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堺雅人さんインタビュー

Q1.この作品のお話をいただいたときの感想は?

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基本的に、やれって言われたらなんでもやりたい人間なんですが、この「大奥」については、お話をいただく前に原作を読んでいたんですね。また、(原作者の)よしながふみさんと共通の知り合いもいまして、原作を知っていたので、すごく面白い本だなと思いながら読んでいたんですけど、今回、その有功を演じるということで、ただただ責任を感じています。すごく素敵な原作なので熱心なファンの方もいらっしゃるでしょうし、漫画の映像化というのは「こんなんじゃない!」って思う方もいっぱいいると思うので、原作ファンの期待を裏切らないよう、そして何より、よしながさんがわが子のように産んだ作品ですから、大きな責任を感じています。
原作モノを取り上げる時って、人様からお子様を預かる感覚に近い気がするんです。漫画という媒体で育んできたものをお預かりして、その命を絶たないようにやらなきゃいけないというプレッシャー。この作品に関わることができて「やったー」という喜びはありますけど、とても大きな役なので、嬉しい気持ちは1割くらいで、残りの9割は「大変なものを引き受けてしまった…」という感じでしょうか。やるからには精一杯やろうという想いはありますが、今でも「大変だ大変だ」という気持ちの方が大きいですね。

Q2.台本を読んだ感想というと?

“血と家”というものを扱った、非常に波乱万丈な物語ですよね。僕はこの「大奥」という作品を、大河ドラマと同じくらいの内容を持った、一大スペクタクルだと思っています。撮影している今も、まるで大河ドラマに参加させていただいているような気持ですね。ドラマと映画が連動するという大きなプロジェクトなので、簡単にはたどり着けないところにゴールがあるのだろうと思っています。
それと、台本上に書かれている予想しないような展開というのは、物語としては非常に面白いけれども、それとは別というか、戦国時代から江戸時代になって、その江戸時代が安定するまでに、それこそいろんな人たちの血と汗、涙など、流されてきたであろう歴史があって、その大きなうねりのようなところが、この原作自体が持っているすごく大きなテーマだと思うので、僕は、小手先でビックリさせたいとは思っていません。「大奥」って結局は“家”の話ですからね。だから、その物語が持っている大きなうねりがあると思うし、そのうねりをそのまま受けとめるというか。(映画で)終わりはもう作っちゃったわけですけど、ドラマに関しては、そこに帳尻を合わせなければと思いながら撮影に臨んでいます。

Q3.有功を演じる上で気をつけている点は?

僕は役に入る入り方とか、入るための儀式みたいなのはないんですけど、ト書きに「美貌」と書いてありますからね、こんなプレッシャーはありませんよ。大変なのは、ヘアメイクで、僧侶のメイクには2時間半かかります。プールキャップみたいなラバー製の被り物を被って、ラテックスで境目を埋めていくんです。撮影が終わって被り物を取ると、汗がだーって流れ落ちます。それこそ、何個か毛根は死んでますよね。労災認定してほしいですよね(笑)。

Q4.セリフの京言葉や時代劇ならではの所作についてはいかがですか?

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京言葉に関しては、けっこう苦労してますね。シーンの6割くらいはそれで撮られていくので、(京言葉が録音された)テープをいただいて練習しています。でも、京言葉だけでものすごくニュアンスが出るので、僕の演技が入る余地がないというか、6割近くはその言葉に持っていかれてる感じがしています。方言の持つ味って、非常にいいと思います。そうそう、有功は途中で江戸言葉をしゃべるようになるんですけど、田中聖君の玉栄はずっと京都言葉なので、大変でしょうね。
所作に関しては、今回の「大奥」ならではというのは特にありませんが、所作の指導は、大河ドラマでは踊りの先生が担当してくださるんですけど、東映の撮影所ではベテランの俳優さんが教えてくださるんですね。同じ役者の先輩に相談する感じというか、それが非常にいいですね。京都太秦に伝わる伝統芸能といったら大げさかもしれませんが、それに近いものがあるというか、そういうものを教わりながら豊かな文化に触れている感じがしています。

Q5.共演する多部さんの印象というと?

今回が初共演でまだよくわからないことが多いんですけど、いろんな顔を持ってらっしゃる方だと思います。あるシーンでは少年のような多部さんの顔を見て、またある日は妖艶な多部さんがいて…。その二つのイメージの違いはすごいなと思って、圧倒されているような状態です。そんな多部さんのいろんな顔が、演じてらっしゃる家光が持っているいろんな面に現れていると思います。打掛を羽織った妖艶な家光、少年のようなちょっとふくれっつらの家光。その間にもいろんな顔があるんでしょうけど、多部さんは今、いろんな顔を試行錯誤している最中だと思います。年齢はずいぶん離れていますけど、尊敬する同業者なので、これからいろんな多部さんを見てみたいですね。

Q6.撮影現場の様子はいかがでしょうか?

京都の太秦撮影所のほか、いろいろな場所でロケをしていますが、京都ならではのロケーションという意味では、本当にすごい場所を使わせていただいています。三井寺もそうですし、長岡京の方にも撮影に行って、光明寺ですね。あそこもけっこういいお寺じゃないかな。随心院は塀を借りただけでしたけど、でも京都ならではの文化財だから、画的にも面白いと思いますよ。
基本的に「大奥」という閉ざされた中で描かれるドラマですけど、そこにポンポンと挟み込まれるロケ風景は見どころの一つだと思います。

Q7.ドラマ「大奥」の見どころというと?

そうですね、「男とは?」「女とは?」「人の幸せとは?」という様々な問いかけがあって、たぶん今回はそれを見つけるプロジェクトのような気がするんですよね。設定上、男女が逆転したというだけで、ここで描かれる物語はほとんど史実通りなので、逆転したもう一つの江戸を見ることによって、今まで勉強してきた日本史に光が当てられると思います。その光というのは、例えば、今の僕たちの時代ではすごく女性が強くて、男性が草食系になったと言われているこの現代を照らす光でもあると思うんですよ。
それが、この作品の大きなテーマだと思うんです。原作者のよしながふみさんが見つけたテーマで、男と女が逆転することでその問いを投げかけた。それは、全10話のテレビドラマと2時間の映画の、大きなうねりの中に身を投じていただくことによって、わかってくる、感じていただける何かがあるのではないかと思います。逆に言えば、それを感じていただけなかったら、この企画は失敗なんじゃないかと。なので、なんとかスタッフ全員で力を合わせて、答えみたいなものを見ていただける作品として皆さまに届けられるよう、がんばっている最中なので、ぜひご覧いただければと思います。

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