特集

2021年6月20日「リドー運河」

今も変わらぬ姿を残す北米大陸最古の運河

カナダ東部のオンタリオ州にある北米最古の運河「リドー運河」。19世紀に、6年という短期間で全長202kmに及ぶ運河が切り開かれました。完成後およそ190年の時を経て今も当時のままの姿を残す、この運河について、柳沢ディレクターに話を聞きました。

首都から五大湖まで202kmの水の道

船が数十mもの高低差を越えていくリドー運河は、建設当時最先端の技術で作られました。190年経った今も、その技術によって運河は維持されているのです。

──今回の「リドー運河」とはどんな世界遺産ですか?

柳沢ディレクター(以下、柳沢):カナダの首都オタワと五大湖のほとりにある街キングストンを結ぶ202kmの運河です。190年ほど前に作られた北米最古の運河で、今もなお使われているという点を評価されて2007年、文化遺産に登録されました。

リドー運河は、首都オタワとオンタリオ湖をつなぐ全長202kmの水の道です。

──運河の世界遺産はヨーロッパなどにもいくつかありますが、それらとリドー運河の違いはどんなところでしょうか?

柳沢:リドー運河の特長の1つとしては、人工的に掘ったのは19kmだけで、もともとあった自然の川や湖をつなげることで202kmの水の道を作り上げたという点が挙げられます。運河の高低差を超えるための「ロック」という仕組みや直線の水路といった、いかにも「運河らしい」場所は一部で、そのほかの場所はカナダの大自然が広がっています。

──190年前に作られた運河が今も使われているということですが、実際はどのように利用されているのでしょうか?

柳沢:もともとは物資輸送の目的で作られましたが、現在はカヌーを楽しんだり、キャビンのある小型船で旅をするなど、レジャーの場として使われています。

現在、リドー運河は船旅やボート遊びなど、観光客や市民のレジャーの場になっています。

──運河の船旅とは優雅な感じがしますね。

柳沢:番組でも、オタワからキングストンまで旅するようにリドー運河を紹介していきます。自動車でなら2時間で着くような距離なのですが、船で行く場合、およそ1週間かけてゆっくりと進みます。

──2時間のところを1週間かけるとは、本当にゆったりとした旅ですね。

柳沢:はい。その「ゆったり」とするポイントは、ロックにあります。ロックには水を堰き止める水門があるのですが、運河が作られた190年前は電気も通っておらず手動のウィンチで開閉していました。そして今でも多くの水門は当時と変わらず手で動かしています。人の手によるのでロックを通過するには時間もかかり、どうしてもゆったりとした旅になるというわけです。時間がかかっても慌てることなく、水門を管理するロックマスターと船に乗っている人との間で会話をする様子などが見られます。

運河の高低差を超える仕組みのロック。その水門は今も昔もロックマスターの手によって動かされています。

──190年間変わらず人の手で水門を開閉しているとは驚きです。

柳沢:リドー運河のロックは、作られた当時としてはヨーロッパから持ってきた最先端の技術を使っていて、それが今も残されています。水門の扉も当時と同じく木製です。当時の設計図を基におよそ20年おきに作り替えることによって維持されているのです。番組では、水門の扉を作り続けてきた工房も紹介します。

水門の扉は昔のままの木製。水圧や厳しい自然環境によって傷むため、約20年おきに新しく作り直されています。

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