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アゼルバイジャン、バクー第43回世界遺産委員会リポート

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7月6日(土) バクー世界遺産委員会リポート 第三回

 7月6日の世界遺産委員会は、昨日につづいて文化遺産の審議です。
 今回の世界遺産委員会では、新しい世界遺産の候補が35件ノミネートされており、それを三日間で審議する予定になっています。例年は25件前後を三日間で審議しているので、今年はかなり多く、その分、議事進行をスムーズに進める必要があります。アゼルバイジャンの議長は、昨日も会議の冒頭、「新しい世界遺産に決まっても、関係者は議場で大騒ぎしないでください。議事がストップすると、本当に時間が無くなってしまいます」と呼び掛けていました。
 そんな状況の中、午前中の審議で7つの文化遺産が新たに決まりました。以下、決まった順に紹介します。

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世界遺産委員会の議場

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アゼルバイジャンの議長

バーレーンの「ディルムンの墳墓群」は、3700年以上前に造られた墳墓。登録が決まった時、議長が「これがちょうど1100件目の世界遺産になります」とアナウンスしました。

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ディルムンの墳墓群(バーレーン)

オーストラリアの「Budj Bimの文化的景観」。広大な湿地を舞台に先住民アボリジニが行っていたウナギなどの養殖、世界でも最古かつ最大規模のものとされる水産養殖が作り出した景観が評価されました。

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Budj Bimの文化的景観(オーストラリア)

 中国の「良渚鎮遺跡」。長江の古代文明を代表する遺跡がついに世界遺産になりました。この審議の時は会場にたくさんの中国人が詰めかけ、決まった瞬間、横断幕を出すなど大騒ぎ。議事進行を担うアゼルバイジャンの議長は、ちょっと気の毒でした…

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良渚鎮遺跡(中国)

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良渚鎮遺跡の登録が決まって喜ぶ中国人たち

インドの「ラジャスターン州のジャイプール市街」。ジャイプール市内の天文施設「ジャンタル・マンタル」はすでに世界遺産になっていますが、今回は市街自体が世界遺産入りです。

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ラジャスターン州のジャイプール市街(インド)

インドネシアの「サワルントのオンビリン炭鉱遺産」は、オランダの植民地時代に作られた炭鉱です。

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サワルントのオンビリン炭鉱遺産(インドネシア)

 そして決まったのが、日本の「百舌鳥・古市古墳群」。「1600年前の遺跡として保存状態が素晴らしい」など、評価する声が相次ぎ、満場一致で世界遺産入りとなりました。登録が決まった後の会見で、大阪の吉村知事は「これからは、なにか全体像がわかるような工夫をしていきたい」と述べました。確かに巨大すぎて、現状では空から見ないと全体のスケールが分からないという問題はあります。

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百舌鳥・古市古墳群(日本)

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万歳する吉村大阪府知事(右から二人目)

ラオスの「シエンクワーン県ジャール平原の巨大石壺遺跡群」は、壺状の大きな石が2000以上も点在する不思議な遺跡群です。

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シエンクワーン県ジャール平原の巨大石壺遺跡群(ラオス)

 さらに午後の審議で7つの文化遺産が決まりました。
 ミャンマーの「バガン」。世界三大仏教遺跡(あとのふたつはカンボジアのアンコール・ワットとインドネシアのボロブドゥール)のひとつが、ついに世界遺産入りです。ミャンマー代表団も国旗を持って大喜び。

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バガン(ミャンマー)

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バガンの登録が決まって喜ぶミャンマー代表団

 韓国の「書院、韓国の新儒学の教育機関群」。当時の扮装をした韓国人が会場に大勢現れ、決定の瞬間、こちらも大騒ぎとなりました。

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書院、韓国の新儒学の教育機関群(韓国)

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扮装した韓国の人々

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韓国の書院の登録が決まった瞬間

カナダの「ライティング・オン・ストーン」。岩絵の残る先住民ブラックフットの聖地が世界遺産となりました。

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ライティング・オン・ストーン(カナダ)

チェコとドイツの「エルツ山地/クルシュネホリ鉱業地域」。ドイツ語だと「エルツ」、チェコ語だと「クルシュネホリ」、共に「鉱石」を意味する言葉で、12世紀から続いた鉱業が作り出した文化的景観です。

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エルツ山地/クルシュネホリ鉱業地域(ドイツ・チェコ)

チェコの「クラドルビ・ナト・ラベムの儀礼用馬車馬の繁殖・訓練の景観」。かつてハプスブルク家のために馬車馬を育て訓練した地で、今も馬の生産・訓練を行っているという面白そうな世界遺産です。議長が「これがちょうど1111番目に登録された世界遺産、1並びです」とアナウンスし、会場に笑いが起こりました。

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クラドルビ・ナト・ラベムの
儀礼用馬車馬の繁殖・訓練の景観(チェコ)

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1111番目の世界遺産が決まって…

ドイツの「アウクスブルクの水管理システム」。アウクスブルク市の運河などで構成される、瑞々しく夏に見てみたい世界遺産です。

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アウクスブルクの水管理システム(ドイツ)

ポーランドの「クシェミオンキの先史時代の火打石採掘地域」。ポーランドはすでに採掘関係の世界遺産がふたつあるのですが(ヴィエリチカとボフニアの王立岩塩坑群、タルノフスキェ・グルィの鉛・銀・亜鉛鉱山とその地下水利システム)、これで三つ目となります。

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クシェミオンキの先史時代の火打石採掘地域(ポーランド)

以上、14の文化遺産が新たに決まりました。怒涛の勢いですが、さらに明日7月7日も文化遺産の審議が続きます。

プロデューサー 堤

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