特集

2020年12月23日放送「グレーター・ブルーマウンテンズ地域」

90年も大陸の歴史では一瞬の間の出来事

なぜ、この土地にさまざまな岩山と峡谷が出来上がり、ユーカリの森が生まれたのか。その起源は、太古のゴンドワナ大陸にまで遡ります。

──グレーター・ブルーマウンテンズ地域には、どうして大峡谷があるのでしょうか?

奥村:それは、この土地の成り立ちと関係しています。今から3億年前、この地域はゴンドワナ大陸にあった川の河口でした。そこに砂が堆積して砂岩となり、その後、地殻変動で隆起しました。もともと崩れやすい砂岩が、ひび割れたところから雨水で長年侵食され続けて、やがて大峡谷になったのです。

グレーター・ブルーマウンテンズ地域の岩は、砂が堆積してできた砂岩。もろいため、水の流れなどで削れやすいのです。

──3億年!大変な年月をかけて出来上がった風景と思うと、また違った見方ができそうです。

奥村:地形の変化は、現在もまだ進行していると言えます。番組では、300mもの落差がある雄大な滝「ウエントワースの滝」を取り上げています。こうした水の流れが砂岩を削り続けて大峡谷となったのです。またほかにも、90年前に岸壁が崩落した場所を、当時の写真と一緒に紹介します。人間にとって90年前というと昔に感じますが、3億年にわたる大峡谷の成り立ちからすれば一瞬と言えます。

300mもの落差がある「ウエントワースの滝」。水が滴る美しくも雄大な姿を番組でたっぷりとご覧ください

峡谷を流れる川。こうした水の流れが砂岩の壁を削っていきます。

1931年に崩落した断崖の、その前後の写真。そして、そこの現在の様子。こうした崩落によって新たな切り立った絶壁ができるのです

──「90年が一瞬」とは、時間のスケールが想像を絶していますね。

奥村:同じ3億年を経ていても、異なる風景が生まれている場所が、この地域北部のウォレミ国立公園にあります。山の上が平で崖が切り立っている南の岩山とは違って、こんもり丸まったキノコのような形をした巨大な岩が連なっています。砂岩に鉄分を多く含む層があったためだといわれています。この場所だけ鉄分が多い層があるのはなぜなのか、まだわかっていません。

北のウォレミ国立公園の土地は、鉄分の多い地層を含んでいるため、南の岩山よりゆっくり浸食され、丸みを帯びた奇妙な形になっています。

──まだ未解明な部分もあるのですね。さまざまな絶景が見られる番組が楽しみです。最後に視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

奥村:現在、新型コロナウイルスのため、日本のスタッフが海外の取材に行けない状況です。その中で、シドニー在住のコーディネーターとカメラマンと密に連携して番組を作り上げました。現地で長年撮影をしてきたスタッフで世界遺産の取材も何度も参加している者です。現地を知り、番組も理解している彼らだからこそ、さまざまな貴重な絶景を映像に収めることができたのです。世界遺産という番組のチームワークが現れた素晴らしい映像を、ぜひお楽しみください。

グレーター・ブルーマウンテンズ地域をよく知る現地スタッフが捉えた絶景の数々をお楽しみください。

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