特集

2022年10月2日/9日放送「北海道・北東北の縄文遺跡群」

日本の一番新しい世界遺産 ~豊かな自然に寄り添う縄文人の暮らし~

今回、2週にわたって番組で取り上げるのは「北海道・北東北の縄文遺跡群」です。2021年に新たに登録された日本の文化遺産で、17の縄文遺跡が含まれています。約1年間の長期にわたって四季折々の縄文遺跡を撮影した、青森テレビの福士真那ディレクターに話を聞きました。

縄文人が得ていた様々な自然の恵み

狩猟・採集をしながら自然豊かな土地を選んで定住していた縄文人。その暮らしぶりを遺跡からうかがい知ることが出来ます。

──今回は、世界遺産に昨年登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」ですね。

福士ディレクター(以下、福士):はい、この世界遺産は、北海道、青森県、秋田県、岩手県にある17の遺跡で構成されています。紀元前1万3000年から1万年以上にわたる幅広い時代の集落の変遷を見ることができるのが、この世界遺産の特徴です。農耕や牧畜が始まる前の縄文時代、人々がどのような暮らしをしていたのかを想像しながら、1年かけて取材しました。

──遺跡のどんなところから、縄文人の暮らしがうかがえるのでしょうか?

福士:まずは遺跡のある場所です。縄文人は、森に囲まれた丘の上や海の恵みが得られる海岸の近くなど、自然豊かな土地で狩猟・採集をして定住していました。この世界遺産の縄文遺跡はそうした場所にあります。例えば、青森県にある三内丸山遺跡は後背が山で海の近くという環境にあります。この遺跡では、縄文人が暮らしていた住居、竪穴建物(たてあなたてもの)や、儀式などに使ったと考えられる掘立柱建物(ほったてばしらたてもの)などが発見され、日本最大の縄文集落跡と言われています。

青森県にある日本最大の縄文集落跡、三内丸山遺跡。後背が山で海にも近く、豊かな自然に囲まれた環境にあります。

──縄文人はどんなものを狩猟・採集していたのでしょうか?

福士:青森県の二ツ森貝塚から出土した貝殻や骨は、アサリ、ハマグリ、マガキ、イルカ、クジラなど、およそ70種類にも及びます。この貝塚からは、土器や釣り具などの生活用品まで見つかっています。

青森県の二ツ森貝塚からは様々な種類の貝殻や骨などが見つかっています。こうした出土品から縄文人の生活がうかがえます。

──本当に多様な食べ物を得ていたのですね。縄文人が豊かな暮らしをしていたイメージが湧いてきました。

福士:そのほかに、番組で注目したのはサケです。栄養豊富で余すところなく食べられるサケは、縄文人にとって大切な食料でした。冬に備えて保存食にも加工されていたようです。北海道にある大船遺跡のそばを流れる大船川では、実際にサケが遡上する様子も撮影しました。遡上のタイミングがごく短期間のため、そのときを狙って撮影するのにとても苦労しました。

秋になると、大船遺跡のそばを流れる大船川をサケが遡上します。サケは縄文人の大切な食料でした。

──長期取材だから撮影できた貴重な映像が見られるということですね。

福士:はい、番組ではさまざまな季節の縄文遺跡の風景を楽しんでいただけると思います。1年かけての取材というと、時間に余裕があったように思われるかもしれませんが、実際はサケの遡上のように限られた時間での撮影が多く大変でした。例えば、冬の三内丸山遺跡で夕日が沈むシーンを撮ったのですが、雪の日が多く、太陽が顔を出したタイミングの一発勝負でした。苦労の甲斐あって、雪が降り積もった遺跡に日が暮れる、美しい絶景を撮影できました。雪景色だけでなく、そのほかにも、実りの秋や桜が咲く春の風景などもお届けしますので、ぜひご覧ください。

季節ごとに異なる姿を見せる縄文遺跡。その絶景の数々をお届けします。

BACK TO PAGETOP