特集

2024年2月25日放送「イビサの生物多様性と文化」

8Kカメラで撮影した地中海の楽園、イビサ

リゾート地として世界中の人々を魅了する地中海の島、イビサ島。今回の世界遺産は、その島の美しい海と長い歴史を持つ遺跡や建造物を高精細8Kカメラで映像に収めた特別編です。取材を担当した田口ディレクターに話を聞きました。

透明な海を守る海底の濃い緑の正体

美しい海で知られる地中海の島、イビサ島。その海を守っていたのは絶滅が危惧されている海の草でした。

──今回の「イビサの生物多様性と文化」とは、どのような世界遺産なのでしょうか?

田口ディレクター(以下、田口):地中海のリゾート地として知られるスペインのイビサ島ですが、自然と文化の2つの顔を持つ複合遺産です。貴重な生態系を育む美しい海と、およそ2700年前の古代遺跡やスペイン帝国の城塞都市が登録されています。番組で「イビサの生物多様性と文化」を紹介するのはこれで4回目なのですが、今回は8K高精細カメラで撮影した特別編として、地中海で最も美しい海があると言われるイビサ島を取り上げることになりました。

「イビサの生物多様性と文化」は、豊かな海の自然と歴史が積み重なった文化によって世界遺産に登録されています。

──実際にはどのような映像を撮影されたのでしょうか?

田口:イビサ島は淡路島と同じぐらいの大きさですが、自然遺産に登録されているのは、イビサ島と隣のフォルメンテーラ島との間にある海域です。この場所は2万年前まで地続きで1つの細長い山脈でしたが、海水面の上昇によって浅瀬の海になりました。その様子をヘリからの撮影でお見せしています。浅瀬の海底まで透けて見えるほど美しい海が見どころです。この海に、ところどころ濃い緑の部分があります。この部分が実は海の美しさの秘密なのです。

世界遺産に登録されているエリアの海は穏やかで透明度が高く、浅瀬の底が見えるほどです。

──その濃い緑の部分にはいったい何があるのでしょうか?

田口:特別な許可をもらってその海に潜り、ハウジングに収めた8Kカメラで水中撮影しました。そこには、「ポシドニア」という海の植物、海草が密集して生えていました。ポシドニアは、かつては各地の海に生息していましたが、今これほど群生しているのは地中海ではイビサ島周辺だけになりました。大きいもので海底からの高さが1mを超え、魚やタコなど生物の格好の住処となっています。またポシドニアが砂をせき止め、波の力を打ち消すため、美しいビーチを守る役割も果たしているのです。

海底の濃い緑の部分へ潜って近づいてみると、そこは浅瀬に広がる大草原でした。

生い茂るポシドニアは、魚や軟体動物など海のさまざまな生き物の格好の住処となっています。

──美しく豊かな海を守っているのが、海底に生い茂る草とは驚きです。

田口:ポシドニアは海中で受粉し実をつける植物なのですが、今回水中撮影を担当した現地のダイバーが、海面を漂うポシドニアの種を見つけて撮影することができました。貴重な映像に注目してください。

イビサの美しい海を守り続けているポシドニア。海中で受粉して実をつける植物です。海面にはその種が漂っていました。

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