2019年4月スタート

用語解説

第7話

【 筋電位 】

筋細胞(あるいは筋線維)が収縮する際に出される活動電位。筋肉は、脳からの筋肉を動かすという命令を神経電位の信号として受け取ることで動く。紐倉の義手は、内部に仕込まれたセンサーがこの筋電位をキャッチし、各パーツを動かす設定になっている。

【 PID(Primary Immunodeficiency Diseases) 】

原発性免疫不全症候群のこと。難病指定されており、先天的に免疫系のいずれかの部分に欠陥がある疾患の総称。障害される免疫担当細胞(例:好中球、T細胞、B細胞)などの種類や部位により、およそ200種類に分類される。多くは遺伝性である。感染に対する抵抗力が大幅に低下してしまうため、重症化すると、重篤な肺炎や膿瘍、髄膜炎等を繰り返して命の危険に及ぶこともある。軽症例では、抗菌薬、抗ウイルス剤、抗真菌剤の予防内服が効果的である。重症例では、臍帯血や骨髄を利用した造血幹細胞移植が必要となる。

【 救世主兄弟(Savior sibling) 】

各種移植を必要とする子供のために、ドナーになることを前提として体外受精で生まれる子供のこと。免疫のタイプ(=HLA型)が完全に一致することが条件となる。

体外受精を行い、体外で受精卵を作る。受精卵がある程度細胞分裂をしたところでその一部を取り出してHLA型の遺伝子検査を行う(着床前診断と類似)。患者である子供とHLA型が一致することがわかった受精卵のみを母体に戻し、妊娠、出産をする。生まれた子供は、患者である子供と全く同じHLA型を持つことになる。

しかし、HLA型が一致しなかった受精卵は破棄されるケースがあり、それが命の選別と取れること、また、救世主兄弟として生まれた子供は、本人の意思に関わらずドナーとなってしまうこと等々の倫理的問題が指摘されている。しかし、救世主兄弟が事実上容認されている国もあり、世界で年間100人近くが誕生しているという推計もある。日本では、日本では学会のガイドラインで事実上禁止されている。

【 死後生殖 】

死亡したパートナーの精子や卵子を用いて体外受精をし、子供を作ること。生前の同意を前提に容認している国もあるが、日本では事実上認められていない。

【 糞便移植 】

糞便は、様々な細菌など微生物から成っている。糞便移植とは、健康な人の糞便を身体に取り込むことで腸内環境を整え、その変化によって症状を改善することを目的とする治療法。糞便から調整した溶液を、大腸内視鏡や浣腸により腸内に注入する。主に抗生物質の効かない腸炎の治療として用いられている。

※ インファーゼ

ドラマ上の架空の新薬。HLA型不一致のドナー・レシピエント間の造血幹細胞移植を可能にするための、開発途中の薬。造血幹細胞移植の際に併用することで、患者とドナーのHLA型が一致していなくても免疫系が再構築することを目指し研究が進められていたもので、紐倉は期待したが、臨床研究では有効な効果が得られなかった。

監修

嘉糠 洋陸(Hirotaka Kanuka)

東京慈恵会医科大学教授。1997年東京大学農学部獣医学科卒業、2001年大阪大学大学院医学系研究科修了、2011年から現職。専門は寄生虫学、衛生動物学。

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