特集

2020年5月17日放送「古代都市シーギリヤ」

1500年前の驚きの水利システムとは?

乾季の間、雨が少なくなる土地にとって、水の確保は重要な課題です。スリランカの乾燥地帯に豊かな緑を育んできた背景には、高度な水利システムがありました。

──ライオンの足の向きは非常に興味深いお話でした。そのほかには、どんなところが注目ポイントでしょうか?

田口:今回シーギリヤを紹介する上で注目した点の1つは、水利システムです。

──それは、生活や灌漑などのために水を利用する仕組みということですか?

田口:はい。シーギリヤがあるスリランカ北部の気候は、1年のうち数カ月、乾季があるのです。この土地では、昔から長い乾季に備えて、人工の溜池を作って水を確保してきました。スリランカ北部にある溜池は、別の世界遺産である都市アヌラーダプラの巨大なものをはじめ、その数は1万を超えると言われています。

アヌラーダプラの広大な溜池。スリランカ北部には1万以上の溜池があり、そのほとんどが現在も使われています。

──1万以上とはすごい数ですね。

田口:シーギリヤ北西に位置するアヌラーダプラは、紀元前から栄えたシンハラ王朝の都で、シーギリヤを作ったカッサパ王もここの出身です。スリランカ北部に点在する溜池のほとんどは、シンハラ王朝の時代に作られたもので、現在も使われています。水を貯めるだけではなく、水路をさまざまな場所につないで、土地を潤わせ、王国全体を田園地帯にするための水利システムなのです。シーギリヤも岩山のすぐ横に溜池があります。溜池から堀に水を流し、そこから周辺の田畑へ送り出すようになっています。

シーギリヤの周りにも人工の溜池があり、周囲の田畑に水を供給しています。

─乾燥地帯に国を作るとき、根幹となるのが水利だったのですね。

田口:溜池のほかにも、水利技術が優れていたことがうかがえる仕組みが、シーギリヤの岩山の上で見ることができました。天空宮殿を上から見てみると、プールのように見えるところが何カ所かあります。これは雨水を貯めるタンクのようなもので、岩山の上の暮らしに利用していました。また岩肌を見てみると、切り込みが入っているところがあります。これは雨どいとして機能していて、一定の方向に雨水を流すルートを作っています。流れていった水は集められ、地下水路を通じて麓の庭園の池に湧き出す仕掛けになっているのです。

山頂の宮殿には貯水タンクとなるプールがあります。また岩肌には雨どいとなる切り込みが入っていて、雨水が麓の人工の池まで流れていくのです。

──1500年前に山頂に降った雨を麓の池に集める仕組みを作り上げていたとは驚きです。

田口:水利の技術については、当時のアジアの中でも傑出していました。農業を発展させるために国全体が培ってきた技術が、ここでは宮殿を維持するメカニズムとして応用されています。さらに岩山で集めた水が最終的に溜池に溜まるようになっていて、シーギリヤそのものが、水利システムの一部となっているのです。

──シーギリヤは水利システムのシンボルのような存在とも言えそうですね。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

田口:番組3度目となるシーギリヤですが、双子のように並んだ2つの岩山シーギリヤとピドゥランガラや、雲の合間から現れる、まさに天空宮殿といったシーギリヤ山頂など、これまでにない絶景の映像をふんだんに盛り込んでいますので、ぜひお楽しみください。

雲の合間から現れる天空宮殿。ほかにもシーギリヤとその周辺の、数々の絶景をお届けします。

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