2017年10月期連続ドラマ

足と靴と健康に関するエトセトラ

あしは第二の心臓!?

今回は健康をキーワードとしたお話をしたいと思います。まずタイトルの「あし」ですがあえて平仮名で書いたのにはわけがあります。日本では一般的に「足」といった場合、腰から下の全てを指すことが多いようです。医学的には「下肢」といい、足首までは「脚」そこから先を「足」と呼んでいます。この点、欧米では足は「Foot(フット)」、脚は「Leg(レッグ)」と明確に分かれます。フットレスト、レッグウォーマーなどほとんど日本語になっていて、あまり意識したことはないかもしれません。「足」と「脚」の両方にまたがるお話なのであえて「あし」と表現しました。

タイトルに戻りますが、「心臓」の働きを知らない人はおそらくいないでしょう。私たちが生まれてから死ぬまで「心臓」は休むことなく動き続け、酸素や栄養分を含んだ血液(動脈血)を全身に送り出しているのです。そして二酸化酸素や溜まった老廃物をまた血液(静脈血)で心臓へ戻し、フレッシュな血液をつくります。ここで問題になるのが「あし」の部分です。心臓から「あし」へ送り出された血液が重力に逆らってどうやって戻るのかということです。
実はこの働きを「あし」が担っているのです。血液を送り返す、その働きが心臓と似ているため「第二の心臓」と呼ばれています。
少し難しいですがその仕組みを説明します。心臓から送り出されたフレッシュな血液は動脈(イラスト赤色)を通り、細胞レベルでのガス交換を行い、老廃物を含んだ血液が静脈(イラスト青色)を通り心臓に戻ります。これを足のあおり運動(かかとから着地して蹴り出す動作)と脚、特にふくらはぎの筋肉の収縮によってポンプのように血液を押し上げています。乳搾りになぞらえて「ミルキングアクション」と呼ばれます。そしてこの働きを助けるために静脈には「静脈弁」というものがあり血液の逆流を防いでいます。

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筋肉ポンプを使うことは血行促進だけでなく、リンパ液の循環にも大変有効です。デスクワークなどで長時間座り続けていると「浮腫(むくみ)」が出るのは筋肉ポンプが働いていないからです。歩くための筋肉は全身の筋肉量の2/3にも及びます。ウォーキングだけでもむくみの軽減効果は大きく、そのほかに冷えの解消、体重の減少、新陳代謝の向上といいことばかりです。ただし「正しく足のサイズに合った靴で、歩行に適したタイプを選び、そして正しく履けている」ことが大前提となることを忘れてはいけません。
最後にちょっとした靴選びのポイントをご紹介しましょう。よく「靴は夕方買うのがいい」と言われますが、本当でしょうか? 夕方は足がむくんでいるので、この時間に靴を合わせれば一日履いていて大丈夫という考え方があります。今日のお話にその答えがあります。例えば、朝にむくみがあり、夕方にかけてむくみが取れていく人もいます。実際の調査でも夕方に足がむくむという人は半数くらいいるそうですが、裏を返せばあとの半分は違うということです。結論を言えば、靴を買う時間はいつでも良く、体調の良い時で、靴選びの前に軽く歩いておくことをおすすめします。これにより適度に血行が促され足の状態もベストになります。ちょっとしたことですが快適に靴を履くためのポイントです。

著者プロフィール

木村克敏(きむら かつとし)
1965年生まれ、東京出身。
東洋大学経済学部卒業後「株式会社かねまつ」入社、ショップ店長、オーダーサロンマネージャー、銀座本店副支配人を務める。その後「コールハーンジャパン」へ転職、ストアマネージャーを経てスーパーバイザー、ショップトレーナーとなる。
6年前より「一般社団法人足と靴と健康協議会(FHA)」の事務局長を務める。現在はシューフィッターの養成講座の運営の傍ら、一般消費者への啓蒙活動の一環として講演活動等も行っている。
上級シューフィッター(バチェラーオブシューフィッティング)の有資格者。

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