特集

2020年10月4日放送「古都京都の文化財~比叡山延暦寺~」

信長の焼き討ちを唯一逃れたお堂とご本尊を高精細8K撮影!

京都の北東に位置する比叡山延暦寺。日本の歴史に深く関わる、この霊峰を、今回の番組では長期取材とさまざまな特別な撮影でお見せします。取材を担当した日下ディレクターと宮口ディレクターのお二人に話を聞きました。

1年を通じて捉えた延暦寺の美しい景色の数々

歴史に彩られて、いまも修行と祈りの場である比叡山延暦寺。そのさまざまな景色をご紹介していきます。

──比叡山延暦寺というと、歴史の授業で習っておおよその知識はあっても詳しくは知らないという人も多いのではないかと思います。どういったお寺なのでしょうか

宮口ディレクター(以下、宮口):比叡山は、京都の北東、琵琶湖の西に位置し、都の鬼門を護る役割を果たした霊峰です。伝教大師・最澄が約1200年前に開山し、山の中にいくつもの修行と祈りの場であるお堂があります。比叡山に点在するお堂の総称が延暦寺であって、延暦寺というお寺はないのです。

京都の北東に位置する霊峰・比叡山。比叡山の東には琵琶湖が広がっています。

──山全体が延暦寺ということなのですね。比叡山延暦寺は、世界遺産としては「古都京都の文化財」の一部ということになりますが、今回なぜ比叡山延暦寺に注目することになったのでしょうか?

宮口:ちょうど1年ほど前、まずは、比叡山の紅葉を撮ることから始めよう、と企画がスタートしました。比叡山は「古都京都の文化財」の一部ですが、京都の街とは、紅葉の時期が異なり、また冬は雪に包まれます。梅雨時には、琵琶湖八景のひとつである「煙雨 比叡の樹林」といった風景が見られます。このように、年間を通して比叡山ならではの美しさがあるので、それをテーマに取材していくことになりました。

紅葉と雪景色、そして雨が降りしきる比叡山。長期取材によって捉えた、季節ごとの美しい比叡山延暦寺をお見せします

──季節ごとに異なる比叡山の美しい映像が楽しみです。点在するお堂の総称が延暦寺という話でしたが、比叡山にはどれぐらいの数のお堂があるのでしょうか?

日下ディレクター(以下、日下):お堂は、現存しているもので200ほどあります。「三塔十六谷三千坊」という言葉があって、3つの区域に16の谷があり、修行僧は3000人もいたそうです。全盛期はお堂の数は500以上あったと言われます。

──3000人もの僧がいたとは、すごい数ですね。

日下:取材では、比叡山延暦寺の僧侶の方にかつてお堂だった場所に案内していただきました。山の斜面の森の中を進むと、石垣が残っていたり、平らに整地された場所になっていて、昔はもっと多くのお堂があったことが感じられました。

比叡山の森を進むと、平らに整地された場所や石垣などかつてお堂が建っていた痕跡を見ることができます。

──一見、普通の森のようで、その木々の下に石垣などが残っているのですね。

宮口:石垣は、山の斜面にお堂を建てるうえで重要な技術です。比叡山の石垣は現存するお堂でも多く見られますが、地震や雨などに強いことで知られています。比叡山の麓には「穴太衆(あのうしゅう)」という石工集団がいて、石積みの高度な技術を当時から現在に至るまで継承しています。こうした技術があったことが、比叡山に数多くのお堂が建てられた理由の1つなのです。穴太衆の技術は、安土城など全国の築城にも用いられたそうです。

横川中堂(よかわちゅうどう)の石垣。石工集団「穴太衆」の技術が、比叡山の厳しい環境からお堂を守ってきました。

──日本の建築技術の源が比叡山にはあるのですね。

日下:ほかにも、比叡山で優れた建築技術が用いられていたことがうかがえるのが、延暦寺の中心的なお堂である「根本中堂(こんぽんちゅうどう)」です。根本中堂は現在10年にわたる改修の途中で、取材では回廊部分の屋根の葺き替えの様子を撮影することができました。

──屋根葺きではどんな技術が使われているのでしょうか?

日下:その屋根では、サワラの木が使われています。湿度が高い比叡山の気候に耐えられるように、水に最も強い材木を言われるサワラの特別に分厚い板が用いられているのです。また、木材4枚につき1枚の銅板が挟まれています。これは、雨が降った際に銅板から溶け出した銅イオンが木材をコーティングして長持ちさせるという技術だそうです。

──イオンコーティングですか!比叡山延暦寺がそんな高度な技術によって守られてきたとは驚きです。

大改修中の根本中堂。葺き替え作業中の屋根には、湿度に耐える技術を見ることができます。

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