特集

2022年4月10日放送「ポン・デュ・ガール」

2000年前の傑作建築古代ローマ人が築いた水道橋

南フランスのガルドン渓谷にある世界遺産「ポン・デュ・ガール」は、2000年前に古代ローマ人が建造した水道橋です。その卓越した建築や水道に関する技術と、豊富な水がもたらした文化について、番組を担当した、フランス在住の松本ディレクターに話を聞きました。

高さ49mの橋で渓谷を越える水路

ニームに進出した古代ローマ人は本国と同様に快適な生活を追求し、その結果、50kmもの水路を築き上げました。

──今回の「ポン・デュ・ガール」とは、どのような世界遺産なのでしょうか?

松本ディレクター(以下、松本):南フランスのガルドン渓谷にある水道橋です。約2000年前に古代ローマ人が建設したものが現存しています。

──築2000年とは大変な年月を経た橋なのですね。どんな水道橋なのでしょうか?

松本:高さ49m、長さは275mあり、現存する世界一高い古代水道橋です。アーチを3層重ねた構造で、最上段のアーチの上が水路になっています。実際にポン・デュ・ガールを見てみると、その大きさには圧倒されます。それと同時に「現代のような重機を使わずに人力で、2000年前に建てられたとは信じられない」という印象も受けました。矛盾する表現かもしれませんが、現代の建築物に引けを取らないという意味で古さを感じさせないのに、同時に歴史も感じられる建築物です。

高さ49m、長さ275mの水道橋、ポン・デュ・ガール。2000年前に建てられたとは思えない建築物です。

──古代ローマ帝国はなぜこんな巨大な水道橋を作ったのでしょうか?

松本:ポン・デュ・ガールの南西にある街、ニームに水を引くためです。ニームは、紀元前1世紀にローマ帝国が進出し、大きく発展した街です。ニームには現在でもローマ帝国が建てた神殿や円形闘技場が残っています。この街でローマ人がこだわったのが、水をたっぷり使う、快適で衛生的な生活でした。

巨大な水道橋の最も上の層は、人が歩けるほどの高さと幅のある水路になっています。

──それで水道を引いたのですね。

松本:はい。ローマ人は理想の水源を探し求め、ニームから25kmも離れた森で枯れない泉を見つけました。そこからニームまで、硬い岩盤や土地の起伏などを迂回するルートを取ったため、水路は全長50kmにもなりました。当時はポンプなどありませんから、水路に傾斜をつけて水を流す必要がありました。ただし水源からニームまでの高低差はたった12mほどで、水路1kmにつき平均してわずか25センチという傾斜を保っているのです。

ニームには、古代ローマの時代に建てられた神殿や円形闘技場が今も残っています。

──水路全体が精密で高度な技術で作られたのですね。

松本:そうなのです。ポン・デュ・ガールの建てられた場所についても、川幅や水量、建築資材となる石の採取しやすさなどのさまざまな条件によって選ばれています。取材をしていて感じたのは、そうした複雑な要因を組み合わせて壮大な水路を完成させたローマ人のすごさです。番組では、水源の泉からニームまでに残っている水路の跡もご紹介しますのでご覧になってください。

森の中の泉からポン・デュ・ガールを経てニームの街まで、50kmもの大水路を古代ローマ人は築きました。

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