2019年4月スタート

用語解説

第5話

【 幻肢痛 】

事故などで手や足を失った人が、まだ手や足があるように感じ、そのような幻の手や足に痛みを感じること。身体の一部を失ったことに対し、脳が適応できないために生じると考えられている。先天的に手や足を持たない患者でも幻肢は起きることがあり、身体感覚はある程度まで遺伝的に規定されているという説がある。

【 クローン病 】

大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、クローン病はそのひとつ。小腸や大腸などの腸管壁に炎症を伴うびらんや潰瘍などができることが特徴。また、症状が落ち着いたり悪化したりを繰り返すため、長い経過のなかで徐々に病気が進行し、消化管だけでなく全身にさまざまな合併症が発生することもある。疾患のメカニズムは判明していないが、免疫系異常がひとつの要因と考えられている。

【 アメリカ鉤(こう)虫 】

ヒトに寄生する体長約10mm、体幅約0.4cmの線虫。中南米やアフリカ、アジアの熱帯から温帯に分布する。幼虫は土壌中に存在し、ヒトの皮膚から体内に侵入する。幼虫が侵入した部分の皮膚にかゆみを伴う発疹が現れ、その後に発熱、せき、喘鳴(ぜんめい)、もしくは腹痛、食欲減退、下痢が起こる。多数寄生例では、貧血や異食症がみられることがある。アルベンダゾールなどの抗寄生虫薬によって駆虫する。劇中、入谷は敢えてこのアメリカ鉤虫に感染することで、免疫系を変化させ、クローン病の症状改善のための実験的治療に取り組んでいた。

【 エボラ出血熱 】

エボラウイルスを病原体とするウイルス性疾患で、主として患者の血液、分泌物、吐物、排泄物等の体液に触れることにより感染する。また、感染したサルやコウモリとの接触により感染することもある。感染すると、突発的に発熱、頭や腹や筋肉の疼痛、無力症が起き、2〜3日で急速に悪化し、約1週間で死に至る。これまでに、アフリカ中央部、アフリカ西部で発生し、2014年には、ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリ、ナイジェリアで大規模流行が発生し、感染疑い例も含め約28,000名が感染し、11,000人以上が死亡(死亡率40%)した。

【 バイオセーフティーレベル4(BSL4) 】

バイオセーフティーレベルとは、細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を、生物学的な危険度で分類した指標で、病原体を扱う実験室や施設の安全基準の元となる。世界保健機関(WHO)の指針で、BSL1〜4の4段階に分けられる。このレベルに応じて扱える病原体が決まっており、最も危険度が高いBSL4では、重篤な感染症を起こす病原体のうち、有効な治療法がなく特に致死率が高いものを扱う。BSL4での病原体は、高度な安全設備を備え、適切な封じ込め環境下で安全に取扱われることが必要である。2018年の時点では、世界におよそ60箇所のBSL4施設が存在している。日本では稼働しているBSL4施設は1箇所だけである。

※ セリーヌ島

架空の島。実在しない。

※ 新型エボラウイルス

ドラマで設定した架空のウイルス。劇中では、生物兵器として米軍が生成したものである。

監修

嘉糠 洋陸(Hirotaka Kanuka)

東京慈恵会医科大学教授。1997年東京大学農学部獣医学科卒業、2001年大阪大学大学院医学系研究科修了、2011年から現職。専門は寄生虫学、衛生動物学。

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