2019年4月スタート

用語解説

第8話

【 セラチア菌(セラチア・マルセッセンス) 】

細菌の一種、学名はSerratia marcescens。赤い色素を産生する細菌で、土、空気中、水中などに広く分布している。病原性はほとんどないため、健康な人にとってはほぼ無害。しかし、免疫力が低下している人が感染した場合には、肺炎や腹膜炎、敗血症、髄膜炎、などを引き起こす可能性がある。

【 ヒトゲノム解析 】

ゲノムとは、ある生物が持つ遺伝子(DNA)の情報の全てを、ヒトゲノム解析とは、ヒトの遺伝子の情報を総合的に解析することを指す。2003年にヒトゲノムに存在する遺伝子配列が解読され、その後ヒトには約2万2000個の遺伝子があることが明らかになった。ヒトゲノムが持つ情報は、遺伝子が関与する疾患(ガン等)の原因解明と治療法の開発や、人類の進化の過程の謎が解明など、多方面に応用されている。現在は個人のゲノム解析の時代に突入しており、1000ドル前後でゲノム配列の解読が可能になっている。

【 ボツリヌス菌 】

細菌の一種、学名はClostridium botulinum。土壌中や河川、動物の腸管など自然界に広く生息する偏性嫌気性細菌。低酸素の環境下で、非常に毒性の強い毒素(ボツリヌス毒素)を産生する。食品に発生していることもあり、摂取すると、神経機能を阻害され、呼吸機能が麻痺し、死に至ることもある。

【 炭疽菌 】

学名Bacillus anthracis。細長い形をした、比較的大型の細菌。元々は、土の中に存在しているが、動物が飲み水や牧草などと共に摂取すると発育して増殖。そして、摂取した動物の体液、血液と一緒に全身に広がる。傷口に菌が接触したり、十分に加熱していない肉を摂取した場合に、ヒトに感染することもある。また、吸い込んでしまった場合に感染することもあり、その特性を利用して、バイオテロに用いられる可能性があるとして警戒されている。アメリカでは2001年にテレビ局や出版社、上院議員事務所に炭疽菌が入った封書が届けられ、死亡者5名を出す事件が発生した。

【 創始者効果(ファウンダー効果) 】

孤立した小さな集団で近親婚が繰り返されると、遺伝的多様性が失われ、特定の遺伝子が広がることがある。始祖効果、入植者効果と呼ばれることもある。一例として、アメリカ先住民のABO式血液型がほとんどO型であることが知られている。氷河期にベーリング地峡を横断したごく少数の家族に偶然にO型の者が多く、その後アメリカ先住民族の祖先となったため、O遺伝子の頻度が高くなったと推定されている。

【 メラノコルチン1受容体(MC1R)遺伝子 】

メラノコルチンは、種々の生理作用をもつペプチド群の総称である。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などが含まれる。そのメラノコルチンの刺激を受け取るタンパク質のひとつが、メラノコルチン1受容体(MC1R)である。赤毛やそばかすなど、色素沈着に関係している。MC1Rをコードする遺伝子には、幾つかの型があり、Rバリアントという型を2つ持つことが赤毛に関連している。Rバリアントを1つだけ持つ者は、赤毛ではない。

【 バイオ・アート 】

バイオテクノロジーや生命科学を用いて表現する芸術。20世紀末に、クローン技術の発達や、ヒトゲノム解読プロジェクトの立ち上げ等、バイオテクノロジーの急速な展開を契機に発展した芸術分野。培養細胞工学や遺伝子工学を取り入れる等、表現手法もアプローチも様々で、バイオテクノロジーの進化と共に、バイオ・アートもその裾野が広がりつつある。

【 MAOA遺伝子 】

モノアミンオキシダーゼA(MAOA)というタンパク質をコードする遺伝子。「戦士の遺伝子」と呼ばれることもある。神経伝達物質セロトニンを分解する酵素をコントロールする働きを持つ。このMAOAの活性が低いと、攻撃性が現れやすい等の研究結果が報告されている。

※ 上之宝島

九州沖の離島。架空の島。

※ ファウンダーリサーチ

架空のプロジェクトで、遺伝や家系を遺伝子から調査するプロジェクト。自殺した園川直継が遠藤に依頼した調査である。

監修

嘉糠 洋陸(Hirotaka Kanuka)

東京慈恵会医科大学教授。1997年東京大学農学部獣医学科卒業、2001年大阪大学大学院医学系研究科修了、2011年から現職。専門は寄生虫学、衛生動物学。

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