Kubota×下町ロケット Kubota

Kubota×下町ロケット

宇宙(そら)から大地へ 『下町ロケット』新シリーズの舞台は農業!
佃製作所の新たな戦いの舞台となる農業機械の提供、さらにはシナリオ制作や機械操作などのドラマ演出の技術監修に参画してくださっている株式会社クボタさんが、『下町ロケット』をより深く楽しむために、農業機械や技術に関して解説してくださいます!!
視聴者のみなさんも疑問があれば、「疑問・質問を募集」に書き込んでください。

第2回 トランスミッションとバルブ その関係は?

佃製作所が完成させたトラクターのトランスミッション用“バルブ”。
トランスミッションとはエンジンなどの動力を走行や作業に適した回転に可変させる装置です。そのトランスミッションにとって重要なパーツが“バルブ”。ロケットエンジンで使用しているバルブのノウハウを活かし、トラクターのエンジンとトランスミッション、両方を活かせるメーカーになるというのが佃社長の夢!です。

そんな佃製作所の新規事業ですが、トランスミッション=変速機 と聞いて、ピンとこない方もいるのでは?(Webスタッフも、その一人です、汗)
ということで、今回は“トランスミッションとバルブの関係”をクボタさんに解説していただきます。

トランスミッションとは

トランスミッションは、歯車や軸などで構成され、エンジン(動力源)が生み出すエネルギーを、回転数、回転方向、トルク(力)を変えて、出力軸(活軸)へと伝達する変速装置です。エンジンの力を足回り(タイヤ・クローラ)や、作業機に伝える役割を果たします。トランスミッションは自動車、バイク、鉄道、船舶にも使われています。

トランスミッション エンジン出力との関係

エンジン出力との関係

エンジンの出力を「速度」に変えるのか「力」に変えるのか。
その役割を果たすのがトランスミッションです。
(自動車の場合、高速道を走るときは「速度」が必要で、発進時や坂道走行時は「力」が必要になります)

佃製作所の作った(油圧コントロール)バルブって何?

油圧コントロールバルブは、トランスミッションの変速操作(ギヤチェンジ)で用いられる油圧クラッチや油圧シリンダなどを制御する装置です。これがロケット品質・佃製作所が作った”油圧バルブ”です。この油圧バルブにより、オペレーターが選択した変速段の信号を、ECU(エンジンコントロールユニット)を経由して受け、「クラッチを切り→変速段にギヤチェンジし→動力をつなげる」といった一連の動作を制御します。

トランスミッション エンジン出力との関係

トランスミッションの機能により、農作業に合った速度が選べる

機械の動力源であるエンジンの出力は回転数(速度)×トルク(力)で決まります。トラクターでは、様々な農作業に対応するため前進30段、後進20段など自動車と比べると非常に多くの変速段数への対応が求められます。トランスミッションが、使用する回転数とトルクの領域を広げ、トラクターの活躍の場を広げます。

回転数(速度)×トルク(力)

<トランスミッションとバルブ>視聴者のみなさんから届いた疑問・質問にお答えします!

トランスミッションって、何ですか?

トランスミッションは、歯車や軸などで構成され、エンジン(動力源)の動力を回転数、回転方向、トルクを変えて出力軸(活軸)へと伝達する変速装置です。歯車の組み合わせによるものはギヤボックスと呼ばれることもあります。

その機能と役割を簡単に説明します。機械の動力源であるエンジンの出力(馬力)は、回転数(速度)×トルク(力)で決まります。従ってエンジンの出力(馬力)以上の回転数(速度)もトルク(力)も得ることが出来ません。そこで、変速装置(トランスミッション)を用いて、使用する回転数(速度)とトルク(力)の領域を拡げる必要があります。

エンジンの出力回転数以上の回転数(速度)が必要な場合は、変速装置(トランスミッション)により増速して回転数(速度)をアップし、エンジンの出力トルク以上のトルク(力)が必要な場合は、減速してトルク(力)をアップし使用領域を拡げます。

例えば、2倍に増速すれば出力トルク(力)は半分に、2倍に減速すれば出力トルク(力)は2倍になります。つまり、変速装置により、大きな馬力のエンジンを搭載しなくても機械で必要とする回転数(速度)とトルク(力)をどちらかの出力を抑えることでえることで使用領域を拡大できるのです。

「トランスミッション」と「バルブ」がどう関わるのか、詳しく知りたい

マニュアル式トランスミッションの変速操作は、①クラッチペダルを踏み動力を切る、②シフターを操作しギヤチェンジ、③クラッチペダルを戻して動力をつなぐ、という複雑な操作が必要です。現在のトラクターは、油圧機器を使用して変速操作が自動化されたモデルが主流となっています。(クボタでは、クラッチ操作が不要な有段のトランスミッションの種類として、「GST」と「パワーシフト」の2種類を採用しています。)
油圧コントロールバルブはそのキーデバイスとして、油圧クラッチや油圧シリンダ(ピストン)などの油圧アクチュエーター※を制御しています。(※:油圧のエネルギーを物理的な直線運動や回転運動に変換する装置)
なおトラクターのトランスミッションでは、前後進の切替、PTO(トラクタに接続する作業機械の駆動用軸)の変速、2WD/4WDの切替も、油圧コントロールバルブで制御しています。

佃製作所が作ったバルブのすごさはどこですか?部品が少なく、強度がまさるとは?

佃製作所のバルブは、ギアゴースト社の要求スペック(規格値)を、大森バルブの部品点数491に対して、部品点数153で達成している点です。材料費、組立工数、加工工数のどれにおいても、コスト面で大幅に有利になります。
(個々の性能データの面では大森バルブ製には劣っているものの、全て規格値はクリアしており、大森バルブ製は過剰品質ともいえる。)
少ない部品点数で要求スペックを満足させるには、個々の部品の精度を上げなければなりません。複数の部品で構成して成立している機能と性能を、たったひとつの部品で確保する必要があります。さらに、要求スペックに無い耐振動性など、トラクターへの実際の搭載環境をよく考慮した性能が勝っている点も、佃製作所の評価ポイントです。

これらを実現するには、バルブのクリアランスを可能な限り小さくし油の漏れ量(リーク量)を減らしポートチェック弁(内部漏れ防止弁)を廃止することや、スプールの切替方式を油圧パイロット式から直動式に変更して部品を削減することが考えられます。それには高精度なスプール穴の加工技術が不可欠であり、実際に真ん丸な曲がりの無い滑らかな穴を加工する必要があります。(真円度、円筒度、面祖度:どれもミクロン単位の加工精度)
高度な加工精度が確保できれば、クリアランスを極限まで詰めてもスプールがひっかかることなく、小さな力で正確にスムーズに作動させることができます。

また、バルブ取付面の加工精度(平面度:ミクロン単位の加工精度)も重要であり、確保したスプール穴の精度がバルブを組付けても悪化しないことが要求されます。こういった高度な加工技術があれば、小さな推力の電磁弁でも直接メインスプールを作動させる直動方式がとれます。しかし、剛性を高めるためには高強度な加工性の悪い材料を用いることが一般的で、高度な加工精度を確保することが更に難しくなります。

高度な加工技術により、高強度でシンプルな設計を実現し、故障が少なくコストパフォーマンスの高い変速バルブを開発したこと。そこが、「ロケット品質・佃製作所」のすごいところです。

大森バルブ製のバルブに対して、「アルミ鋳物をダイカストにすればコストが抑えられる」と島津が言いましたが、どういう意味ですか?

アルミダイカストは、アルミ合金を溶かして、金型へ圧入して成形する鋳造方法です。ダイカストは複雑な形状の製品を一工程で量産するため、生産コストは低く抑えることができます。他の鋳物と比較して非常に高い寸法精度が得られ面粗度が良いのが特徴です。切削加工には及びませんが、使用用途によれば加工レス化も可能です。金型費用が高いのがネックとなりますが、量産数が多いほどコストメリットがでます。トラクター用変速バルブでは、バルブブロックに複雑な油圧回路(油を流す通路)を形成する必要があり、大森バルブの試作品のバルブブロックでは、この油圧回路をアルミ鋳物素材に機械加工で形成していたと推測されます。島津さんの指摘で、量産ではバルブブロックをアルミダイカストにして、この油圧回路(油を流す通路)を素材で形成して“加工レス化”を図りコストを抑えたと考えます。(トラクター用の変速バルブの数量であれば、金型費用を含めてもコスト効果が大きいと判断できます)

トランスミッションのバルブの開発は、どのような作業を行うのですか?詳しく教えてください。

搭載する機種の仕様により、トランスミッションと変速バルブの仕様が決まります。トランスミッションの仕様は、主変速部をマニュアル式、GST式、パワーシフト式、HST(油圧CVT)式、どの変速方式にするのか。また無段変速であるHST式以外の有段変速の場合は、変速段数を何段にするのか。さらに副変速部をマニュアル式、GST式のどちらの変速方式にするか等で仕様が異なります。いずれの方式であっても各変速段で必要な車速とけん引力から各変速段のギヤ比(減速比)と伝達トルクが決まります。
この仕様に基づき、歯車、軸、変速クラッチ、軸受け、ハウジングなどトランスミッションの構成部品のレイアウトを決め、強度計算を含めた各構成部品の詳細設計を行うことが基本作業になります。変速バルブの基本仕様はトランスミッションの変速方式と変速段数で決まり、この仕様に基づきバルブの必要性能と構成部品のレイアウトを決め、各構成部品の強度計算を含めた詳細設計を行うことが基本作業になります。
詳細設計の過程では、各種強度解析、流体解析なども活用します。そして、トランスミッションも変速バルブも詳細設計に基づき試作品をつくり、台上試験装置(テストベンチ)を用いて、単体での性能評価、耐久性評価を行い、要求スペックを満足しているかを評価します。そして、要求スペックを満足したものを対象本機へ搭載し、実機での性能評価、耐久性評価を行うという開発サイクルを回しながら完成させて行く作業となります。

トランスミッションメーカーって存在するのですか?クボタさんは自社開発ですか?

トランスミッションメーカーは国内外にたくさんのメーカが存在します。クボタでは、トランスミッションは重要基幹ユニットと位置づけ、農業機械用のほとんどのトランスミッションを自社開発・自社生産しています。

1890(明治23)年創業。水道用鉄管の国産化に成功し近代水道の整備に貢献。農業機械による食料増産と省力化、環境施設による人類と環境の調和など、食料・水・環境分野の課題解決に向けた事業を展開している。

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