特集

2019年6月23日「三清山国立公園」

雲海が広がる 奇岩の山

雲海と霧の中に浮かび上がる不思議な形をした巨大な奇岩の数々。高さ100mを超える迫力ある石柱や、動物そっくりの形をした岩など、三清山国立公園には、数千万年の時の流れが生み出したダイナミックな風景が広がっていました。番組初登場となるこの世界遺産について、取材した江夏ディレクターに話を聞きました。

雲海と霧に浮かび上がる 奇岩の幻想的な世界

三清山国立公園では、気象条件がそろうと雲海や霧が発生し、奇岩と相まって幻想的な光景が現れます。山水画のような風景を映像に収めるため、撮影班はその瞬間が訪れるのを待ちました。果たしてどのような成果が上がったのでしょうか。

──まず、三清山国立公園はどのような世界遺産なのか教えてください。

江夏ディレクター(以下、江夏):三清山国立公園は、上海から南西に約480kmに位置する岩山が広がる地域にあります。山は、見渡す限りすべて花崗岩でできていて、最高峰は1819.9m。48もの峰が連なる広大な地域が世界遺産に登録されています。三清山は、変わった形をした“奇岩”が数多く見られる場所です。巨大な花崗岩の奇岩がこれほど大規模な範囲に林立しているのは、世界でもここだけです。

眼下に雲海が広がる光景は、雨が降った翌日の早朝、風がないときにだけ発生します。山の稜線を超えた雲が斜面に沿って流れ落ちる「滝雲」も見ることができます。

──特徴的な形の奇岩が並ぶ三清山国立公園ですが、「山水画のような風景」と言われるのはなぜですか?

江夏:三清山国立公園の年間降水量は2000mmにもなります。その豊富な雨が、奇岩が立ち並ぶ光景をドラマチックに演出するんです。雨が降った翌日の早朝、風がないときにだけ眼下に雲海が広がります。見事な雲海も見どころではありますが、雲海を発生させる雨は、奇岩の山にもうひとつの絶景を生み出します。気温が高くなると、山の麓に蓄えられた豊富な雨水が水蒸気となって山肌を駆け昇ってくるんです。その水蒸気が高地で冷やされると水滴に変化し、霧になります。霧が立ち込める中に、奇岩が浮き上がって見える様は山水画のようで、三清山国立公園の見せ場と言えます。その光景を視聴者の皆さんに見てもらうため撮影に挑んだのですが、苦労の連続でした。

山水画のような幻想的な光景を撮影するため、カメラを構えて待ち構える撮影班。うごめく霧の中に浮かび上がる奇岩の様子を撮影できました。

──撮影ではどのような苦労がありましたか?

江夏:タイミングを合わせるのが大変でした。気象条件が変わりやすい上に、入り組んだ山間なので、撮影現場に行ってみないとどんな様子なのかがわかりません。特に、いったん霧が発生すると、あっという間に広がって周囲が真っ白になってしまうんです。そうなるとお手上げです。でも、われわれとしては、霧の中に浮かび上がる奇岩を映像に収めたいわけですから、霧が晴れるその瞬間を待つしかありません。

ドローンを使った空撮映像も見どころのひとつです。雲海に浮かび上がる大蛇のような石柱のダイナミックな映像に注目してください。

──最適なタイミングを計るのが難しいんですね。

江夏:そうなんです。ちょうどいいタイミングで撮影できるようにカメラの準備をして、あとは現場でひたすら待ちました。10日間にわたって撮影をしたのですが、なかなか思ったとおりの条件が整わず、そのうちの半分くらいの時間は待つか移動するかで、撮影ができませんでした。ただし、辛抱強く待った甲斐あって、霧と奇岩が織りなす幻想的な光景を撮影することができました。撮影できたとき「この一瞬ために待っていた!」と思えるほどの成果が上げられたと思います。

朝日を浴びて、赤く染まる美しい岩肌。この瞬間を撮影するために、撮影班は3日間、テントに宿泊しました。

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