特集

2022年2月27日放送「ケープ植物区保護地域群」

自然を生き抜く驚異の植物たち

今回の世界遺産、南アフリカにある「ケープ植物区保護地域群」は、世界でも類を見ないほど植物の種類が多い場所です。広大な砂漠地帯に一斉に咲く自然の花園や、ユニークな地形とそこに適応したさまざまな植物などについて、番組を担当した小澤ディレクターに話を聞きました。

自然が作った花園と不思議な岩の絶景

南アフリカ南西部の「ケープ植物区」には、ほかでは見ることができない自然がありました。

──今回は「ケープ植物区保護地域群」ということですが、どのような世界遺産なのでしょうか?

小澤ディレクター(以下、小澤):南アフリカの南西部のエリアを「ケープ植物区」と呼びます。その中にある13の地域が「ケープ植物区保護地域群」として自然遺産に登録されています。

──「植物区」とは何なのでしょうか?

小澤:植物区とは、植物の共通する特徴から世界を6つの区域に分けたものです。ほかの植物区は、北半球ほぼ全体やオーストラリア大陸全体など広大なのですが、ケープ植物区は最も小さく、アフリカ大陸の0.3パーセントにも満たない面積です。それにも関わらずこの植物区全体で6000種もの植物の固有種が確認されています。

南アフリカの南西部に広がる「ケープ植物区」。その中にある13の地域が今回の自然遺産「ケープ植物区保護地域群」です。

──文字どおり植物が中心の世界遺産なのですね。番組ではどんな植物を見ることができるのでしょうか?

小澤:極楽鳥花やキングプロテア、ピンクッションといった日本の花屋さんでも一般的に売られている花は、実はケープ植物区原産のものが多いのです。ケープ植物区の個性的な花は世界中に広まり、人気を集めています。そういった花をはじめ、ここでしか見られない固有種、あとは世界遺産エリアではありませんが、世界中の花愛好家が見にくる花の絶景もお届けします。

──それはどんな絶景なのでしょうか?

小澤:春、ケープタウンの北400㎞にあるナマクワランドという場所にほんの一時期だけ現れる幻の花園です。ケープ植物区は地中海性気候で、5月から8月までの冬に雨が降ります。すると春に、地面に落ちていたタネや地中の球根が芽吹き、一斉に開花して色鮮やかな絨毯を敷き詰めたようになるのです。ドローンで撮影した、この花園の様子をたっぷりお見せします。

冬の終わりごろに一斉に開く花々。一面に広がる花園の絶景が見られます。

──ケープ植物区は花の楽園のような場所なのですね。

小澤:ここまでの話だけを聞くと、ケープ植物区全体がそのようにイメージされるかもしれませんが、実はそうではないのです。自然遺産に登録されている保護地域群の多くは乾いて荒涼とした厳しい環境で、その悪条件を乗り越えた珍しい植物があるのです。

──そうなのですね。実際にはどんな場所なのでしょうか?

小澤:ケープタウンから北へ200㎞のところにある保護地域の1つ、セダーバーグ原生地域は、標高1000mを越える砂岩の山地です。ケープ植物区の土地はほとんどが、砂が固まった砂岩の大地です。砂岩はもろく崩れやすいため、巨大な岩のアーチや平原に直立する岩の塔など、奇岩の絶景が見られます。

ケープ植物区の多くは砂岩の大地です。地殻変動による隆起やその後の侵食によってつくられた、不思議な岩の景色が見られます。

──そんな環境に貴重な植物が自生しているのですね。

小澤:岩だらけの土地ですが、セダーバーグでは「数百m歩くごとに固有種に出会う」と言われています。ウロコのような葉が茎を覆って乾燥から身を守る植物や、岩陰のあまり陽が当たらない場所に生えるランなど、環境に応じて姿かたちを変えた植物を番組ではお見せします。

独特な姿で環境に適応したさまざまな植物。ここでしか見られない固有種です。

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