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2023年2月12日放送「18世紀のカゼルタの王宮と水道橋」

20年前の取材が生んだ特別な映像の数々

美しい王宮と壮大な庭園、そこへ水を運ぶ水道。その取材の裏には、過去にカゼルタの撮影経験を持つ日下ディレクターならではのお話がありました。

──この世界遺産には水道が含まれているということでしたが、庭園に流れる水は、その水道で運ばれたものなのですか?

日下: はい。元々、カゼルタには豊富な水源はありませんでした。運河を満たしている大量の水は、宮殿と併せて建造された水道がもたらしています。山や谷などの起伏を迂回して全長40kmにもなる水道です。

──そんな長い距離の水道を建造したとは大変な事業ですね

日下:この水道建設の最大の難所だったのが広大な谷です。そこには、巨大な石造りの水道橋が作られました。高さ最大55m、長さ530mもあり、建造当時のヨーロッパで最大の水道橋でした。

──宮殿や庭園と同じく大きすぎて、数字だけではスケール感がわからないほどですね。

日下:その大きさが伝わるようにこだわって撮影しました。水道橋の上は普段は閉じられているのですが、特別な許可をもらって自転車に乗った人に通ってもらいました。人と併せて見ていただくことで水道橋のスケールをより感じられると思います。

高さ最大55m、長さ530mもある水道橋。番組の映像では、その上を自転車で渡る人のサイズからその壮大さがわかります。

──こだわりの映像が楽しみです。それにしても、王宮のために水道まで引いてしまうとはすごい王様ですね。

日下:実は水道は王宮のためだけではないのです。途中の村では生活用水として、いまも使われています。 そのほかにも、絹織物工場の動力源としてこの水道の水が使われ、この土地をシルクの名産地に変えました。 また、水を引いたことでワイン造りも盛んになったということです。水源から王宮までの所々に、チェックポイントという水道を確認できる石の建物があります。その内の1ヶ所、ナポリ王も確認しに来たというチェックポイントで、特別な許可を得て水道の内部を撮影しました。現在も豊かに水が流れる様子をお見せします。

水道は、その途中の街にも豊富な水をもたらし、絹織物業などの産業を起こしました。いまも庭園に水を供給するだけでなく生活の中で利用されています。

──今回の取材は、特別な許可を得て撮影した映像がたくさんありますね。

日下:それには少し裏話があります。 実は私が、この世界遺産を取材するのは20数年ぶりの2度目でした。今回の取材前、王宮を長年管理している担当者に「日本から来ました」と挨拶をすると「20年ほど前、庭園の水の流れを素晴らしい映像に収めた日本の取材班がいたよ」と言われました。よく聞いてみると、それが私の前回の撮影だったことがわかり、担当者と意気投合しました。今回の取材では、その担当者をはじめ、多くの現地の方々から多大なご協力をいただきました。おかげさまで、さまざまな素晴らしい映像を撮ることができたのです。20年越しで完成させた番組とも言える今回の放送を、ぜひお楽しみください!

特別な許可を得て撮影した「18世紀のカゼルタの王宮と水道橋」の映像の数々をお楽しみください!

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