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監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”
本作の医療監修を担当している山岸先生に、
「ブラックペアン」にまつわるさまざまなギモンに
お答えしていただくコーナーです
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vol.216話医学的解説①
世良先生と外科医の教育
6話は細かく言うと3つの手術が出てきました。
世良先生の活躍が目立った6話でした。
渡海先生のお母さんが倒れた時に渡海先生と世良先生、関川先生は緊張手術中です。
関川先生が執刀医の位置(患者さんの右側)渡海先生は第1助手の位置(患者さんの左側)、世良先生は第2助手の位置(患者さんの左足の前)についてます。
あの第1助手の位置(患者さんの左側)から手術を全て行うのはかなりのレベルでないとできないんです。心臓って右側から手術しやすい構造になっているので、普通は患者さんの右側に立って手術をするわけで、左からするのは相当難しい。弁も、血管もだいたい右側から見やすい構造になってます。それをいとも簡単に見にくい左側から手術している。縫っている位置、人工血管、帯フェルトを使用しているところを見ると急性大動脈解離の手術でしょう。
大動脈の手術は、以前紹介した循環停止という手段を使ったりしますので、通常の弁の手術や、冠動脈バイパス術よりも、手術手順が複雑で覚えることが沢山あります。世良先生は必死に渡海先生の手術についていってますが、研修医で、あそこまで出来る人はなかなかいませんし、あそこまでやらせる上司(渡海先生)もいません。
ただ、出来る外科医は、ほんの数分だけでも、手技を見るだけで、その外科医の能力と、伸びしろがわかるものです。キャッチボールを見て野球の実力がある程度わかるようなものです。リフティングを見てサッカーの実力がある程度わかるようなものです。
この人は出来ると判断すると、とことん手技をやらせる。センスと伸びしろがない人にいくらやらせても出来るようになりませんし、患者さんに迷惑です。
渡海先生は世良先生の手技の能力、努力の仕方、情熱、メンタルすべて総合的に判断して、こいつを鍛えるべきだと判断したのでしょう。泣いて患者を救いたいというくらいの情熱がない外科医には手術する資格はありません。当たり前の事です。
これが、最近の外科医は全くダメ、、、とか言うと、最近の外科医を侮辱する発言で、パワハラだとか言われてしまう可能性が高いのですが、そのような状況になる可能性を恐れていること自体が現代の外科医教育の危機を感じさせます。
大してセンスもなく努力もせず、オペをやらせろやらせろと騒ぎ、やらせないのはパワハラだと宣い、いざやらせてみて何もできるはずもなく、烈火のごとく叱ればふてくされ、全く学ぶ気がない、もう辞めるとか言い出す。毎日働いてるのはありえない。休みがあって当然だ。
何のために医者になったの?人救うってそんなに甘い事じゃないよ…
いけないいけない。現在外科医のなり手が年々減っていて、どこの県も外科医の獲得に苦しんでいます。若手不足で、私自身も外科医になって10年近くは後輩がいない状況が続きました。日々の患者さんの診察、手術の助手、紹介状の返事、転院調整、サマリー書き、保険などの書類書き、外来、術前カンファレンスの準備、患者さんの搬送、上司からの説教、、、その中で手術の勉強、練習をしなくてはならない。当時、毎月予定表が出るのですが、予定表の下の方に山岸は修行中につき休暇なし、と毎月書かれていて、その時はそれが当たり前でありましたし、夜中まで患者さんと向き合い、医局で手術の練習や勉強、研究をして自己犠牲の上に懸命に働く先輩医師たちに憧れを強く持っていました。非常にきつい状況にありましたが、それでも自分が手術をして、患者さんが笑顔で退院するときの喜びは最上のものがありました。
外科医のなり手を増やさないといけない、けれども自分が受けてきた厳しい指導はできない。辞めてしまったら困るから。
アンビバレンツな状況に今全国の外科医が頭を抱えている。
…
すいません。ついつい熱くなってしまいました。
渡海先生の「この中にお医者様はいませんか?」「これくらい当然だ。医者だからな。」などなど、熱いメッセージの意味を我々は良く考えるべきです。少なくとも自分は渡海先生のメッセージを胸に、人生をかけて手術をしています。人生をかけて治療して、患者さんが笑顔で退院する時のこの上ない喜び、感動、これは治療をしたものにしかわからない至福です。
世良先生のような情熱を持った外科研修医はいませんか?
世良先生の活躍が目立った6話でした。
渡海先生のお母さんが倒れた時に渡海先生と世良先生、関川先生は緊張手術中です。
関川先生が執刀医の位置(患者さんの右側)渡海先生は第1助手の位置(患者さんの左側)、世良先生は第2助手の位置(患者さんの左足の前)についてます。
あの第1助手の位置(患者さんの左側)から手術を全て行うのはかなりのレベルでないとできないんです。心臓って右側から手術しやすい構造になっているので、普通は患者さんの右側に立って手術をするわけで、左からするのは相当難しい。弁も、血管もだいたい右側から見やすい構造になってます。それをいとも簡単に見にくい左側から手術している。縫っている位置、人工血管、帯フェルトを使用しているところを見ると急性大動脈解離の手術でしょう。
大動脈の手術は、以前紹介した循環停止という手段を使ったりしますので、通常の弁の手術や、冠動脈バイパス術よりも、手術手順が複雑で覚えることが沢山あります。世良先生は必死に渡海先生の手術についていってますが、研修医で、あそこまで出来る人はなかなかいませんし、あそこまでやらせる上司(渡海先生)もいません。
ただ、出来る外科医は、ほんの数分だけでも、手技を見るだけで、その外科医の能力と、伸びしろがわかるものです。キャッチボールを見て野球の実力がある程度わかるようなものです。リフティングを見てサッカーの実力がある程度わかるようなものです。
この人は出来ると判断すると、とことん手技をやらせる。センスと伸びしろがない人にいくらやらせても出来るようになりませんし、患者さんに迷惑です。
渡海先生は世良先生の手技の能力、努力の仕方、情熱、メンタルすべて総合的に判断して、こいつを鍛えるべきだと判断したのでしょう。泣いて患者を救いたいというくらいの情熱がない外科医には手術する資格はありません。当たり前の事です。
これが、最近の外科医は全くダメ、、、とか言うと、最近の外科医を侮辱する発言で、パワハラだとか言われてしまう可能性が高いのですが、そのような状況になる可能性を恐れていること自体が現代の外科医教育の危機を感じさせます。
大してセンスもなく努力もせず、オペをやらせろやらせろと騒ぎ、やらせないのはパワハラだと宣い、いざやらせてみて何もできるはずもなく、烈火のごとく叱ればふてくされ、全く学ぶ気がない、もう辞めるとか言い出す。毎日働いてるのはありえない。休みがあって当然だ。
何のために医者になったの?人救うってそんなに甘い事じゃないよ…
いけないいけない。現在外科医のなり手が年々減っていて、どこの県も外科医の獲得に苦しんでいます。若手不足で、私自身も外科医になって10年近くは後輩がいない状況が続きました。日々の患者さんの診察、手術の助手、紹介状の返事、転院調整、サマリー書き、保険などの書類書き、外来、術前カンファレンスの準備、患者さんの搬送、上司からの説教、、、その中で手術の勉強、練習をしなくてはならない。当時、毎月予定表が出るのですが、予定表の下の方に山岸は修行中につき休暇なし、と毎月書かれていて、その時はそれが当たり前でありましたし、夜中まで患者さんと向き合い、医局で手術の練習や勉強、研究をして自己犠牲の上に懸命に働く先輩医師たちに憧れを強く持っていました。非常にきつい状況にありましたが、それでも自分が手術をして、患者さんが笑顔で退院するときの喜びは最上のものがありました。
外科医のなり手を増やさないといけない、けれども自分が受けてきた厳しい指導はできない。辞めてしまったら困るから。
アンビバレンツな状況に今全国の外科医が頭を抱えている。
…
すいません。ついつい熱くなってしまいました。
渡海先生の「この中にお医者様はいませんか?」「これくらい当然だ。医者だからな。」などなど、熱いメッセージの意味を我々は良く考えるべきです。少なくとも自分は渡海先生のメッセージを胸に、人生をかけて手術をしています。人生をかけて治療して、患者さんが笑顔で退院する時のこの上ない喜び、感動、これは治療をしたものにしかわからない至福です。
世良先生のような情熱を持った外科研修医はいませんか?
次回は救急外来での手術、粘液腫について解説します。
PROFILE
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イムス東京葛飾総合病院
心臓血管外科
心臓血管外科
医長 山岸俊介
日本外科学会外科専門医
日本心臓血管外科学会専門医
日本心臓血管外科学会専門医
2006年慶應義塾大学医学部卒業。
仙台厚生病院、埼玉医大国際医療センター、イムス葛飾ハートセンターを経て、現在イムス東京葛飾総合病院心臓血管外科医長。
仙台厚生病院、埼玉医大国際医療センター、イムス葛飾ハートセンターを経て、現在イムス東京葛飾総合病院心臓血管外科医長。
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- vol.31:最終話医学的解説
- vol.30:9話医学的解説②
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- vol.28:8話医学的解説②
- vol.27:8話医学的解説①
- vol.26:7話医学的解説③
- vol.25:7話医学的解説②
- vol.24:7話医学的解説①
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- vol.21:6話医学的解説①
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- vol.18:5話医学的解説①
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- vol.7:治験とは?
- vol.6:1話の医学的解説③
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- vol.4:1話の医学的解説①
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