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植木枝盛生誕の地 植木枝盛の実践活動の特徴を、歴史家・家永三郎はこう解説しています。

 「中央政府→地方自治→個人の権利という上から下への価値序列によってでなく、個人の権利を中核に、地方自治→中央政府という、下からの住民運動を起点として政治の変革をはかるところから政治活動に入って行った点が、枝盛を考える上でたいせつなところである。」(植木枝盛選集 編者・家永三郎 岩波文庫 1974年刊) それは植木が起草し、現日本国憲法より数歩進んでいるとの評価もある「東洋大日本国国憲案」に見ることが出来ます。第廿九条の「日本各州ハ日本聯邦ノ大ニ抵触スルモノヲ除クノ外皆独立シテ自由ナルモノトス何等ノ政体政治ヲ行フトモ聯邦之ニ干渉スルコトナシ」。三割自治から地方分権へ、掛け声だけが聞こえる今の日本にあって、120年前に、列島日本を連邦国家として構想していたとは、ただただ驚くばかりです。

 1877年(明治10年)植木枝盛が第1稿を起草し、板垣退助ら幹部が手を入れた立志社建白書は、明治政府の失政を8項目にわたって指摘しています。
  1. 天皇が五カ条の誓文で誓ったこと(広く会議を興す、旧来の悪習を破り官民一体となって国家を治める等)をさらに拡充すると約束しているのに、政府はこれを実行せず、かえって言論の自由を押さえつけている。
  2. 政府の高官は明治維新騒動の際に登用された無能な者が多く、国の政治を統一的に管理する秩序がない。
  3. 中央政府が地方行政に干渉しすぎるため、無駄な事務が多い。中央集権をやめ、人民自治の気象を養成して、世論によってすべての事を決定するべきである。
  4. 政府と人民が協力して国家の方針を決定する立憲政体ならば国民は国を守る自覚を持つが、君主や官僚が特権を持つ専制政体では国を守る自覚など持てない。
  5. 税金は人民の努力の結晶であるが、その徴収が厳しいにもかかわらず、その消費は政府の独断で行われ、しかも人民はその決算も知ることができない。
〔以下略『立志社 ─その活動と憲法草案』高知市立自由民権記念館 1998年刊〕

 この建白書を吟味するにつけ、2001年の今と共通しすぎる内容に“なぜだろう?!”と頭を傾げてしまいます。
 結局のところ、私たち日本人は同じことの繰り返しをしているのでしょう。様々な経験を生かすことなく。
 建白書の2年前、新聞紙条例公布、出版条例改定が行われるなど、言論統制・弾圧が強まります。そんな嵐の中、枝盛は数え年36歳(1892年・明治25年)で世を去ります。入院していた東京病院で病死とのことですが、毒殺説があり、前出・家永三郎は「枝盛の再起を恐れた政府の陰謀により消された疑いが濃い」としています。
 明治という時代に植木枝盛が主張し、実践したこと。困難な時代にあって、志を立てるということ。自由と民権の意味を今こそ問い直す時と思われます。

         「子どもとテレビ」プロデューサー TBS・大野照夫