特集

2021年2月21日「ウッド・バッファロー国立公園」

極北の手付かずの大自然とそこに暮らす希少動物たち

カナダ北極圏近くに位置し、北米大陸最大の国立公園「ウッド・バッファロー国立公園」。今回は、氷河が生んだ大地や手付かずの自然、希少な動物などが見られる、この世界遺産を、夏と冬の映像を交えてご紹介します。番組を担当した柳沢ディレクターに話をうかがいました。

夏と冬で激変する北極圏の景色

色鮮やかな湿原やエメラルドグリーンの湖といった夏の景色が、冬には一面の銀世界となります。その変化をご紹介します。

──今回の「ウッド・バッファロー国立公園」はどのような世界遺産なのでしょうか?

柳沢ディレクター(以下、柳沢):カナダの西部、北極圏の近くにある自然遺産です。広大な国立公園で、九州がすっぽり入るほどの大きさがあります。かつて「バッファロー」と呼ばれていたバイソンを保護するために1922年に設立されたのがこの国立公園で、世界遺産には1983年に登録されました。

──九州が入るとはかなり広いですね。実際にはどのように取材されたのでしょうか?

柳沢:実際のウッド・バッファロー国立公園は、高低差があまりなく、森林と湿地帯の平地が広がっています。広過ぎて、人が簡単に入ることができるエリアも限られています。私自身は2016年に現地へ取材に行って番組を作った経験があります。今回はコロナ禍のため、取材自体は現地のカメラマンにお願いして撮影してもらいました。

広大なウッド・バッファロー国立公園。どこまでも続く森と湿地が広がっています。

──以前も取り上げたことがあるということですが、今回はどんな番組になっているのでしょうか?

柳沢:前回、私が取材で訪れたのは夏でした。そこで今回は、冬のウッド・バッファロー国立公園をカメラに収めて比べてみようということになりました。

──夏と冬では、どのような違いがあるのでしょうか?

柳沢:北極圏に近いので夏は短く、10月ごろには雪が降り出します。今回撮影したのは12月で、気温はマイナス40度にもなります。まずご覧いただきたいのは、夏の赤、白、緑で彩られた色鮮やかな湿地の風景と、冬の真っ白な世界とのギャップです。

──赤、白、緑とは確かに鮮やかな色彩ですね。植物の緑は想像がつくのですが、白と赤は何の色なのでしょうか?

柳沢:白いのは塩の結晶です。ここは太古の昔、海底でした。そこが隆起した土地のため、塩分を多く含んでいます。赤いのは「レッド・サンファー」という植物です。レッド・サンファーは塩分を含んだ土壌でも育つことができるので、白い塩の土地に夏になると生えてきます。これが色鮮やかなのです。

色鮮やかな夏の風景と、冬の真っ白な世界。同じ場所とは思えないほど変化に富んでいます。

──赤白緑の三色が組み合わさった大地とはなんとも不思議な光景ですね。そこが冬はどんな風景になるのでしょうか?

柳沢:平地はほぼ雪に覆われ、真っ白な世界になります。また雪がまぶされたようになった針葉樹の森が広がっている幻想的な様子は、まさに絶景です。

──色鮮やかな風景がモノトーンに一変するのですね。

柳沢:他にも、湖の夏と冬の違いもお見せします。夏にはエメラルドグリーンの水をたたえる湖なのですが、冬になると湖面が全面凍結し、真っ平らで真っ白な雪原になるのです。

夏の南国のビーチのような湖も、冬には真っ白な景色に変わります。

──エメラルドグリーンから白への変化も劇的ですね。

柳沢:この湖は、石灰岩の白い湖畔とエメラルドグリーンの水の組み合わせによって夏には南国のビーチのような景色が見られるので、特に冬とのギャップが大きいです。このあたりの土地は、珊瑚などの死骸が積み重なってできた石灰岩の岩盤でできています。その岩盤が侵食されて陥没した「シンクホール」と呼ばれる穴が森のあちこちに開いています。なんとも不思議な光景です。

森にぽっかり開いた穴「シンクホール」。公園で最大のものは直径およそ100mもあります。

──さまざまな不思議な景色も見ることができるのですね。

柳沢:不思議と言えば、平原のところどころでまるで誰かが運んだかのように岩がある様子が見られます。これは「迷子石」と呼ばれ、氷河によって岩が運ばれ、氷が溶けたあとに残されたものです。この土地は1万年ほど前までは氷河に覆われていて、氷河の侵食によって平坦な地形になったのです。

──氷河が平原を生み出すとは、気が遠くなるような長い年月をかけて生み出された景色なのですね。

夏の南国のビーチのような湖も、冬には真っ白な景色に変わります。

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