特集

2023年7月9日/7月16日放送「ヴァトナヨークトル国立公園」

炎と氷が生んだ大自然の絶景

北大西洋に浮かぶ島国、アイスランド。その島の南東部にある世界遺産「ヴァトナヨークトル国立公園」は、同じところに氷河と火山が存在する世界でも珍しい場所です。番組として初撮影となるこの世界遺産を、2週にわたってお届けします。取材を担当した江夏ディレクターに話を聞きました。

火山の上にある欧州最大級の氷河

アイスランドに広がるヨーロッパ最大級の氷河。この氷の下には活発な活動を繰り返す火山が存在しているのです。

──今回の「ヴァトナヨークトル国立公園」とは、どのような世界遺産なのでしょうか?

江夏ディレクター(以下、江夏):イギリスとグリーンランドの間にある島国、アイスランドの自然遺産です。そのエリアの大部分はヨーロッパ最大級の氷河「ヴァトナ氷河」で、東京・神奈川・埼玉がすっぽり収まるほどの広さがあり、高地全体を分厚い氷が覆っています。この世界遺産の最大の特徴は、単に氷河だけでなく、厚さ最大900mもある氷の下にいくつも火山がある点です。それらの火山は現在も活発に活動しています。火山国であるアイスランドは、平均数年に1度は島のどこかで噴火が起こっています。取材に行った時にも、島の西部の火山で溶岩が噴き出していました。

数年に一度はどこかで噴火が起こる火山国、アイスランドの南東部にある「ヴァトナヨークトル国立公園」。その大部分はヨーロッパ最大級の氷河「ヴァトナ氷河」に覆われています。

──活動している火山の上に広大な氷河が広がっているとは驚きです。

江夏:とにかく桁外れのスケールなので、空からでないと火山と氷河を一度に捉えることはできないため、ヘリを飛ばして撮影しました。広大な氷の平原のところどころに窪んだ場所が見られるのですが、その窪みの下に火山があります。噴火や地熱で氷が溶かされて陥没しているのです。アイスランドは天候が安定しないので、ヘリを飛ばすタイミングはとても難しいのですが、限られた時間の中で何とかヴァトナ氷河の下にある火山の1つ、グリムスヴォトン火山をカメラに収めることができました。この火山は最大12kmものカルデラがあり、その一部が氷河の上に姿を見せていました。氷河から火山ガスや蒸気が上がる様子の壮大さに「こんな景色は見たことない」と驚きました。

氷河の下に火山があると噴火や地熱によって氷が溶け、窪みができます。グリムスヴォトン火山のカルデラでは火山灰に覆われた氷河から蒸気が上がる様子が見られます。

──さまざまな世界遺産を取材してきた江夏ディレクターが「見たことがない」と驚くとは本当に珍しい景色なのですね。

江夏:火山と氷河が一緒にある場所というのは希少で、この世界遺産には、ここならではの特別な絶景がいくつもありました。特徴的な景色の鍵の1つは、氷河から溶け出す水です。ヴァトナ氷河の下には、“氷底湖”と呼ばれる巨大な湖が存在しています。氷底湖の水は、地熱や噴火で氷河が溶けたものです。大噴火が起こると、その氷底湖が急激に増水して決壊し、氷河の末端から水が流れ出し大洪水が発生します。その結果、誕生したのが水浸しの平地です。水の流れによって平地に描かれた網状の模様が実に不思議でした。

火山と氷河が生む洪水によってできた水浸しの平地。不思議な網模様が大地に現れます。

──水が大地に模様を描くとは、ダイナミックな話ですね。

江夏:番組ではもう1つ、水の流れが作った壮大な景色をお見せします。水量ヨーロッパ最大級の滝、「デティフォスの滝」です。氷河から溶け出した水が毎秒700トンも流れ込んでいます。さらに滝の下には、高さ100mを超える絶壁の峡谷があります。その一帯は、度重なる大噴火で生まれた溶岩の大地で、そこを大量の水が流れ続けた結果、切り立った絶壁の峡谷が生まれたのです。

水量ヨーロッパ最大級の大瀑布「デティフォスの滝」。氷河から溶け出した大量の水と溶岩の大地が生み出した絶景です。

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