドラマとしてはかなりきわどいところもある、シリアスなお話ですが、撮影現場ではみなさんにこやかに、楽しい雰囲気の中で撮影ができています。主演の上野樹里君は、ふだんはやわらかい感じの人なので、撮影の合間は和やかな感じですが、いざカメラが回って明日美になるとビシッと目つきが変りますよ。
僕が演じている有馬さんのお話でいうと、第7話で馬脚を現したところで、びっくりした方もいらっしゃると思いますが、これからは、明日美と直接に対峙するシーンが増えてくると思います。明日美に正体がバレたこともあって、明日美に対して有馬さんの裏の顔でのやり取りになってくるでしょうし、二人のシーンは今までと違ったものになってくるはずです。ドラマをご覧いただいている方からすると、「この明日美の復讐劇はどんな形で帰結するのか?」そして、「いまだ明かされていない謎が飛び出すのか?」などなど気にされているところだと思いますが、ズバリ、最後の最後まで、みなさんが目を離せないような展開がありますので、ぜひ期待してください。「えっ!?」と、びっくりするような大どんでん返しが用意されていると思います(笑)。