磯山Pの撮影日記

vol.09

2012年11月27日

11月某日
撮影の最後の方になると、キャストの皆さんが次の番組に入りだしたりするので、今までよりもより「天気」が気になります。
しかし、この「大奥」は本当に天候に恵まれた番組で、第1話の木津川のシーン(通称流れ橋)以外は、ほぼ「雨で順延」といったことがありませんでした。
もちろん雨予報の場合に、前日にスタジオに変更し、翌日をロケに、くらいの変更はありましたが･･･。
特に最後の週は、奇跡のように雨を縫ってスタジオとロケが組み合わさっていて、見事予定通りにオールアップの運びとなったのでした。
有功と玉栄のラストシーンは彦根城で撮影したのですが、彦根というところは京都と天気が全然違うのです。映画「大奥～永遠」のときも、彦根だけ猛吹雪で、綱吉と吉保の二人の青春時代のシーンは背景がなぜかずっと豪雪、といったこともありました。
その1週間のうち、その日だけ、しかも彦根だけ「快晴！」という日を今回のロケはぶち当てて、綺麗な別れのシーンが撮れました。その日は田中聖くんと尾美さんのオールアップでした。先に終わった尾美さんは「あー、嬉しい。なんか終わるって、解放される気がして嬉しいんですよね」と言ってました。この間の多部ちゃんのアップのときにも痛感したのですが、役者さんは役がつながっていると、どこかにずっと緊張感があるんだろうなあ、と思います。たとえば簡単な例で言うと、「生牡蠣食べちゃダメ」とか「（現代劇だったら）髪を切っちゃダメ」「風邪引いちゃダメ」から始まって、きっと「徳川家光」や「村瀬正資」として作った何かを壊さないように4ヶ月生きているんだろうな、と思うのです。堺さんは、たぶんそれもあって京都から出ない(お仕事の都合がつくときはですが…)のだろうと思います。新幹線でたった2時間18分だけど、実際に往復するとやはり気持ちの上では結構変わります。田中くんのように合間でバラエティを撮る、なんてことは役者さんには難しいことなんだろうと思いました。
その田中くんですら、終わったときの晴れ晴れとした笑顔が忘れられません。
「坊主で始まって、坊主で終わります」と挨拶していましたが、その僧侶姿の衣裳が、30年後には西田敏行さんになるんだなあ、と思うとなんとなくその片鱗が見えてくる気がします。二人の別れのシーンは原作にないオリジナルのセリフが足されて、より感動的なものになりました。
紅葉のさかりに彦根城の玄宮園にお邪魔してしまい、観光客の皆様には大変ご迷惑なことだったと思います。制作部がお客様を誘導するときに「今夜の大奥のオンエアは11：30からですから、お間違えのないように！」（ロケのときは6話オンエア当日でした）といちいち言っていたのが、泣けてくるほど律儀だと思いました。

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